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人間の里のはずれ
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伊吹 萃香:
そーら、よっと!
八雲 藍:
なっ……! 春を一気に使って、
桜を満開にさせた!?
伊吹 萃香:
勝負って言っても、単純な力比べじゃ
面白くないでしょー?
伊吹 萃香:
この降りしきる花びらを、空中でたくさん
キャッチできた方の勝ち! どう、簡単でしょ?
八雲 藍:
ずいぶんと突飛な内容だけど……いいだろう。
この勝負、必ず勝たせてもらう!
伊吹 萃香:
ふふ。そっちは三人いるし、三本勝負にしようか。
一本でも取れたら、そっちの勝ちでいいよ。
八雲 藍:
三人? いや、こちらは私と橙の二人で挑みます。
星さんを、ここまで付き合わせるわけには。
寅丸 星:
何言ってるんですか、藍さん。
ここまで来たら、最後までお手伝いしますよ。
寅丸 星:
まあ、運動神経に自信はないんですが。
八雲 藍:
ありがとうございます……!
心強い限りです。それじゃあ、順番は……。
橙:
はい、はーい! 私が最初に行くよ!
化け猫の瞬発力、見せてあげるっ!
八雲 藍:
よし、橙! 頼んだぞ!
寅丸 星:
それじゃあ計りますよ。
よーい……スタート!
橙:
ふふーん、これくらい余裕だもんね!
えいっ! ……あれ? とぉっ!
橙:
あれれっ? 取ろうとすると
花びらが吹き飛ばされて、取れないよー!
伊吹 萃香:
ふふ、甘い甘い♪
これくらい、酔っ払ってても余裕だよ~。
寅丸 星:
すごい! 千鳥足ながらに、
確実にキャッチしていってるわ!
八雲 藍:
簡単そうに見えて、なかなか難しいみたいだな……。
焦るな、橙ーーー!
伊吹 萃香:
あっはっは! 圧勝だね、これは!
橙:
動きに慣れるのに、
時間かかっちゃった……。
伊吹 萃香:
お次は、どっちの出番かな?
寅丸 星:
私がお相手します。
寅丸 星:
よっ! それ!
伊吹 萃香:
おお、取っていくねぇ。
じゃあ、こういうのはどうかな? それっ!
橙:
ち、小さい鬼がたくさん出てきた! あんなのズルだよ!
星さん、がんばれーー!!
寅丸 星:
はぁ、はぁ……。
すみません、ダメでした……。
伊吹 萃香:
こんなんじゃ勝負にならないよ~?
あんたたちの覚悟、こんなもん?
伊吹 萃香:
最後は、三人分合算にしていいから。
ちょっとは、いい勝負してみせてよね!
八雲 藍:
高を括るのも今の内だ。
その決断、後悔しないことだな!
伊吹 萃香:
あれれ? 目なんかつぶっちゃって。
もしかして戦意喪失しちゃった?
八雲 藍:
……集中力を高めているだけだ。
橙:
藍様、大丈夫かなぁ。
何か作戦でもあるの……?
寅丸 星:
お二人とも、準備はいいですかー?
始めますよ。よーい……スタート!
八雲 藍:
花びらの動きは、もう見切った!
はっ!
寅丸 星:
おおお!? すごい、まるで花びらが
どこに落ちるかわかっているかのようです!
橙:
あっ、そっかぁ! さっき集中してたのは、
花びらの動きを計算してたんだ!
寅丸 星:
なるほど! それであの洗練された動きに……。
噂には聞いてましたが、恐るべき計算力ですね!
伊吹 萃香:
へぇ~、結構やるじゃん! 面白い!
それじゃあ私も、それに応えないとね!
橙:
わーーー!
あの鬼、さらに動きが速くなってる!?
寅丸 星:
小鬼の数も増えています、まだ余力を残していたなんて……!
この勝負、いったい……!?
伊吹 萃香:
ふぅー……。なかなか楽しませてもらったよ。
八雲 藍:
やれるだけのことはやった、結果は……?