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人間の里のはずれ
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八雲 藍:
結果は……?
伊吹 萃香:
どれどれ、花びらの量は……。
わずかながら、私の方が多いみたいだね。
橙:
そ、そんな~~!
あんだけやっても、勝てないの!?
八雲 藍:
確かに、直接対決では勝てなかった。
だけど、橙。試合前の言葉を思い出して。
寅丸 星:
そうだわ、萃香さんは三人の合計でいいって!
つまり、ここに私と橙さんの分を加えれば……!
橙:
藍様の勝ちだ!!!
やったーーー!! 勝ったよーーーー!!!
八雲 藍:
二人のおかげだ、ありがとう!
それじゃあ、マヨヒガの桜は……!
伊吹 萃香:
はーあ。私の負けだね。いいよ。
約束通り、この春をあげる。
伊吹 萃香:
君たちが取った分に、森での分も。
これだけあれば、まー足りるでしょ。はい。
伊吹 萃香:
……何? ボーッとしちゃって。
まだ何かあるの?
八雲 藍:
いや、ずいぶんあっさり渡すものだから、
少し拍子抜けしたというか……。
伊吹 萃香:
あははっ。鬼に二言はないよ!
これでマヨヒガの桜を元気にしてあげて。
八雲 藍:
……ありがとう!
橙:
藍様、行こ! 善は急げってやつ!
八雲 藍:
ああ、行こう! 星さんも、ありがとうございました。
お二方とも、このお礼は必ず!
伊吹 萃香:
勝負で勝ったんだから、
お礼なんていいのに……。変なやつ。
伊吹 萃香:
てか、あんたは行かなくてよかったの?
寅丸 星:
もともと、春集めだけのお手伝いでしたから。
あと、久々に動いて疲れました……。
寅丸 星:
貴方は、まだまだ元気そうですね。
伊吹 萃香:
まぁね! 退屈な春配りの合間の、
いい刺激になったよ。あははー。
伊吹 萃香:
それにしても、化け猫の助言もあったとは言え、
まさかアイツが勝負を挑んでくるなんてね。
伊吹 萃香:
淡々と命令をこなすだけの、つまんないヤツかと
思ってたけど……意外と熱くて驚いたよ。
寅丸 星:
そうですね。焦ったり、怒ったり、
笑ったりと……意外に表情も豊かで。
寅丸 星:
それに、あそこまでの忠誠心は
並大抵のものじゃありません。
伊吹 萃香:
ま、これで命令違反でもするようになれば、
もーっと面白いんだけどねー。
伊吹 萃香:
おや。桜吹雪に誘われて、人間が集まってきた。
面倒ごとになる前に、とっとと退散しよーっと。
寅丸 星:
え? あっ、ちょっと! 待っ……。
里の人間A:
おお……! 見ろ、病気だった桜が
満開になっているぞ!
里の人間B:
なんと見事な咲き誇り方だ! ……ん?
そこにいるのは、命蓮寺の毘沙門天様ではないか?
里の人間A:
まさか、貴方様が桜を満開に?
素晴らしい……!
寅丸 星:
ええ!? 違います、これは、その……。
里の人間A:
ああ、やはり命蓮寺に相談してよかった!
ばんざーい! ばんざーい!!
寅丸 星:
は、話を聞いてください~~~!!
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数日後 マヨヒガ
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橙:
桜、綺麗に咲きましたね!
八雲 藍:
ええ。これで例年通り、お花見を開けるわ。
マヨヒガの猫:
にゃー!
橙:
えへへ、お前たちも、ありがとー。
宴会では、高級マタタビを用意してあげるからね!
八雲 藍:
ところで、橙は誰を招待するか決まったの?
私は、星さんや萃香を呼ぶつもりだよ。
橙:
もちろん、決まってますよ!
紫様も、来れるといいんだけど……。
八雲 藍:
……私たちは準備して待つだけ。
さ、これを運ぶのを手伝ってくれるかな。
橙:
……そうですね。わかりました!