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人間の里
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クラウンピース:
うーん、人を探すって言っても、
この人だかりじゃ難しいなぁ……。
稀神 サグメ:
それより、貴方は地獄の妖精と聞いてるわ。
なんでここにいるの?
クラウンピース:
なんでって、
友達と、かき氷の屋台を出してるからだよ。
稀神 サグメ:
いや、そういうことでは……。
チルノ:
おかえり! お客さん連れてきたー?
……って、一人だけじゃん!
クラウンピース:
お客さんじゃなくて、迷子なんだって。
だから、探すの手伝ってあげようかと思って。
稀神 サグメ:
だから、私は迷子ではないんだけど……。
クラウンピース:
あれ、違うの?
んじゃあ、なんなのさ?
稀神 サグメ:
何かと聞かれると……、そうね。
あえて説明するなら、観光かな?
稀神 サグメ:
この土地は不慣れだから、
どこから見ようか迷ってただけよ。
クラウンピース:
なるほど! だから考え込んでたんだな!
最初から、そう言えばいいのに。
チルノ:
きっとシャイなんだな。
ほら、記念に炙りかき氷でも食べてきな!
稀神 サグメ:
あ、ありがとう。これは、氷の残った水……?
クラウンピース:
観光で来たなら、いいタイミングだよ!
今はエイプリルフールで、お祭り状態だし!
チルノ:
そうだ。かき氷もそれで最後だし、
まずは里から案内してやろう!
稀神 サグメ:
ええ!? いや、一人で見て回れ……、
クラウンピース:
それはいいな! せっかくエイプリルフールだし
あたいらもイタズラの逆でもしてみよう!
稀神 サグメ:
そんな、引っ張らなくても……!
稀神 サグメ:
(まさか、この私が穢れの象徴たる妖精と、
一緒に行動することになるとは……)
チルノ:
エイプリルフールのお祭りの時は、
屋台の品物もいつもと違って、面白いぞ!
クラウンピース:
花屋の野菜炒めとか、
ご飯屋さんの食器市とか!
稀神 サグメ:
(仕方ない。説明を聞くだけ聞いて、
早く二人から離れよう)
稀神 サグメ:
色々と逆転しているのね。
なんのために、このような催しを?
クラウンピース:
妖怪にだまされないための練習らしいよ。
みんな面白がって、ただのお祭りになったけど。
チルノ:
ほら、ああいうチラシも貼ってある。
ウソつく妖怪のことが書いてあるんだ。
稀神 サグメ:
こんな妖怪には気をつけろ、ね。
なるほど……。
稀神 サグメ:
(こうして、妖怪の売名にも繋がると……。
なるほど。よくできたイベントね)
クラウンピース:
ほら、考えてたら日が暮れるよ!
まだまだ行くんだから!
稀神 サグメ:
わっ、だから引っ張るのは止めて……!
チルノ:
よし。里はだいたい回ったし、
次は博麗神社だな!
稀神 サグメ:
ちょ、ちょっと待って。少し休憩をさせて。
普段、こんなに人と話すことがないから……。
クラウンピース:
もしかして、友達いないの?
かわいそうね、あんた!
稀神 サグメ:
そうではない……。
とにかく、一度休憩を入れさせて。
チルノ:
じゃあ、あそこ行こ! 茶色い屋根の!
人間がよくあそこで、お団子食べて休憩してるんだ!
チルノ:
ふーー食べた食べた!
このお団子、おいしすぎて最強だなー!
店員:
ありがとうございます。
またのご来店をお待ちしてますね。
稀神 サグメ:
お店がずっと続いている理由が、
よくわかりました。ごちそうさまでした。
稀神 サグメ:
(言葉にできるって、いいものね。
いつもなら、お礼を伝えるのも一苦労なのに)
多々良 小傘:
わっ、ごめんなさい! 全然気がつかなかった!
稀神 サグメ:
こちらこそ、ごめんなさい。ケガはない?
チルノ:
あ、あんたは、えーと……誰だっけ?
多々良 小傘:
多々良小傘だよ! やっぱりこんな古い道具じゃ
忘れられる……。あ、そんな場合じゃない!
クラウンピース:
そんなに慌てて、どっか行くのか?
多々良 小傘:
付喪神を助けに行くのよ!
みんな、里から急にいなくなっちゃったの!