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人間の里
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稀神 サグメ:
う……、ん……。
聖 白蓮:
気がつきましたか!
貴方はユメミタマに憑りつかれていたんですよ。
稀神 サグメ:
(私が? そういえば、竹林からの記憶が……。)
村紗 水蜜:
やっぱり、あの時に憑かれてしまったんですね。
本当にすみませんでした。
聖 白蓮:
まずは、現状を説明しましょう。
貴方が竹林で憑りつかれた後……
稀神 サグメ:
(なるほど、申し訳ないことをしたようね。
何か、できることがあれば……)
聖 白蓮:
……悩まれているのかも知れませんが、一先ず
ユメミタマを浄化出来たのです。大丈夫ですよ。
稀神 サグメ:
(ありがたいけど、そういうわけにはいかないわ。
……そうだ。これならなんとかできるかも)
聖 白蓮:
何を書いて……ああ、筆談ですね。
ええと……なるほど、いい案だと思います。
聖 白蓮:
では、こちらで準備をしましょう。
村紗、お願いできる?
村紗 水蜜:
はい、すぐに人を集めてきますね。
少し待っていてください。
聖 白蓮:
里の人たちを集めました。
あとは、貴方にお任せしますね。
稀神 サグメ:
みなさん、突然の呼び出しに応じていただき、
ありがとうございます。
稀神 サグメ:
私は、今回の里の混乱、
その原因を作ってしまった者です。
里の住民:
な、なんだって……!? じゃあ建物が
綺麗になったりボロボロになったりしたのも……!
稀神 サグメ:
そして、私の口から直接、
お伝えしなければならないことがあります。
稀神 サグメ:
この里の被害は、あまりにも大きすぎます。
復興することは、もう叶いません。
店員:
そんな!?
それじゃあ、ウチのお店は開けなくなるの!?
稀神 サグメ:
謝って済むことではありませんが、せめて
私の言葉で謝罪の気持ちをお伝えしたかった。
稀神 サグメ:
本当に申し訳ございませんでした……。
里の住民:
オイオイ、どうしてくれるんだ!
帰る家もつぶれちまったんだぞ!
店員:
なんてひどい話なのよ。
あのお店は、ずっと続くと思ってたのに……。
チルノ:
あのお団子が食べられなくなるのは、ダメだ!
そんな簡単にあきらめてる場合じゃないよ!
多々良 小傘:
そうだよ! 壊れたんなら直せばいい!
私も、バリバリ働くよ!
クラウンピース:
あたいも地上の一員だもん。協力するよ!
みんなで復興の時間だー!
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数日後
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聖 白蓮:
自らの能力を使って、里を復興へと導いた。
己が忌み嫌われることも厭わずに……。
稀神 サグメ:
(いえ、私はただ責任を果たしたまでです。
それに……、)
稀神 サグメ:
(私は、変化とは老いや穢れにつながるもの。
悪いものだと考えていました。)
稀神 サグメ:
(ですが、貴方たちは、変化に対して
良い面を見出していたのですね。)
聖 白蓮:
ええ。変化とは、衰退ばかりではありません。
新しく、より良くなるのも変化なのです。
聖 白蓮:
里の皆さんも、変化を受け入れていましたよ。
建物を建て替える、いい機会だったと。
稀神 サグメ:
…………!
聖 白蓮:
もうお帰りですか? 本当は、きちんとした場で
貴方をお送りしたかったのですが……。
稀神 サグメ:
(私は、里を崩壊させかけた元凶です。
経過が聞けただけでも、ありがたいですよ。)
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月の都
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稀神 サグメ:
(よし、ユメミタマの記録もまとまった。
我ながら、ずいぶんな体験だったわ……。)
クラウンピース:
ほら、考えてたら日が暮れるよ!
まだまだ行くんだから!
稀神 サグメ:
わっ、だから引っ張るのは止めて……!
チルノ:
んー、よくわかんないけど、
そんなに落ち込まなくてもいいんじゃない?
多々良 小傘:
そうだよ! 喋らないなら、筆談とかもあるし!
今日のお礼に、筆とか作るよ!
クラウンピース:
今日のことが、全部ウソになるわけじゃないしね。
これが解決したら、また遊ぼうよ!
稀神 サグメ:
(さすがに記録にはできないけど、
悪くはなかったかもしれないわ。)
稀神 サグメ:
(……変化とは、悪いことばかりじゃない。
このことも、忘れずに書いておきましょう。)
稀神 サグメ:
(ユメミタマが誰かの思いから生まれるなら、
あれは私のことを考えてくれていたんでしょう。)
稀神 サグメ:
(一日だけでも、本当に楽しい時間だった。)
稀神 サグメ:
……ありがとう。
稀神 サグメ:
(どこかの優しい誰かさん……。)