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人間の里
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東風谷 早苗:
ええと、ロータスの木……ですか?
多々良 小傘:
そう! その実を食べれば何もかも忘れて
ぐっすりと眠れる、ものすごい木なのよ!
東風谷 早苗:
はあ……なんでそんな木を御柱に?
というか、そもそも、どうして御柱祭を勝手に?
八坂 神奈子:
理由なんて、どうでもいいわ。
とにかく、今すぐやめなさい。
多々良 小傘:
おっと、そう簡単には、やられないわよ!
眠れ、眠れ、いい子たち!
洩矢 諏訪子:
うわっ!? な、なんだか急に眠く……。ぐぅ。
多々良 小傘:
今の私は、この木の力で強化されてるの。
だから、あんたたちを眠らせるのも思いのまま!
多々良 小傘:
御柱祭の邪魔はさせないわよ!
じゃあねー!
八坂 神奈子:
邪魔してるのは、そちらでしょうが。
まったく……。
東風谷 早苗:
うぐぐ、眠いけど追いかけないと……。
諏訪子様、動けますか?
洩矢 諏訪子:
すぴー……。
東風谷 早苗:
ぐっすり寝てるー!?
起きてください、諏訪子様ー!
八坂 神奈子:
もう、ねぼすけは、ほっときなさい。
行くよ、早苗!
東風谷 早苗:
あっ、見つけたわ! 待ちなさーい!
多々良 小傘:
へへーん、里のことは詳しいからね。
そう簡単に捕まったりしないんだから!
東風谷 早苗:
もう! あんな重い物を引きずって、
よくもまあ、ちょこまかと動けるわね!
多々良 小傘:
ありゃ、袋小路に来ちゃった。
でも、ここに隠れて、やり過ごせば……。
東風谷 早苗:
小傘さーん! どこにいるんですかー!
多々良 小傘:
ぷぷぷ、気づきもしないで……。さて、
そろそろ里を抜けて山の方に、って、わあ!?
八坂 神奈子:
追い込まれていたことに気付かない間抜けは
おまえの方だよ、付喪神。
東風谷 早苗:
ぜえぜえ……引っかかりましたね、小傘さん。
さあ、追い詰めましたよ!
多々良 小傘:
そ、そんなー!? でも、こんなとこで
捕まるわけにはいかないわ。眠れ、眠れ……!
東風谷 早苗:
ううっ!? あ、頭が真っ白に……!?
多々良 小傘:
私だけやっつけても、しょうがないんだから!
御柱を建て替える祭は、もう始まってるのよ!
八坂 神奈子:
……あの付喪神が、私を微睡ませたなんてね。
早苗。ちょっと起きなさい、早苗。
東風谷 早苗:
わあっ! あ、あれ?
小傘さんは、どこに?
八坂 神奈子:
どうやら、柱を置いて逃げたみたい。
まったく……。
東風谷 早苗:
そうですか……。それにしても、この柱。
近くで見ると、ホントにすごい妖力ですね。
東風谷 早苗:
小傘さん、こんなの
どこで手に入れたんでしょう……?
洩矢 諏訪子:
ありゃ? もしかして、逃げられちゃった?
東風谷 早苗:
あ、諏訪子様!
やっと起きてきたんですね!
洩矢 諏訪子:
変なとこで寝ちゃったから、全身が痛いよ。
……ふーん。これが、付喪神が曳いてた柱だね。
八坂 神奈子:
……自分だけを倒しても意味がない、
祭はもう始まっている……、か。
八坂 神奈子:
もしかしたら、あの付喪神以外にも、勝手に
祭を始めてる不届き者がいるかもしれないね。
東風谷 早苗:
里の方には、もう見当たりませんから、
いるとしたら妖怪の山でしょうか?
洩矢 諏訪子:
そういうことなら、ふたりで調査してきてよ。
私は、この柱を調べたいから。
八坂 神奈子:
わかった。行きましょう、早苗。
不届き者には、思い知らせてやらねば!
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妖怪の山
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東風谷 早苗:
見て回るって言っても、山は広いですからねえ。
どこから手をつければ……。
犬走 椛:
止めたってムダよ!
私はこの木を曳いて、絶対に御柱を建てるから!
元気のいい天狗:
なに言ってるの、御柱祭はまだじゃん!
大天狗様からも、そんな命令は出てないし……!
東風谷 早苗:
この声……まさか、椛さんが!?
行ってみましょう!