--------------
玄武の沢
--------------
東風谷 早苗:
さて……、柱を曳いてる人はどこに?
それにしても、なんか甘い匂いがするなあ。
茨木 華扇:
あら、思ったよりも早かったじゃない。
東風谷 早苗:
えっ、今度は、仙人様!?
どうして貴方が、神社の行事を……。
茨木 華扇:
何を言ってるの?
柱を建て替えるために決まってるじゃない。
東風谷 早苗:
それはそう……じゃなくて!
勝手に柱を曳くのは、やめてくださいよ!
茨木 華扇:
私たちの邪魔をするのね。
それなら……、力ずくで排除するわ!
東風谷 早苗:
とわぁっ!? や、やっぱりこうなるんですか!
……ん、あれ? 甘い匂いが強くなった?
東風谷 早苗:
もしかして、貴方が曳いているその柱……
桃の木ですか?
茨木 華扇:
あら、よくわかったわね。
この柱は、桃源郷から伐り出された桃の木。
茨木 華扇:
仙人といえば桃、桃といえば仙人。
しかも、桃源郷の桃ともなれば……!
東風谷 早苗:
え……、きゃあああああっ!?
茨木 華扇:
素晴らしい威力でしょう。
どう? 真なる守矢の力を、思い知った?
東風谷 早苗:
ぜ、はぁ……っ。
真なる、守矢……?
茨木 華扇:
さあ、どんどん行くわよ。
貴方に、これが避けられるかしら!?
東風谷 早苗:
くっ……! 木との相性がいいのかしら、
いつもより段違いに……強い! だけど!
茨木 華扇:
きゃっ!? い、いたた……なにこれ、苔?
こんなの、さっきまでなかったのに!
東風谷 早苗:
ふっふっふ。私の奇跡の力、思い知りましたね!
さあ、形勢逆転……! えっ?
東風谷 早苗:
な、なに? 急に暗く……。
まさか、閉じ込められた!?
茨木 華扇:
くっ……。ありがとうございます!
東風谷 早苗:
わっ! 壁が崩れた……。
って、ああ! 仙人様がいない!
東風谷 早苗:
うぬぬ……あと少しだったのに。
こんな土の壁に閉じ込められなければ……!
--------------
守矢神社・社務所
--------------
八坂 神奈子:
ふむ……。柱を曳いて民家の間をすり抜け、
崖を滑り降りて木落し、玄武の沢で川越し、と。
八坂 神奈子:
どうやら連中は、本当の御柱祭に
しっかりなぞらえて、柱を運んでいるようだ。
東風谷 早苗:
そうなると、次はどこに現れるんでしょう。
棚木場に安置?
八坂 神奈子:
いや。天狗たちいわく、
それらしき物は見つかっていないらしい。
東風谷 早苗:
むむむ、それじゃあ……。
あれ? 諏訪子様は、どちらへ?
八坂 神奈子:
神社には戻ってきてなかった。
まったく、どこで何をしてるんだか。
八坂 神奈子:
それよりも、早苗。
真なる守矢……ですって?
東風谷 早苗:
あ、はい。茨華仙、あの仙人様がそう言っていました。
でも、どういう意味なんでしょう?
八坂 神奈子:
そうでなければいいと思っていたが……。
けれど、そう。真なる守矢か……。
八坂 神奈子:
……あんなものまで用意して、
本当、何を考えているのやら。
東風谷 早苗:
神奈子様……?
東風谷 早苗:
きゃっ!
えっ、今のは、いったい?
八坂 神奈子:
私の神域が、揺らいでいる……!?
八坂 神奈子:
やられた……。
まさか、こんなに早く動いてくるなんて。
東風谷 早苗:
え、ええ? なんですか、これ……!?
神社の周りに、柱が3本建ってますよ~っ!?