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東深見高校・校舎裏
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藤原 妹紅:
この機械に映っているのが、ネットか。
本当に、いろいろな情報が出てくるなぁ。
宇佐見 菫子:
でしょ? まずは検索対象をこの辺の地域に絞って
妖怪に関連しそうなものを見ていくわ。
藤原 妹紅:
なになに……。「最近亡くなった東地区のSさん、
死因は妖怪に噛まれたせいとかなんとか……」
藤原 妹紅:
これ、信用していい情報か?
なんか胡散臭いなぁ。
宇佐見 菫子:
噂の出所には、必ず理由があるもの。
それを探すのが秘封倶楽部よ! さ、次よ次!
宇佐見 菫子:
「なんでも、姿を見ると寝たきりになる怪物が
出るって噂らしい。夜は気をつけよう」
藤原 妹紅:
「高校に忘れ物を取りに戻ったら、青白い光が
浮いててさ。あれ、ぜったい人魂だって!」
宇佐見 菫子:
あっ! これ、うちの学校の生徒だ。
この人の最新の呟きは……。
藤原 妹紅:
「さっきオカ研の会長が同級生?に手を引かれて
走ってった。あの人、友達いたんだな~」
宇佐見 菫子:
うわっ、これ私のことじゃない!?
もー、失礼なヤツね!!
宇佐見 菫子:
(ていうか、あれ? この人、妹紅さんが
同級生に見えたの? この服の妹紅さんが……?)
藤原 妹紅:
お前、驚かれるくらい友達いなかったのか。
宇佐見 菫子:
げ、幻想郷にいっぱいいるから、いいのっ!
それより、もっと情報を集めましょう!
宇佐見 菫子:
ふむふむ。学校付近での情報が多いみたいね。
SNSは、学生が多いからかもしれないけど。
藤原 妹紅:
怪しい目撃例は夜に集中してそうだな。
ま、これは妖怪の性質を考えれば当然か。
宇佐見 菫子:
よし。それじゃ夜になったら、学校の探索から
始めよう! 人魂の情報も気になるしね。
宇佐見 菫子:
……あ、あれ?
今、一瞬で夜になったような……?
藤原 妹紅:
ん? なにボサッとしてるんだ?
中、見にいくんだろ? 置いてくぞー。
宇佐見 菫子:
……へっ?
ああっ、妹紅さーん! ちょっと待って~!
宇佐見 菫子:
夜の校舎内に潜む妖怪、ね……。
ありがちだけど、悪くないわね。
藤原 妹紅:
ブツブツ言ってないで、
ちゃんと周囲を警戒して歩くんだぞ。
宇佐見 菫子:
わかってますって~。……ん?
向こうで何か光ってる? あれって……。
藤原 妹紅:
人魂じゃないか! 追うぞ、菫子!!
宇佐見 菫子:
あっ、妹紅さん! 待って!!
あれは人魂じゃなくて……!
藤原 妹紅:
捕まえた!!
もう逃がしはしないぞ、人食いようか……い?
女子生徒A:
ひいっ! ごめんなさい!!
ゆ、ゆるしてぇ……。
宇佐見 菫子:
それ人魂じゃなくて、スマホのライトだよ~!
って、あちゃー。遅かったか……。
藤原 妹紅:
その、すまなかった。
てっきりようか……いや、怪しいヤツかと。
女子生徒A:
いえ、夜に忍び込んでた私が悪いので……!
見回りの先生かと思って、逃げちゃったし。
宇佐見 菫子:
貴方はえーっと、同じクラスの……。
どうして、こんな時間に学校へ?
女子生徒A:
宇佐見さん。こうして話すのはじめてよね。
私ね、園芸部で月下美人を育ててるの。
宇佐見 菫子:
月下美人?
って、年に一度、一晩だけ咲く、みたいな花だっけ。
女子生徒A:
そうそう! それがもうすぐ開花ってことでね。
ここ最近、毎日部員が交代で観察に来てて……。
宇佐見 菫子:
はぁ、なるほど。じゃあ、夜の学校の
都市伝説は、貴方たちが原因だったのね……。
藤原 妹紅:
おそらく、そのスマホとやらの光を見た誰かが、
人魂と勘違いしたんだろうな。……私のように。
宇佐見 菫子:
にしても、夜に一人でだなんて危ないじゃない。
最近、物騒な噂があるのは知ってる?
女子生徒A:
人食い獣のこと? 学校の裏山に出るらしいよね。
でも、そっちに行かなければ安心かなーって。
女子生徒A:
それに、本当ならもう一人、
部員が来る予定だったし……。
藤原 妹紅:
獣? それに、裏山だって?
その話、詳しく……。
???:
キャーーー!!!
藤原 妹紅:
外からだ。行くぞ!
宇佐見 菫子:
あそこに人が倒れてる!
ねえ貴方、大丈夫!?
女子生徒B:
……ぅ……うあ…………。
女子生徒A:
どうしたの、しっかり!!
園芸部の子よ、さっき話してた……!
宇佐見 菫子:
まるで寝ているみたいだけど、起きない……。
それに、うなされてる?
藤原 妹紅:
目立った外傷はないが……ん、なんだ?
腕に、小さい噛み痕が……。
宇佐見 菫子:
あっ! 妹紅さん、見てあそこ!
街灯の下!!
藤原 妹紅:
今のが人食い妖怪か!?
くそっ、暗くて一瞬で見失った……!
宇佐見 菫子:
まさか、こんな近くで人が襲われるなんて。
アレは、いったい何者なの……。