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東深見高校の裏山
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宇佐見 菫子:
あ、あれ、私……。
学校で倒れてた子を見つけた後、何して……。
藤原 妹紅:
おいおい。昨日、お前の同級生から話を聞いて、
裏山の探索に来たんだろ。大丈夫か?
宇佐見 菫子:
あー、そうだそうだ。倒れてた子の様子も
気になるけど、私たちは犯人を突き止めなきゃね。
藤原 妹紅:
ああ。たしか人食い獣って言ってたよな。
被害者にあった歯形は、人のものだったが……。
藤原 妹紅:
一瞬見えた影は、かなり大きかったしな。
妖獣かもしれない。動物を見ても油断するなよ。
宇佐見 菫子:
結構探したけど、
見つかったのは大量の毛玉だけかぁ。
藤原 妹紅:
これが一匹分の量なら、そうとう大きい動物に
違いない。隠れていても見つけやすいはずだが。
宇佐見 菫子:
はーぁ。ここからは、
地道に歩いて見つけるしかないもんねぇ。
藤原 妹紅:
シッ! 静かに。……物音が聞こえる。
あっちの茂みからだ。こっそり近づくぞ。
藤原 妹紅:
見えた。かなり大きいな!
お前は右から頼む。挟み込むように追うぞ!
宇佐見 菫子:
今の、なんの音!?
って、わあ! 何これ、でかっ!!
藤原 妹紅:
巨大ウサギが、檻の中に入ってる……?
ウサギ:
キュゥ……。
宇佐見 菫子:
私たちが追ってたのって、まさかコイツ!?
ってか、なんでこんな所に檻の罠が……。
???:
まあ、素晴らしい!
うちの子を捕まえてくれて、ありがとう!
宇佐見 菫子:
あ、貴方は! ……あれ?
ええと……どこかで会ったこと、ありません?
藤原 妹紅:
また知り合いか?
お前は、顔が広いのか狭いのか……。
ウサギの飼い主:
いえ? はじめまして、私はこの子の飼い主よ。
先日、この子をうっかり逃がしてしまってね。
ウサギの飼い主:
罠を仕掛けたんだけど、なかなか捕まらなくて。
貴方たちのおかげで助かったわ。
宇佐見 菫子:
つまり、私たちが追いかけてたのは
貴方のペットで、運よく捕獲できた……ってこと?
藤原 妹紅:
はぁ。念のため聞くが……コイツ、
人を食べたりはしてないよな?
ウサギの飼い主:
食べないわよ。その様子じゃ、この子のことを
噂の人食い獣だって勘違いしてたのかしら。
ウサギの飼い主:
まったく、失礼な噂よね。
ちょっと大きいだけの、かわいいウサギなのに。
藤原 妹紅:
ちょっと……?
普通より、かなり大きいだろ。
蓬莱山 輝夜:
……貴方、さっきから何か引っかかるわね。
うちの子に文句でもあるの?
宇佐見 菫子:
ま、まあまあ。じゃあ、目当ての人食い妖怪とは
別物なのね。うーん、なにがなにやら……。
ウサギの飼い主:
貴方たち、人食い妖怪を追ってたの?
なら、この辺りに出るって話自体は、本当みたいよ。
ウサギの飼い主:
私が聞いた噂によると、人食い妖怪の正体は『るみちゃん』って
名前の小さな女の子なんですって。
藤原 妹紅:
小さな女の子だって? それなら確かに、
あの小さい歯形の説明がつくが……。
ウサギの飼い主:
その『るみちゃん』って子はね、
元々は人間、元気な女の子だったらしいわ。
宇佐見 菫子:
元人間の、女の子……?
宇佐見 菫子:
(あれ? このワード、どこかで聞いたような。
いつだろう、思い出せない……)
ウサギの飼い主:
けど、いつからかよく眠るようになって、
悪夢ばかり見るようになってしまった。
ウサギの飼い主:
悪夢に呑まれ、次第におかしくなっていき……
人を食べる化け物になってしまった、って話よ。
藤原 妹紅:
ふむ……。なんだか尾ひれのくっついた話に
聞こえるが、新しい情報は得られたな。
宇佐見 菫子:
う、うん。そうね。
次は、『るみちゃん』について調べてみよう。
ウサギの飼い主:
なんにせよ、気をつけることね。それじゃあ、
私はこの子を連れて帰るわ。よいしょっと。
藤原 妹紅:
おまえ、お姫様みたいな
見た目のわりに、意外とパワフルなんだな。
宇佐見 菫子:
(お姫様、か……。何か思い出せそうだけど、
ダメだわ。今は人食い妖怪に集中しなきゃね)