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洞窟の入り口
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宇佐見 菫子:
妹紅さん、行っちゃった。
幻想郷に……帰ったのよね。
藤原 妹紅:
じゃあな、菫子。それから……
お前はいつまで、こっちにいるんだ?
宇佐見 菫子:
最後の言葉、いったいどういう意味?
私の居場所は、ここじゃないの?
宇佐見 菫子:
居場所……そうだ。前にも何か……。
博麗 霊夢:
そう。それなら、夢から覚めて、
幻想郷からもいなくなりなさい。
宇佐見 菫子:
それでも!
今は幻想郷が、私のいるべき場所なのよ!
宇佐見 菫子:
……思い出した。
これは鈴仙さんの薬で、夢を見た時の記憶。
宇佐見 菫子:
あの時は、幻想郷が私の居場所だって……。
幻想郷から帰れなくなってたから。
宇佐見 菫子:
あ、あれ?
そういえば私、どうやって帰ってきたんだっけ?
宇佐見 菫子:
うう、頭が痛い。でもまだ、
思い出さなきゃいけないことがある、気が……。
宇佐見 菫子:
ん……あれ? ここ、博麗神社だ。
いつの間に寝ちゃったんだろう。
宇佐見 菫子:
って、ええ!?
なんで貴方がここにいるの!?
女子生徒A:
あら、宇佐見さん。貴方も幻想郷に?
実は、他の子もいるのよ。
宇佐見 菫子:
な、なんで二人とも……。
女子生徒A:
なんでって……日常が退屈だったからよ。
ここってワクワクするじゃない。だから来たの。
女子生徒B:
見慣れない物がたくさんあるし、楽しいのよね。
宇佐見さんだって、似たような理由でしょ?
宇佐見 菫子:
え? ああ、うん……?
そう、私も非日常が楽しくて……。
宇佐見 菫子:
でも、だからって幻想郷に来ていいの?
ああ、頭が痛い。意識が、薄れて……。
宇佐見 菫子:
う……ここは、どこ?
幻想郷? それとも元の世界?
宇佐見 菫子:
あれはウサギの……じゃない、輝夜さんだわ。
一緒にいるのは、高校の同級生?
宇佐見 菫子:
あっちにはレイムっちに、先生に、ええと……。
な、何よこれ。ここはどこ!?
蓬莱山 輝夜:
そんなに慌てて、どうしたのよ。
何か気になることでもあるのかしら?
宇佐見 菫子:
あっ、ねえ! ここはどこ? 幻想郷と外の世界の人が
一緒にいるなんて、おかしいよね!?
蓬莱山 輝夜:
あら、貴方がそれを言うの?
貴方が普段していることじゃないの。
宇佐見 菫子:
だ、だって私はオカルトボールを使ったし、
いつもは夢を見ているだけのはずで……!
蓬莱山 輝夜:
なら、みんな夢を見ているのかもね。
そんなに驚くことじゃないわ。
宇佐見 菫子:
どういうこと……? こんなの、絶対おかしい!
おかしいはずなのに……。
宇佐見 菫子:
私が、おかしいの……?
ここはいったい、ど……こ……。
藤原 妹紅:
ふぅ。なんとか竹林から運んできたが、
目を覚ます気配はないな……。
蓬莱山 輝夜:
永琳に心当たりがあるらしいわ。
以前飲ませた薬の影響かもしれないって。
蓬莱山 輝夜:
いま調べてくれてるけど……ああ、そうだ。
貴方も運ぶのを手伝ってくれて、ありがとね。
ルーミア:
いえいえ、どーいたしまして! って言っても、
ちょっと持ち物を運んだだけだけど。
藤原 妹紅:
通りがかっただけなのに、すまないな。
助かったよ。
ルーミア:
どうせ、ふよふよ浮いてただけだものー。
お役に立てて、よかったわ。
ルーミア:
その子、早く目を覚ますといいね。
それじゃ、私はこれでー。
藤原 妹紅:
このまま目を覚まさないようなら、
助けに行くしかなさそうだな。
蓬莱山 輝夜:
助けにって、まさか夢の中に?
この人間に対して、どうしてそこまでするのよ。
藤原 妹紅:
なんか……放っとけないんだよ。
昔を思い出すっていうか……。
蓬莱山 輝夜:
ふぅん……。ま、それなら私も援助するわ。
うちの薬が関係してるかもしれないしね。
藤原 妹紅:
いいのか?
お前と協力するなんて、不思議な感じがするな。
蓬莱山 輝夜:
それに関しては同感。けど、長い人生だもの。
たまにはいいんじゃない?
藤原 妹紅:
ああ、そうだな。
藤原 妹紅:
……菫子、必ず目を覚ませよ。
お前がいたいのは、幻想郷なんだろ。