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白玉楼
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西行寺 幽々子:
……ふう。ひとまず、これで大丈夫だと思うわ。
二ッ岩 マミゾウ:
おお、助かったよ。
手間を取らせて、すまなかったのう。
西行寺 幽々子:
別に構わないけれど……。
それ、どうするつもりなの?
二ッ岩 マミゾウ:
せっかくだから、ちょっとした
お遊びに使おうかと思ってな。
二ッ岩 マミゾウ:
お前さんも、どうだ?
いっしょに遊んでやりたい相手がおるんじゃよ。
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畜生界 鬼傑組事務所
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吉弔 八千慧:
さて、次はどう攻めるか。先の抗争で、
新入りを何人か使いつぶしてしまったからな。
吉弔 八千慧:
報告によれば、消滅したのは13名。
内訳は、タヌキとカラスと……。
吉弔 八千慧:
まあ、消えた者は補充するだけの話です。
……なんだ。入りなさい。
カワウソ霊:
失礼いたします! 地上偵察班より、
こちらを預かってまいりました!
カワウソ霊:
なんでも、名のある刀匠が打った
類まれなる名刀とのことで……。
吉弔 八千慧:
なるほど。たしかに純白の見事な拵えだ。
ちょっと抜いてみましょう、か……っ!?
吉弔 八千慧:
……なんだ、これは。
カワウソ霊:
か、刀を抜いた瞬間、
吉弔様が真っ白い装束を……!?
吉弔 八千慧:
これは……舶来品の婚礼衣装か?
たしか、ウエディングドレス、とかいう……。
吉弔 八千慧:
……消えた。
カワウソ霊:
か、刀を納めたら、元のお姿に戻った……。
吉弔 八千慧:
……まあ、愉快な刀ということはわかりました。
たしかにこんなもの、世に二つとないでしょうね。
吉弔 八千慧:
報告はこれだけですか? では、下がりなさい。
ああ、くれぐれも先ほどのことは他言無用で。
カワウソ霊:
は、はいっ! 失礼します!
吉弔 八千慧:
抜くとドレス姿になる刀、か……。
吉弔 八千慧:
なかなか美しい衣装ではありましたが、
使い道は、なさそうですね。
吉弔 八千慧:
あとで、片付けてしまおう。
ひとまず、ここに置いて……ん?
吉弔 八千慧:
……は?
なんで、私の手に戻ってくるんですか?
悪霊:
……あわせ、に……。
吉弔 八千慧:
置いても置いても、手元に戻ってくる……?
くそ、呪いの刀だったのか!
吉弔 八千慧:
こんなものに憑りつかれていると知れたら
早鬼たちに何を言われるか……。
杖刀偶 磨弓:
ここにいたな、吉弔八千慧!
吉弔 八千慧:
袿姫の埴輪!? 何しに来たんですか。
今、私は取り込み中で……。
杖刀偶 磨弓:
もちろん、貴様の持つその刀を……
いや、そのドレスを渡してもらうためだ。
杖刀偶 磨弓:
構えろ、鬼傑組組長! その幸福のドレスは、
我らが埴安神袿姫様にこそ、ふさわしい!
吉弔 八千慧:
……ちっ。何がなんだかわかりませんが、
面倒くさいことに巻き込まれたようですね!