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畜生界
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杖刀偶 磨弓:
まだまだ! 埴輪兵団よ、右から囲め!
あの純白の刀を……、幸福のドレスを奪うのだ!
吉弔 八千慧:
(多勢に無勢、さすがに埴輪は厄介だな。
長期戦は避けたいが……)
吉弔 八千慧:
先程から口にしている、
「幸福のドレス」というのは、いったいなんなのでしょうか?
吉弔 八千慧:
この、純白の拵えの刀のことですよね。確かに、
刀を抜くとドレス姿になってしまうようですが……。
杖刀偶 磨弓:
知らないで手にしているの? それは、
持ち主に永遠の幸せを与えるドレスなのよ。
吉弔 八千慧:
永遠の幸せ……? 今のところ、
私は特に幸せを感じていませんが。
杖刀偶 磨弓:
それはそうでしょう。
なにせ貴方は狙われているのだから!
杖刀偶 磨弓:
吉弔八千慧に勝てば、幸福のドレスが手に入る!
幻想郷中、この噂で持ち切りなのよ!
杖刀偶 磨弓:
埴輪兵団、すすめー!
吉弔 八千慧:
(まあ、多少の情報は引き出せたか。
もう用はない。あとは私の力で従わせて……)
吉弔 八千慧:
……まったく、埴輪というのは愚かで困る。
その頭の中は、本当に空っぽのようですね?
杖刀偶 磨弓:
なっ……、貴様!
袿姫様の造形物を愚弄するか!
吉弔 八千慧:
袿姫のしもべであるならば、
こんな所で争っている場合ではないでしょう。
吉弔 八千慧:
今は何よりも、ドレスを見つけたことを
報告しに行った方がいいのでは?
杖刀偶 磨弓:
そっ……、それは、たしかに……?
吉弔 八千慧:
でしょう。
袿姫も、貴方の報告を待っていると思いますよ。
杖刀偶 磨弓:
そう……そうでした。袿姫様は、ドレスが
本当に存在するのか懐疑的でいらしたから……。
杖刀偶 磨弓:
急いで報告に行かなくては!
吉弔 八千慧:
……行ったか。
吉弔 八千慧:
幸福のドレス、手放せない呪い、
私を狙う者の存在……。
吉弔 八千慧:
……刀は地上で見つけたと言っていたな。
まずは、これを手放す方法を探すとしよう。
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妖怪の山
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吉弔 八千慧:
さて。どこに行ったらいいものか……。
女の声:
……あわせ、に……。
吉弔 八千慧:
……なんだ? そういえば、
前にも似たような声を聞いた気がするが……。
二ッ岩 マミゾウ:
おお、いらっしゃったな。
ようこそ、鬼傑組の組長殿。
吉弔 八千慧:
貴方は、化け狸の頭領の……。
二ッ岩 マミゾウ:
二ッ岩マミゾウじゃ。
よしよし。ちゃあんと純白の刀を持っておるな。
二ッ岩 マミゾウ:
さあ……、ドレスに選ばれし六月の花嫁よ。
儂と、ちょっとしたゲームをしようじゃないか!