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妖怪の山
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二ッ岩 マミゾウ:
ドレスに選ばれし六月の花嫁よ。
儂と、ちょっとしたゲームをしようじゃないか!
吉弔 八千慧:
……ゲーム、ですか。
二ッ岩 マミゾウ:
くっくっ。そんな怖い顔をせんでも、
いたって単純な遊びじゃから安心せい。
二ッ岩 マミゾウ:
お前さんが手にしたのは、持つ者に
永遠の幸せをもたらす不思議なドレス。
二ッ岩 マミゾウ:
そのドレスを求めて襲い来る刺客を、
返り討ちにして生き延びる、それだけじゃよ。
吉弔 八千慧:
刺客……ね。
私はこんなもの、必要ないんですけどねぇ。
吉弔 八千慧:
ドレスが欲しいなら、差し上げますよ。
貴方のゲームに乗るつもりはありません。
二ッ岩 マミゾウ:
おや! そうは言っても、お前さん、
その刀を手放すことができないんじゃないか?
二ッ岩 マミゾウ:
手放したと思っても、いつの間にか手元に戻っている。
そういう代物だと聞いておるぞい。
二ッ岩 マミゾウ:
まあ、死んでしまえば、手放せるが……。
さすがに、そういうわけにも、いかんじゃろう?
吉弔 八千慧:
……ずいぶんと、お詳しいようだ。
他に手放す方法はないんですか?
二ッ岩 マミゾウ:
あるとも。
じゃが、素直に教えるのはつまらんのう。
二ッ岩 マミゾウ:
お前さんが、ドレスを狙う刺客たちから
無事に逃げ延びられたら、教えてやろうかの。
吉弔 八千慧:
ナメた真似をしてくれますね、地上の化け狸。
今ここで、聞き出すこともできるのですが?
二ッ岩 マミゾウ:
つまり、組長殿は、この老いぼれの遊びにも
付き合えない、つまらん奴だということかの?
吉弔 八千慧:
ほう……?
二ッ岩 マミゾウ:
ゲームはもう始まっている。お前さんがドレスを
持っていることは、すでに広まっておるよ。
二ッ岩 マミゾウ:
これは、地上なりのおもてなしでもある。
どうか楽しんでいってくれ、組長殿。
ドレスを狙う刺客:
あっ! あの甲羅、もしかして……!
幸福のドレスを持ってるやつじゃない!?
ドレスを狙う刺客:
おーい、みんなー! 見つけたよー!
杖刀偶 磨弓:
どこですか、吉弔八千慧ー!
二ッ岩 マミゾウ:
くっくっ。このまま囲まれては大変じゃぞ。
逃げた方がいいんじゃないかのう?
吉弔 八千慧:
ちっ……。
二ッ岩 マミゾウ:
では、また会おう。
そうだな、次は……、冥府の庭あたりでな。
吉弔 八千慧:
あいにくと、私が落ちるのは
冥界ではなく、畜生界ですがね。
吉弔 八千慧:
さて、あの狸の言葉に従うのは癪ですが、
慣れぬ場所で囲まれたら不利なのも事実か。
吉弔 八千慧:
一度ここから離れて、少しずつ相手を……。
はあ。厄介なことに巻き込んでくれたものだ。
杖刀偶 磨弓:
どこだー! 今度こそ、
幸福のドレスを袿姫様に持って帰る!
吉弔 八千慧:
仕方がない。幻想郷の妖怪を調査できる機会だと
前向きに捉えるしかないな。
悪霊:
……し、あわ……に……。
吉弔 八千慧:
この声……。
狸が来る前に聞こえたのと、同じものか。
吉弔 八千慧:
「しあわせに」? はっ。本当に幸せを
もたらしてくれるなら、是非頼みたいものですね!