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人間の里
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吉弔 八千慧:
これで、一息つけるか。まったく、次から次へと
やってくるせいで、こんな所まで来てしまった。
吉弔 八千慧:
さすがに、少し疲れました。
あれから本当に刺客に襲われ続けるとは。
悪霊:
……し、あわ……なんて……。
吉弔 八千慧:
……この妙な声も、ずっと聞こえているし。
頭に響くせいで、イライラするんですよねえ。
ドレスを狙う刺客:
あ、お前が吉弔だな! そのドレスを……!
吉弔 八千慧:
……今、一息ついたところなんですよ。
邪魔をするな。
ドレスを狙う刺客:
ひっ……。す、すみませんでしたあああ……!
吉弔 八千慧:
やはり抜き身の刀はいいですね。脅しになって。
ドレス姿になってしまうのは、いただけませんが……。
吉弔 八千慧:
それにしても、どうして、そんなに
永遠の幸せとやらを欲しがるんでしょうかね。
吉弔 八千慧:
このドレスを奪って幸せになろうだなんて、
許しがたいことです。だってこれは、私の……、
吉弔 八千慧:
……私の? 私は今、何を……?
悪霊:
……し、あ……なる……。
霊烏路 空:
ああー! ついに見つけたー!
霊烏路 空:
覚悟しろ! さとり様のために、
幸福のドレスを渡してもらう!
吉弔 八千慧:
地獄鴉ですか。
飼い主のために人里まで来るとは、ご苦労なことです。
霊烏路 空:
貴方も、みんなに狙われてご苦労様だね。
でも、これが最後らしいよ?
霊烏路 空:
狸によれば、私が最後の刺客なんだってさ。
というわけで……、くらえ!
吉弔 八千慧:
くっ……。なかなか、いい火力ですね……!
吉弔 八千慧:
(こいつ、狸と言ったな。
あの化け狸に、直接依頼されているのか)
霊烏路 空:
どんどんいくぞー! さとり様や、お燐や、
地霊殿のみんなに、永遠の幸せをあげるんだから!
吉弔 八千慧:
(ということは、案外近くにいるかもしれないな。
この地獄鴉をさっさと倒して、問い詰めるか)
悪霊:
……わ……なる、なんて……。
吉弔 八千慧:
(ああ、うるさい。
いい加減、この声も耳障りだ)
霊烏路 空:
究極の核融合の力、見せてやる!
燃え尽きろおおおっ、……おおお!?
吉弔 八千慧:
止まれ、地獄鴉。
このドレスを、燃やし尽くすつもりですか?
霊烏路 空:
へぇ……ホントに刀を抜くと、
ドレス姿になるんだ……って、わわわ!
霊烏路 空:
そうそう、そうだよ! ドレスを持ち帰るんだから、
燃やしたらダメなんだった!
霊烏路 空:
爆発を止め、と……、止められなーい!?
せめて照準外して……、うぎゃあああ~~っ!!
吉弔 八千慧:
……暴発して吹っ飛んでいきましたね。
吉弔 八千慧:
さて、二ッ岩マミゾウを探さなければ。
おそらく、この辺りに……。
悪霊:
……なる、なんて。しあわせに……
幸せになる、なんて……。
吉弔 八千慧:
ぐ、ぅ……っ。
この声、ずいぶんと大きく……!
悪霊:
……許さない。許さない。許さない。許さない……!
悪霊:
私のドレス。私の幸せ。
許さない、幸せになるなんて許さない……!
吉弔 八千慧:
……は。何が、永遠の幸せをもたらす
幸福のドレス、だ……。