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白玉楼
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吉弔 八千慧:
ん、ここは……?
魂魄 妖夢:
あ、起きましたか。ここは白玉楼です。
私が運んできてあげたんですよ。
吉弔 八千慧:
それは……、お手数おかけしました。
魂魄 妖夢:
いえいえ。気絶した妖怪を、ずっと
里に転がしておくわけにもいかないですしね。
魂魄 妖夢:
それに、貴方の回収は、
幽々子様の指示でもあったので。
西行寺 幽々子:
お目覚めのようね、畜生界の組長さん。
お加減はいかがかしら?
吉弔 八千慧:
よろしくはないですね。
頭が割れるように痛いです。
西行寺 幽々子:
でしょうねえ。だって、
貴方が持ってるドレスは、呪いのドレスだもの。
西行寺 幽々子:
幸福のドレスなんて、まったくの嘘。
みんな、面白がって噂を信じているけどね。
魂魄 妖夢:
たしか結婚式を目前にして死んでしまった花嫁の無念が
花嫁衣装に憑りついたんでしたっけ?
西行寺 幽々子:
そうそう。その結果、純白の花嫁衣装は、
着た人を殺す呪いのドレスになっちゃったんだって。
吉弔 八千慧:
呪い殺す、ね……。幸福のドレスなんかより、
その方が、よほど納得できますね。
西行寺 幽々子:
だから来てもらったのよ。
そろそろ危ないと思ってね。
西行寺 幽々子:
そのドレス、最近幻想郷に流れ着いたんだけど、
呪いの力は、こちらでも健在でね。
魂魄 妖夢:
最初にドレスを見つけたのは、マミゾウさんです。
子分が一匹やられちゃったんだそうで。
魂魄 妖夢:
亡霊か怨霊が憑りついてるみたいだから、
なんとかできないかと、うちに相談に来て……。
西行寺 幽々子:
まあ、幽霊絡みならなんとかできるかなと思って、
呪いの力を抑え込んでみたんだけど。
西行寺 幽々子:
そろそろ封印が解ける頃だと思うのよ。
こういうのは本業じゃないから、難しいわぁ。
吉弔 八千慧:
(呪いのドレスに、死んだ花嫁の無念、か。
つまり、あの声は……!)
悪霊:
……そう。私が幸せじゃないのに、
幸せになるなんて許せない。
吉弔 八千慧:
(なんだ!? 身体が、勝手に……!)
吉弔 八千慧:
だから、誰も幸せになんてさせない。
そうだ……みんな死んでしまえ!
魂魄 妖夢:
刀を、自分の首に……!?
幽々子様、これは!
西行寺 幽々子:
封印が解けて、ドレスの呪いが暴走しているわ!
もう一度、抑え込まないと……!
吉弔 八千慧:
……はっ。
ずいぶんと、ナメた真似をしてくれますね。
吉弔 八千慧:
(この私を乗っ取ろうだなんて、
ドレスに憑いた人間霊ごときが、ふざけるな)
吉弔 八千慧:
お前は、奴隷だ。資源だ。餌だ。
何もできずに、ただ黙っていればいいんですよ。
悪霊:
あ、ああ、あああぁ…………。
吉弔 八千慧:
……そう、それでいい。
すべては、私に従っていればいいのです。
魂魄 妖夢:
ええと……今のは、どういう……。
二ッ岩 マミゾウ:
いやはや、なかなか見事じゃないか!
まさか、その力でドレスの怨霊まで黙らせるとは。
二ッ岩 マミゾウ:
逆らう気力を失わせる力……。
ふむ、やはり脅威と言わざるを得んのう。
吉弔 八千慧:
……二ッ岩マミゾウ。またお会いできましたね。
二ッ岩 マミゾウ:
お元気そうで何よりじゃよ、組長殿。
ゲームは、儂の負けじゃのう。
二ッ岩 マミゾウ:
約束じゃからな。ドレスを手放す方法を教えよう。
それを手放したいなら、花嫁の怨霊を消滅させてやればよい。
二ッ岩 マミゾウ:
実はな、幸せのドレスの情報を流して、お主に
刺客を差し向けたのは、そのためでもあったんじゃよ。
吉弔 八千慧:
……ほう?
私を殺すためかと思っていましたが。
二ッ岩 マミゾウ:
いやいや! 儂はただ、悲しき花嫁殿に
満足して成仏してもらいたかっただけなんじゃ。
二ッ岩 マミゾウ:
ほれ、戦ってでも手放したくない、なんて、
花嫁冥利に尽きる……かもしれんじゃろ?
二ッ岩 マミゾウ:
組長殿は、たくさんの修羅場を切り抜けてくれた。
怨霊も、そろそろ満足する頃合いじゃろう。
二ッ岩 マミゾウ:
きっと、次の一戦で、成仏してくれるはずじゃ!
吉弔 八千慧:
そう、ですか。次の戦いで……。
二ッ岩 マミゾウ:
頼む。ドレスに呪い殺されたうちのもんの無念も、
いっしょに晴らしてやってくれ。