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数日後 人間の里
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杖刀偶 磨弓:
さあ、到着です!
並びますよ、吉弔八千慧!
吉弔 八千慧:
急に地上に連れ出されたと思ったら……、
なんなんですか、この行列は?
杖刀偶 磨弓:
ドレスの採寸よ。今、幻想郷では
ウエディングドレスが大流行してるんです。
杖刀偶 磨弓:
ほら、先日、貴方が着ていたのを
たくさんの人が見ましたからね。
吉弔 八千慧:
はぁ、それで皆が興味を持って、
こうしてドレス業者が生まれたと……。
吉弔 八千慧:
それはどうでもいいですが、
なぜ、私も採寸しなければいけないんですか。
杖刀偶 磨弓:
袿姫様のご命令です。どうしても貴方のドレス姿が見たいそうで。
あ、列が動いた! 進みますよ!
吉弔 八千慧:
馬鹿らしい、帰らせてもらい……
二ッ岩 マミゾウ:
おや、お主たちも来たのか。キッチリ採寸して、
素敵なドレスを仕立ててやるぞい。
吉弔 八千慧:
……ここは貴方の店だったんですか?
二ッ岩 マミゾウ:
色々あってな、手伝ってるんじゃ。
さて、それじゃ店の奥へどうぞ。
杖刀偶 磨弓:
はい!
八千慧、貴方もきちんと測ってもらうんですよ!
二ッ岩 マミゾウ:
……組長殿は、儂が採寸をした方がよいだろうな。
吉弔 八千慧:
ええ、そうですね。よろしくお願いします。
二ッ岩 マミゾウ:
身長に、肩幅に……ふむふむ。よしよし。
お疲れ様、これで採寸は完了じゃ!
二ッ岩 マミゾウ:
……今回、組長さんには、ずいぶん世話になった。
ありがとう。うちのもんの無念を晴らしてくれて。
吉弔 八千慧:
いえ、別に。貴方が私を巻き込んだのは、
それだけが理由ではないでしょう?
二ッ岩 マミゾウ:
もちろん。最近地上に顔を出すようになった
畜生界の組長さんと、遊んでみたくてのう!
吉弔 八千慧:
だから、呪いのドレスを刀に化けさせて、
私の元へ届けさせた。そうですね?
二ッ岩 マミゾウ:
刀を届けたカワウソ霊も儂じゃよ。
気づいておったかの?
二ッ岩 マミゾウ:
最初は、抜刀すれば呪われる刀として
香霖堂にでも持ち込むつもりだったんじゃが……。
二ッ岩 マミゾウ:
お前さんにドレスを着せたら
面白そうだと思ってしまってのう!
二ッ岩 マミゾウ:
刀を抜いたら、お前さんに似合うドレスに
化けるよう、儂の力で手を加えてみたんじゃ。
吉弔 八千慧:
……それから? まだ、理由があるでしょう。
私と遊ぼうと思った理由が。
吉弔 八千慧:
最近、畜生界で起こった抗争……。
そこで消滅した、タヌキ霊。
二ッ岩 マミゾウ:
……そうとも。
うちのもんが世話になったのう。
二ッ岩 マミゾウ:
死んだ後とはいえ、元は儂の子分。
使いつぶされたと聞けば、黙ってはおれん。
吉弔 八千慧:
つまり、今回の騒動はその報復でもあったと。
ずいぶんと大掛かりなことをしましたね。
二ッ岩 マミゾウ:
まったくじゃ。あっちこっちに協力を頼んだせいで
酒やら何やら要求されまくって、すっからかんじゃ。
二ッ岩 マミゾウ:
しかし、面子を保つには必要な投資。
このくらいはやると、わかってもらおうかの。
吉弔 八千慧:
……畜生界は、弱肉強食。
弱い者は食われ、消えるだけです。
吉弔 八千慧:
貴方が何をしようとも、それは変わりませんよ。
二ッ岩 マミゾウ:
……ま、それならそれでいいんじゃ。
二ッ岩 マミゾウ:
今回は楽しかった。
また、こうして遊ぼうじゃないか。
吉弔 八千慧:
いいですよ。
次は、私が仕掛け人になりましょう。
吉弔 八千慧:
本物の畜生のやり方を見せてあげますよ。
貴方たちの、ぬるいおままごととは違う……、ね。
二ッ岩 マミゾウ:
くっくっ……。そいつは、楽しみじゃなあ?
吉弔 八千慧:
ええ、楽しみにしていてください。
八千慧&マミゾウ:
ははははは…………!