--------------
博麗神社境内
--------------
庭渡 久侘歌:
お二人が去ってすぐ、何かが迫りくる音が
聞こえたんです。そして……。
杖刀偶 磨弓:
埴輪兵団、止まれッ! これより、
この場にある屋台を、すべて回収する!
庭渡 久侘歌:
キャーーー!! ま、磨弓さん!?
何してるんですか!? 埴輪を止めてください!
杖刀偶 磨弓:
これは、袿姫様からのご命令だ。
邪魔はさせないわよ。
庭渡 久侘歌:
どうして、そんなことを……!
これじゃ、お祭りができなくなっちゃいます!
杖刀偶 磨弓:
それが人間たちの望みなのだろう? 屋台も
霊長園で再利用されるし、なんの問題もないわ。
杖刀偶 磨弓:
よし、すべて持ったな。埴輪兵たちよ、行くぞ!
霊長園へと運び込めーッ!
庭渡 久侘歌:
一瞬の出来事でした。わけのわからないうちに、
屋台はすべて埴輪たちに持ち去られてしまい……。
驪駒 早鬼:
袿姫の差し金か! くそっ、あの邪神め……!
急いで霊長園へ行って、屋台を取り返さねば!
吉弔 八千慧:
待ちなさい。我々だけでは袿姫に敵いません。
……あそこの人間も連れていくべきです。
博麗 霊夢:
な、何よこれーーー!!
帰ってきたら、境内がすっからかんじゃないの!
屋台の出店者A:
まさか、屋台が持ち去られてしまうなんて……。
こ、このままじゃ俺たちは……。
動物霊:
おい、博麗の巫女。あんた責任者だろ?
どうにかしてくれよ!
博麗 霊夢:
ちょ、ちょっと。みんな、落ち着いて!
何があったか、順を追って説明しなさい!
吉弔 八千慧:
それは、私たちから話しましょう。
博麗 霊夢:
あんたたちは、畜生界の組長コンビ……。
いったい、何があったの!?
博麗 霊夢:
まったく、あの造形神ったら、
屋台なんか奪って、何をするつもりかしら。
吉弔 八千慧:
どうせ、ろくでもないことでしょう。しかし、
よりにもよって、我々の祭の邪魔をするとはね。
驪駒 早鬼:
まったく、いい迷惑だ。
さっさと取り返して、絶対に祭を開くからな!
博麗 霊夢:
言っとくけど、博麗神社のお祭りだからね!
ていうかあんたたち、やけに団結してない?
驪駒 早鬼:
そりゃあ、ここまで二人で
いろいろと仕込んで……いったたた!
博麗 霊夢:
まあ、乗り気なのは助かるけど。……でも、
あんたまでついて来ることなかったのよ?
庭渡 久侘歌:
畜生界は危険ですからね、お供いたします。
それに、気になることもありますし。
杖刀偶 磨弓:
それが人間たちの望みなのだろう? 屋台も
霊長園で再利用されるし、なんの問題もないわ。
庭渡 久侘歌:
(あの発言、どういう意味かしら。お祭りを
開きたくない人間がいるということ……?)
庭渡 久侘歌:
(それに、組長2人の態度も気になるわ。
私がしっかり目を光らせておかないと!)
杖刀偶 磨弓:
神社から運んできた屋台の設営は、滞りなく
進んでおります。完成したものも、ちらほらと。
埴安神 袿姫:
順調ね。どれ、さっそく試してみましょうか。
……と、その前に、お客さんみたいね?
博麗 霊夢:
ちょっと! これ、うちの屋台じゃない!
勝手に並べたりして、どういうつもり!?
埴安神 袿姫:
あらあら、皆さんお揃いで。
見ての通り、お祭りの準備をしてるのよ。
埴安神 袿姫:
人間霊が、お祭りが恋しいって言うもんだから、
霊長園で開いてあげようと思ってね。
驪駒 早鬼:
私たちの屋台を掻っ攫って祭を開こうとは、
いい度胸だな? 邪神よ。
庭渡 久侘歌:
地上では、人間の皆さんが困っています。
すぐに、その屋台を返してください!
博麗 霊夢:
そうよ。これじゃ売り上げが見込めなくて困るわ!
嫌だと言っても、力づくで奪い返してやるわ!
埴安神 袿姫:
あら、そうなの? ……でも、力づくは困るわね。
ここで暴れたら、屋台も無事では済まないわよ。
吉弔 八千慧:
埴安神の言う通りですね……。ここで戦って
屋台を壊してしまっては、意味がありません。
驪駒 早鬼:
そんなの関係あるか!
つべこべ言わずに、屋台を返せ!
埴安神 袿姫:
そうねぇ……あっ! それじゃあ、ひとつ提案。
この屋台の遊びで勝負してみない?
埴安神 袿姫:
金魚すくい・射的・型抜き……。貴方たちが
勝ったら、その屋台をおとなしく返すと約束するわ。
庭渡 久侘歌:
あら……。意外な提案ですが、
戦うより平和的だし、悪くないのでは?
博麗 霊夢:
人のものを奪っておいて、提案できる立場?
とは思うけど、屋台が壊れるよりマシか。
吉弔 八千慧:
まずいですよ、屋台対決は好ましくない。
早鬼。ここは、我々で反対を……。
驪駒 早鬼:
へぇ。いいじゃないか、屋台対決。
その勝負、受けて立つ!!
驪駒 早鬼:
ひとつ残らず、返してもらうからな!
吉弔、これなら袿姫相手でも勝ち目があるぞ!
吉弔 八千慧:
くっ、事の重大さをわかっていないな、この脳筋。
……はぁ、どうなっても知りませんからね。
埴安神 袿姫:
ふふ、決まりね。それじゃあ、勝負を始めましょう。
磨弓、設営の終わった屋台に案内を頼むわ。