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オーディション会場
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ルナサ・プリズムリバー:
ついに本番。泣いても笑っても、
今日の結果がすべてよ……。
メルラン・プリズムリバー:
最初から最後まで、笑顔で頑張ろう!
私たちなら大丈夫だよ!
リリカ・プリズムリバー:
いいこと言うね。
今日の最後は、笑って終わろうか!
メルラン・プリズムリバー:
みんなー! 今日の私たちは、アイドルとして
ステージに立つわ。初めてのアイドルライブよ!
メルラン・プリズムリバー:
いつも以上にハッピーにしちゃうから、
楽しんでいってねー!
ルナサ・プリズムリバー:
私たちの初めての挑戦、
どうか温かく見守っていてほしい。
リリカ・プリズムリバー:
姉さん固すぎだって。
そんな気負わなくても、いつも通りで十分だよ。
リリカ・プリズムリバー:
そうしたほうが、いい笑顔になるもんよ?
調整は私に任せて、笑って笑って!
ルナサ・プリズムリバー:
確かにリリカの言う通りね。
今日は私も、楽しむつもりでいくわよ。
摩多羅 隠岐奈:
やっぱり、プリズムリバーは揺るがないな。
生きてたら、間違いなくスカウトしてただろう。
摩多羅 隠岐奈:
観客も盛り上がっているし、
宣伝を兼ねたオーディションも、大成功だ。
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ステージ袖
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ルナサ・プリズムリバー:
いいステージだった。
やれることは、全部やったと思う。
メルラン・プリズムリバー:
楽しかったー! もう一回やりたい!
リリカ・プリズムリバー:
あれだけの歓声をもらったし、このままいけば
フェスのステージでもう一回ライブできるよ!
ルナサ・プリズムリバー:
ここまで聞こえる歓声……。
今は、クラウンピースのステージだったわね。
リリカ・プリズムリバー:
えーっ!?
私たちより明らかに盛り上がってない?
メルラン・プリズムリバー:
すっごーい!
会場全体、ハッピーな感じ!
クラウンピース:
ふっふーん! どうよ、あたいのステージは?
最高にホットだったでしょ!
クラウンピース:
オーディション1位通過、間違いなし!
フェスの主役は、いただきね!
リリカ・プリズムリバー:
言ってくれるじゃん?
結果は最後までわかんないのにさ。
クラウンピース:
わかるよ。あたいのときのほうが確実に、
会場が沸き上がって……。
クラウンピース:
……でも、もしかしたら。
あのキョンシーなら、もっと……。
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ステージ裏 控室
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宮古 芳香:
おお……すごい歓声だ。
かちこちの身体にびりびりくる。
宮古 芳香:
プリズムリバーも、地獄の妖精も、本当にすごい。
それに比べて、私は……。
宮古 芳香:
青娥! 私のすごいところってなんだ!?
霍 青娥:
なあに、芳香ちゃん。緊張してるの?
貴方は十分すごいわよ?
霍 青娥:
タフなところとか、腐ってるところとか。
それと可愛い。すんごく可愛い。
宮古 芳香:
ちがーう! アイドルとしてすごいところだ!
私は没個性だ! 土に埋まってるのと同じだ!
霍 青娥:
うーん……。本当に十分なのに。
どうしても、自分のすごいところが知りたいの?
宮古 芳香:
そうだ、知りたい! 教えてくれ!
私はもっと、楽しいアイドルになりたい!
霍 青娥:
それなら……お札を剥がせばいいわ。
そうすれば、貴方は自分の本心を理解するでしょう。
霍 青娥:
心から望んでいることがわかれば、
求めている個性も見つかるわ。
宮古 芳香:
おお! では、さっそくお札を剥がしてくれ!
霍 青娥:
ねえ芳香ちゃん。
貴方、自分が何を言っているのか、わかってる?
霍 青娥:
お札を剥がしてほしいって? キョンシーが?
それは、誰の意思なのかしら。ねえ、芳香ちゃん?
宮古 芳香:
せ、青娥? なんだ、怖い顔して……。
これは私の意思だぞ?
霍 青娥:
お札を剥がしている間、貴方は
私のキョンシーではなく、ただの死体に戻る。
霍 青娥:
貴方は、それがいいのね?
物言わぬ、哀れで虚ろな死体に、戻りたいのね?
宮古 芳香:
……うがー! 何を言っているのかわからん!
私は、青娥のキョンシーだぞ!
宮古 芳香:
でも同じくらい、アイドルになりたいと思った!
それに、青娥もアイドルをやれと命じた!
宮古 芳香:
ならば、お前のキョンシーとして、
私は、すごいアイドルになりたい!
霍 青娥:
……芳香ちゃん。
霍 青娥:
……はあ。わかったわ。
やりたいことができないのは、苦しいものね。
霍 青娥:
本番まで、あと少し時間があるわ。
自分のやりたいこと、見つけてきなさい。
宮古 芳香:
ありがとう青娥。まかせて、おけ……。
宮古 芳香:
んん……。よく寝たような、そうでもないような。
でも、頭がスッキリしているな。
霍 青娥:
おはよう芳香ちゃん。気分はどう? 貴方、
出番待ちのアイドルみんなに、歌を詠んであげてたわ。
宮古 芳香:
そんなことをしていたのか。でも、
納得はできる気がする。とてもいい気分だ。
宮古 芳香:
青娥、ありがとう!
私のやりたいこと、見つかった!
宮古 芳香:
私が楽しいと思ったこと、好きなことを広めにいく!
教えてあげるんだ! それが、アイドルだ!
霍 青娥:
……いい娘ね。それじゃあ、いってきなさい。
あのステージで、一番輝いてきなさい!
宮古 芳香:
キョンシーとして長い時間を過ごしてきたが、
アイドルを知ってから、毎日が楽しい。
宮古 芳香:
死体なのに鼓動が止まらないほど、ドキドキだ。
これを独り占めなんて、もったいない!
宮古 芳香:
みんなにも教えよう!
アイドルって……、すっごい楽しいんだ!
霍 青娥:
うーん。いい表情。用意した衣装も完璧!
ま、素材が最高だから、何しても百点なのよね。
リリカ・プリズムリバー:
うわー! すっごい楽しそうだね!
メルラン・プリズムリバー:
見てるだけでも、
ハッピーなのが伝わってくるわ~!
ルナサ・プリズムリバー:
本当に……。きっと、順位とか
勝ち負けなんて、考えていないんでしょうね。
クラウンピース:
やっぱり、警戒すべきはあいつだった!
歌もダンスも普通なのに、悔しいけど……
クラウンピース:
なんか、楽しい! 一緒に歌ったりしたくなる!
やっぱりあいつ、アイドルの才能がある!
宮古 芳香:
みんな! 飛んで! 歌え!
我々は今、楽しいんだ! はしゃぐんだー!
摩多羅 隠岐奈:
皆、素晴らしいステージだった! 参加してくれた
すべてのアイドルに、惜しみない拍手を!
摩多羅 隠岐奈:
それでは、オーディションの結果発表に移る。
発表しよう。皆が選んだトップアイドルを!
摩多羅 隠岐奈:
トップアイドルに選ばれたのは……宮古芳香!
ルナサ・プリズムリバー:
おめでとう。
本当に素敵なステージだったわ!
メルラン・プリズムリバー:
ハッピーな気持ちにさせてくれてありがとう!
私、あなたのダンス好きよ!
リリカ・プリズムリバー:
まあ、あんなステージ見せられたら、
選ばれるのも納得だね。おめでとう!
宮古 芳香:
おおお……! 私が一番のアイドルになったのか!
ありがとう! ありがとうみんな!
クラウンピース:
あたいの負けだよ。あんたのステージ、
悔しいけど、すごく楽しかった!
宮古 芳香:
おお! だったら一緒にステージに出よう!
楽しいことは、多ければ多いほどいい!
クラウンピース:
それって、コラボってこと?
勝手に決めちゃってもいいの?
摩多羅 隠岐奈:
いや、いい! アイドルのコラボなんて、
面白いに決まってる! 私が許す!
クラウンピース:
じゃあいっか! そういうことだから、
当日はよろしくねー!
摩多羅 隠岐奈:
では諸君! 本番まで楽しみに待っていてくれ!
これにて『偶像華宴祭』オーディション閉幕だ!
摩多羅 隠岐奈:
本番は確実に盛り上がるぞ!
これから忙しくなるな! 芸能の神の血が騒ぐ!
ヘカーティア・ラピスラズリ:
コラボするって言うなら、協力は惜しまないわ。
うちのアイドルの可愛さ、もっと広めないと。
霍 青娥:
おっと、ここで失敗しちゃいけないわ。
私もうちの娘を、もっと輝かせないとね!