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人間の里
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鈴仙・優曇華院・イナバ:
うーん、休みっていいなぁ!
これも師匠が雇った、バイトのおかげだわ!
鈴仙・優曇華院・イナバ:
だけど師匠も急ね。突然お暇を取っていいなんて。
……もしかして、何か裏でも?
鈴仙・優曇華院・イナバ:
この前の勧誘もあるし、嫌な予感がする……。
例のバイトも気になるし、調べにいこう!
鈴仙・優曇華院・イナバ:
この地区も……こっちもだわ!
鈴仙・優曇華院・イナバ:
どの地区にも薬は売り終わってるみたい。
ずいぶん手際がいいのね、バイトの人……。
常連客A:
あら、薬売りさん!
チラシ見たわよ。当日は応援にいくからね!
鈴仙・優曇華院・イナバ:
あ、どうも……えっ?
チラシってなんのこと? 応援にいくって?
常連客B:
あ、薬屋さん! 本番楽しみにしてるよ!
あんな特技があったなんて、知らなかったなぁ。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
特技って、なに? 私の知らないところで、
何かが勝手に進んでない!?
鈴仙・優曇華院・イナバ:
とにかく、バイトの子を探そう!
会えば何かわかるはず!
鈴仙・優曇華院・イナバ:
このペースならこの辺りまで来てそうよね。
バイトの人、どこにいるのかしら?
純狐:
あら、あなたは……!
今日はお仕事、お休みだったはずよね?
鈴仙・優曇華院・イナバ:
うひぇあわ!?
きゅ、急にうしろから出てこないでってば!
ヘカーティア・ラピスラズリ:
この子、私たちの働きぶりが気になったんだわ。
安心して。ちゃんと薬は正しく扱ってるわよん。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
薬、正しく……? ってええ!?
もしかしてバイトって、貴方たちだったの!?
クラウンピース:
そうさ! あんたが仕事で忙しいって言うから、
あたいたちが手伝えばいいって、ご主人様が!
鈴仙・優曇華院・イナバ:
外堀を埋めにきている……。気持ちはありがたいけど、
前に話した通り、私は音楽なんて……。
ヘカーティア・ラピスラズリ:
それだけじゃないわ。許可をもらって、
薬を買いにきた人へチラシも渡してるの。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
音楽フェス参加者募集……。
ちょっと、どういうことですかこれ!?
ヘカーティア・ラピスラズリ:
参加者募集の告知チラシよ。
薬売りのついでに配れば、一石二鳥じゃない。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
そうじゃなくて、
すでに参加が決定してるアーティストの名前!
鈴仙・優曇華院・イナバ:
ここ! なんで私の名前が書いてあるんですか!?
純狐:
私が追加したのよ。
どうしても私が、貴方と組んで参加したかったの。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
なんで私なの……。
ほかに適任者がいると思うけど?
純狐:
そんなことないわ、絶対にそんなことない!
実際に演奏したらわかる。必ず!
鈴仙・優曇華院・イナバ:
そのDJセット、もしかして
ずっと持ち歩いてたの……?
ヘカーティア・ラピスラズリ:
純狐ったら、すっかり気に入ったみたいでね。
貴方も少しだけ付き合ってくれない?
純狐:
さあ、準備ができたわ。今から再生ボタンを押すから、
好きなようにエフェクトをつけてみて。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
ここで!?
私、本当に触ったこともなくて、一度も……!
純狐:
大丈夫よ。貴方の思うままにやっていいの。
誰も笑わないし、笑わせもしないから。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
ひええ、目が笑ってない。本気だ……!
い、一回だけだからね。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
これで、こう鳴るんだ……。
あ、だったらこっちのほうがいいかも?
鈴仙・優曇華院・イナバ:
よし、思った通り!
それなら、もっと早く動かせば……!
クラウンピース:
うわぁ……! 何これ! かっこいい!
本当にやったことないのか!?
ヘカーティア・ラピスラズリ:
本当ね。素晴らしいDJだわ。
そう思ったのは、私たちだけじゃないみたいね。
純狐:
やっぱり、私の目に間違いはなかった!
いいぞ! もっと好きに演奏するがいい!
鈴仙・優曇華院・イナバ:
(人が集まってきちゃった!
これいつ終わるの!? すごく忙しい!)
鈴仙・優曇華院・イナバ:
(でも、ちょっと楽しくなってきたかも。
この音、少し波長を伸ばすと素敵じゃない?)
ヘカーティア・ラピスラズリ:
純狐ったら、あの子の才能に
気がついていたのね。やけにこだわると思ったわ。
純狐:
彼女は元、月の兎。波長を操れる。
ならば、音の扱いも得意だと思ったのよ。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
あっはは、どもどもー……はっ!?
純狐:
おつかれさま。とてもいいアクトだった。
楽しかった?
鈴仙・優曇華院・イナバ:
え、ええ。思ったより楽しんじゃったかも……。
純狐:
貴方には、その波を操る力で、人を掴む才能がある。
私の音楽に合わせられるのは、貴方だけ。
純狐:
私は、自分の理想の音楽を表現したい。
どうか力を貸してほしい。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
えぇ! そ、そんな、頭を下げられても……。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
(どうしよう。自信はないし、すごく不安だけど、
拍手をもらったときは嬉しかったのよね……)
鈴仙・優曇華院・イナバ:
……チラシ、名前が載っちゃってるのよね。
仕方ないし、ここまで頼まれたら……断れないか。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
いいわ。私もその音楽フェス、参加しようじゃない!
クラウンピース:
やったー! メンバーが増えたぜ!
ご主人様、これでフェスが開けますよね!?
ヘカーティア・ラピスラズリ:
ええ、バッチリね! そろそろ開く準備に、
入っても大丈夫そうだわ。あとはチラシの効果次第!
純狐:
鈴仙・優曇華院・イナバ。本当にありがとう。
貴方のおかげで最高の音楽ができる。期待しているわ。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
お、お手柔らかにお願いします……。