-------------- 妖怪の山 -------------- 菅牧 典: ……ということで、確かに伝えましたよ。 射命丸 文: 承知しました! 花火大会の宣伝チラシ作りなら、 一流新聞記者たる、射命丸 文の出番です! 射命丸 文: 大見出しは、天狗の一大イベントに向けて、 大天狗様たちにインタビュー! ……とか? 菅牧 典: 「文々。新聞」も丸くなったものですねぇ。 そんな、ありきたりな内容にするなんて……。 菅牧 典: その程度、他の新聞社もおやりになられるのでは? 鞍馬諧報くらまかいほうなり、花果子念報なり…… 射命丸 文: なっ……! 菅牧 典: いいんですかぁ? 天下の文々。新聞が、 世間様からつまんない新聞と思われても。 射命丸 文: い、良いワケないじゃないですか! 菅牧 典: そうだ♪ せっかくだし、他紙と似た内容に見せかけて、 どこよりも目を引くチラシにしたらどうです? 菅牧 典: これはチャンスです。 他の天狗を出し抜くなら……今だと思いますよ。 射命丸 文: そ……それは、そうですね! 確かにこれは 絶好のチャンス! 逃すわけにはいかないわ! 射命丸 文: よーし! はたてたちを出し抜いてやるわよー! 菅牧 典: くふふ……! これで、きっと面白い記事を作ってくれるはず。 菅牧 典: まあ、人さえ呼べれば、 どんな記事でもいいんだけどね。 菅牧 典: さーて。私も、あのDJたちのとこへ 行かなくっちゃ! こんこーん♪ 飯綱丸 龍: うん、これは……? 姫海棠 はたて: あー、めぐむちゃ……飯綱丸様! ええと、七色映写箱プロジェクションマッピングばこという装置でして。 飯綱丸 龍: はたて。いいよ、いつもの口調で。 敬語はお前の柄じゃないだろう。 姫海棠 はたて: え、いやあ、とはいえ……。 飯綱丸 龍: 私は、お前のその上下うえしたのない交流に一目置いている。 天狗の縦社会には、そういうやつも一人は必要だ。 飯綱丸 龍: 私には気軽な口調で構わない。まあ、他の大天狗や、 周りに誰か居る時は、気をつけて欲しいが。 姫海棠 はたて: そ、そう……? なら、お言葉に甘えて! 姫海棠 はたて: これね、河童の新しい発明品なんだって。 花火の発注のついでに、椛が借りてきてくれたの。 飯綱丸 龍: 七色映写箱プロジェクションマッピングばこ……か。 これはいったい、どういうものなんだ? 姫海棠 はたて: 説明は受けたけど、早口でよくわかんなかったのよね。 せっかくだし、ちょっと動かしてみる? 姫海棠 はたて: この線と機械を繋げて……っと。 よし、ポチっとな! 飯綱丸 龍: おおっ!? 天井に光の絵が! これは……河童の絵かな。 姫海棠 はたて: こんなにきれいに出るのね! 花火の煙に映すと、空にも絵が描けるんだって。 姫海棠 はたて: 何かに使えないかなー、と思って 持ってきたけど、どうかな? 飯綱丸 龍: ……はたて、これは大発明だぞ! 姫海棠 はたて: ひょえっ!? 飯綱丸 龍: 実は、花火には欠点があってな……。 飯綱丸 龍: ほら、花火って、どうしても、 続けては打ち上げられないだろう? 姫海棠 はたて: あ、確かに。 全部人力で、手間もかかるもんね。 飯綱丸 龍: そう。だから、私の流星で その間をもたせるつもりだったんだが…… 飯綱丸 龍: この機械があれば、派手な演出で 客の目を引きつけておける! 姫海棠 はたて: 確かに! さっすが、めぐむちゃん! 飯綱丸 龍: 敬語は要らないとはいったが、 めぐむちゃん、というのはやめてくれないか……。 飯綱丸 龍: しかしこれはお手柄だ。よくやったな、はたて。 姫海棠 はたて: 私じゃなくて椛よ、あとで直接感謝してあげて欲しいな。 白狼天狗はそういうの、喜ぶでしょ。 飯綱丸 龍: ああ、確かに。そうさせてもらおう。 いつも下と上を繋いでくれて、助かるよ。 飯綱丸 龍: コレで演目に欠けていたピースが埋まった。 河童の技術、存分に使わせてもらおうじゃないか。 白狼天狗: おーい、これはこっちでいいのー? 白狼天狗: そっちよりも先に、こっちを運んでー! 犬走 椛: 飯綱丸様ー! 打ち上げ筒の位置、ここらへんでしょうか? 飯綱丸 龍: ああ、いや。 もうちょっと手前……いや右だ! 飯綱丸 龍: そこで大丈夫。 緩まないよう、しっかり固定して。 菅牧 典: 飯綱丸様~。 照明配線の設置、完了しました。 飯綱丸 龍: ご苦労さま、典。 ……ふう。設営も進んで、会場も様になってきたな。 飯綱丸 龍: 「夏暮山なつくれやまの花火大会」も、 いよいよ開催が近い。 菅牧 典: あのお二人も、きっと今頃、 チラシ作りに精を出してるでしょう。 飯綱丸 龍: 文と、はたてか。天狗が作る新聞の力を、 存分に発揮してもらいたいものだね。 菅牧 典: ふふ、そうですね♪ 飯綱丸 龍: さあ、もうひと踏ん張りだ! 今日中に、あらかた準備を終わらせてしまうぞ! みんな: おー!