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妖怪の山
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飯綱丸 龍:
花火大会の片づけも終わって、
ようやく落ち着いたわ。
飯綱丸 龍:
今回の催しでは、人間にも妖怪にも、
天狗の力を見せつけることができたな。
菅牧 典:
ええ。
これもすべて、飯綱丸様のお力あってのことです。
飯綱丸 龍:
いや、これはみんなのおかげだ。
一人では、とても成しえなかった。
飯綱丸 龍:
特にお前は……。よくもまあ、
予定外の曲を、ねじ込んでくれたものだな?
菅牧 典:
いやですよぅ、飯綱丸様。私はね、
楽曲を発注するとき、ちょーっと囁いておいただけ。
菅牧 典:
フィナーレの前に、シークレットで一曲披露したら
とっても盛り上がるんじゃないですか、って♪
飯綱丸 龍:
ふん。
まあお前の児戯には、もう慣れてるよ。
飯綱丸 龍:
結果論だが、お前のおかげで花火大会が
非常に盛り上がったことは確かだ。愉しかったよ。
菅牧 典:
飯綱丸様……!
菅牧 典:
(ああ、私の悪戯なんて歯牙にも掛けない、
それでこそ我が主、私の御大将……!)
飯綱丸 龍:
天狗一丸となって、プロジェクトを行ったことで、
仲間の絆も組織力も、さらに強まっただろう。
飯綱丸 龍:
大天狗冥利に尽きるとは、このことだ。
それに何より……ふふっ……儲かったからな。
菅牧 典:
会場で市場を開き、価値のある品を集めさせる……
千亦どのも協力してくれましたね。
飯綱丸 龍:
そうだな、千亦にも礼を頼む。一度決裂したとはいえ、
まだしばらくは、友好な関係でいたいからな。
菅牧 典:
承知しました、それでは……。
飯綱丸 龍:
……はー。これでようやく一段落ね。
トラブルも乗り切ったし、他にやることも……
飯綱丸 龍:
そういえば、鴉天狗たちに頼んだ、
特別合同新聞はまだだっけ。
飯綱丸 龍:
お、噂をすれば……
射命丸 文:
飯綱丸様ー! 「夏暮山の花火大会」を
特集した新聞を、お届けに参りました!
飯綱丸 龍:
随分待たせてくれたな。どれどれ……?
飯綱丸 龍:
「音楽と流星の花火大会、大・大・大成功!」
ふむ。わかりやすくて、いい見出しだ。
射命丸 文:
いやぁ、本当に成功してよかったですね~。
記事も、作りがいがありましたよ!
飯綱丸 龍:
そうだな……しかし、お前は、
宣伝チラシを作らなかったようだな。
射命丸 文:
うっ……。なぜ、それを?
飯綱丸 龍:
忙しさにかまけて気づかないとでも思ったか?
甘く見てもらっては困るねぇ。
射命丸 文:
す、すみません……。
でも、これには事情がありまして!
飯綱丸 龍:
説明してみなさい。
射命丸 文:
最初は抜け駆けして、
どこよりも目を引くチラシを作るつもりでした。
射命丸 文:
ですが、我々天狗におびえる人間たちを見て、
思いついたんです。
射命丸 文:
せっかくだから、
人間たちも巻き込んでやろうと!
飯綱丸 龍:
……それが、あの里で上がった
花火だったってわけか。
射命丸 文:
そうなんです。飯綱丸様を見習って、
花火の手配をしたんですが、結構大変で……。
射命丸 文:
それで、チラシを作る時間が
なくなってしまいまして……。
射命丸 文:
し、しかしながら、人間と妖怪が生きる、
幻想郷らしい花火大会になったんじゃないかと!
飯綱丸 龍:
くくっ、あっはっは!
射命丸 文:
……飯綱丸様?
飯綱丸 龍:
いや、実にお前らしいと思ってね。
飯綱丸 龍:
実際、お前のおかげでトラブルを乗り越えられた。
今回の命令違反は不問にしよう。
射命丸 文:
……あ、ありがとうございます、飯綱丸様ー!
飯綱丸 龍:
ああ。しかし、二度目はないぞ?
射命丸 文:
もちろんです! ……それでは、
私はネタ探しがあるので、これで失礼します!
飯綱丸 龍:
「夏暮山の花火大会」か。
長いようで短く、けれど充実した催しだったわ。
飯綱丸 龍:
部下たちの様子も、間近でよく見られたし。
また、こういう企画を立ててみても、いいかもね。
飯綱丸 龍:
でも、まずは短すぎた慰労会の続きね!
私以外全員潰れるまで、呑み明かすわよー!