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人間の里
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今泉 影狼:
うー……、人間がたくさんいる……。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
そりゃ、人間の里だからねぇ。
なに? 貴方、人間怖いの?
今泉 影狼:
だって、外の世界じゃ私と同じ種族のオオカミが
人間に狩られすぎて絶滅したって聞くし。
今泉 影狼:
人間怖いわー。ていうか、そもそも
よく知らない他人が怖いわー。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
……買うものいっぱいあるし、
さっさと行くわよー。
今泉 影狼:
あー! ちょっと待ってよー!
鈴仙・優曇華院・イナバ:
ここが粉屋さん。きな粉とかも扱ってるから、
いろんな味のお団子が作れるわよ。
里の住人A:
おう、薬売りさんじゃないか!
この間は、助かったよ!
鈴仙・優曇華院・イナバ:
あ、こんにちは。よかった、お元気そうですね。
あれから、肌荒れの調子はどうですか?
里の住人A:
おかげさんで、すっかり落ち着いたよ。
やっぱり、あんたのとこの薬は効くねえ!
鈴仙・優曇華院・イナバ:
あとは、月見団子を乗せる器も必要なんだっけ?
それなら、向こうのお店で……。
里の住人B:
おやまあ、薬売りさん! この前はありがとねぇ。
貴方に助けてもらってから、腰の調子がいいのよ。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
だからって、そんな大荷物持ったらダメですよ!?
もう、安静にしてって言ったじゃないですかー!
今泉 影狼:
あ、貴方……。すごいわね。
人間、全然怖くないんだ。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
そりゃあね。
里の人たちとは、普段からよく話すしね。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
……とはいえ、貴方の気持ちも少しはわかる。
私も昔は怖かったもの、人間。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
私、元は月の軍人だったのよ。
結局、戦いから逃げ出して地上に降りたんだけど。
今泉 影狼:
月の軍人!? へえ~……。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
それでまあ……降りたばっかりの頃は、
ずっと怯えていたのよね。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
自分で故郷を捨ててきたくせに、
知らない土地に立っていることが、怖くて。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
仲間はいない。誰も私のことを知らない。
ここにいる誰も、私のことを助けない。
今泉 影狼:
貴方も、一人で……。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
なーんてね!
実は全然、そんなことなかったんだけど!
鈴仙・優曇華院・イナバ:
お師匠様や姫様、てゐたち地上の兎仲間。
妖怪や人間の知り合いも、どんどん増えて……。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
喧嘩したり助け合ったり。
そのうちに、すっかり幻想郷になじんじゃった。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
だから怖くないの。
貴方も、人間と話してみるといいかもね。
今泉 影狼:
……そういうものなのかしら。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
それじゃ、買い出しを続けましょ。
次は……。
藤原 妹紅:
おや、鈴仙ちゃん。
……と、あんたは、この間の。
藤原 妹紅:
そっか、永遠亭に行ってみたんだな。
どうだ? お月見のやり方、わかった?
今泉 影狼:
うーん……どうなのかしら。
今、いろいろと教えてもらってるけど……。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
ああ、貴方がうちに来るよう言ったのね。正直、
こっちも忙しくて、あんまり教えられてないわ。
藤原 妹紅:
それなら、別のやつに
教えてもらったほうがいいかもしれないな。
藤原 妹紅:
よし、慧音に頼もう。先生だし。
ついて来な、あいつの家まで案内するよ。
今泉 影狼:
ありがたいけど、今はお手伝いの途中で……。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
買い出しは私が済ませておくから、
気にしなくていいわよ。あとで合流しましょ。
藤原 妹紅:
それじゃ、行こうか。こっちだ。
藤原 妹紅:
お邪魔するよー、慧音。
上白沢 慧音:
妹紅! また急に貴方は! 来るなら
前日に言っておいてくださいと何度も……。
今泉 影狼:
あ、お邪魔しますー……。
上白沢 慧音:
お、お前……! まさか、狼女か!?
今泉 影狼:
ひ、ひえっ……!?