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慧音の家
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上白沢 慧音:
お、お前……! まさか、狼女か!?
今泉 影狼:
ひ、ひえーっ!?
上白沢 慧音:
ごまかそうとしても無駄だ。お前は狼女だな。
それも、絶滅したはずのニホンオオカミの!
上白沢 慧音:
なんてことだ。まだ生き残りがいたのか……!
今泉 影狼:
(な、なになになに、この人間怖い!!
狼女、生き残り? って、もしかして私……)
今泉 影狼:
こ……、殺されるぅぅぅ~~~っ!?
藤原 妹紅:
ちょっ……、待て待て! どこに行くんだよ!
大丈夫だよ、殺させないって!
藤原 妹紅:
というか、慧音もどうした!?
お前が狼女嫌いだとは知らなかったぞ!?
上白沢 慧音:
嫌い? ……いやいや違う、誤解です!
私はただ、ちょっと嬉しくなっただけで……!
上白沢 慧音:
驚かせてすまなかった。狼女と会える機会なんて
そうあるものじゃないから、つい取り乱した。
上白沢 慧音:
いつか話をしてみたいと思っていたんだ。
同じ、満月の夜に変身してしまう者として。
今泉 影狼:
え、貴方、ただの人間じゃない……?
上白沢 慧音:
私は、上白沢慧音。
半分人間で半分白沢の、ワーハクタクだ。
今泉 影狼:
へえ~! 頭に、そんなに大きな角が!?
うっかり壁にぶつけたりしそうね。
上白沢 慧音:
たまにやるよ。狼女も、牙や爪が鋭くなるんだろう?
服に引っ掛けそうで大変だな。
今泉 影狼:
そうなのよ! お気に入りの服を破いたときは
本当にみじめで……。
上白沢 慧音:
おっと、すまない。変身仲間ができたと思って、
つい話し込んでしまったな。
上白沢 慧音:
君の用事を片付けよう。妹紅が言っていたが、
十五夜のお月見について聞きにきたんだって?
今泉 影狼:
ええ。あ、でも私がものすごくやりたがってるとか
そういうのではないのよ!?
今泉 影狼:
知り合いの妖怪仲間とやるんだけど、今回は
幹事を任されたから仕方なく準備をしてて……!
上白沢 慧音:
ふむ。満月の日は力が強まるから、妖怪としては
心待ちにしているものだと思っていたんだが。
今泉 影狼:
そんなわけないじゃない! 満月の日なんて
毛深くなるだけで、いいことなんかひとつもないわ!
上白沢 慧音:
君は、変身した自分の姿が嫌いなんだな。
その気持ちは否定しないが……。
上白沢 慧音:
ただ、自分の一面を拒絶したままなのは、
もったいないと私は思うよ。
上白沢 慧音:
私も、満月の日に白沢に変身してしまうが、
その日の、その姿でしかできないことがある。
上白沢 慧音:
もしかしたら君の狼の姿だって、満月の日に
君が何かを為す助けになるかもしれないだろう?
今泉 影狼:
そ、そんなの……!
今泉 影狼:
そんなの、わからないわよ……。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
それで、どうだった?
先生からお月見について話を聞けた?
今泉 影狼:
ええ。十五夜の歴史とか、飾りの意味とか……
おかげで、少しお月見のことがわかったわ。
因幡 てゐ:
二人とも、おっかえりー。買い出しご苦労様。
因幡 てゐ:
お、新入りも必要なもの買えたみたいだね。
どれどれ、見せてー。
因幡 てゐ:
いいねー。準備万端じゃないの!
これで、ばっちりお月見できるね!
今泉 影狼:
ほ、ほんと?
ちゃんとできるか、少し不安だけど……。
鈴仙・優曇華院・イナバ:
きっと大丈夫よ。お月見会、がんばってね!
今日は、お手伝いしてくれてありがとう!
今泉 影狼:
……うん。せっかくここまで準備したもの。
やってみよう、お月見!