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迷いの竹林 影狼の家
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今泉 影狼:
…………や、やっぱりムリぃ~~~!!
今泉 影狼:
もうお月見会の時間になっちゃったけど、
ムリよ、ムリ。外になんか出られないわ!
今泉 影狼:
変身して、こんなに毛深くなった醜い姿、
みんなに見られたくないもの……!
今泉 影狼:
あっ、しまった! お茶碗が!
今泉 影狼:
……はぁ。やっぱり今夜は、家にいよう。
なんだかいつもより荒っぽくなってる気もするし。
今泉 影狼:
お月見会の準備はちゃんとやったから、
みんなだけでも楽しんでくれればいいな……。
上白沢 慧音:
夜分すまない! 影狼、いるか!?
私だ、上白沢慧音だ!
今泉 影狼:
寺子屋の先生……?
な、なんの用!? 悪いけど私、今日は……。
上白沢 慧音:
頼む、助けてくれ!
人間の子供が、竹林に迷い込んでしまったんだ!
今泉 影狼:
えっ!?
上白沢 慧音:
ああ、開けてくれたか……。すまないな。
こんな満月の日に訪ねてきてしまって。
今泉 影狼:
……貴方ならいいわ。そっちも変身してるし。
それで、子供が竹林に迷い込んだって?
上白沢 慧音:
そうだ。今、妹紅が探してくれているんだが、
なかなか見つからない。
上白沢 慧音:
ここに、あの子が忘れていった下駄がある。
そこで、お前に聞きたいんだが……。
上白沢 慧音:
今夜のお前なら、匂いで足取りが
追えるんじゃないかと思うんだが、どうだ?
今泉 影狼:
確かに、今の私の嗅覚なら、
かなり遠くまで匂いをたどれると思うけど……。
上白沢 慧音:
頼む……、頼む!
どうか、あの子を探してくれ!!
今泉 影狼:
……わかったわ。その下駄、貸して。
やれるだけやってみる。
今泉 影狼:
……この辺りには、もういないわね。
匂いは、あっちに向かってるわ。
上白沢 慧音:
こちらだな。よし、急いで向かおう!
今泉 影狼:
これは……
どうやら、ここから竹林の外に出たみたい。
上白沢 慧音:
な……っ!!
今泉 影狼:
でも、里に向かった感じじゃないわね……。
行きましょう、ついてきて!
上白沢 慧音:
影狼、あの子の匂いはあったか!?
今泉 影狼:
あるには、あったわ。
でも……ダメ。ここで、匂いが途絶えてる。
今泉 影狼:
この辺りの崖から沢に落ちたか、
それとも妖怪にさらわれたか……。
今泉 影狼:
とりあえず、血の匂いはしないから、
ケガはしてないと思うけど。
上白沢 慧音:
そう、か……。
上白沢 慧音:
……いや、ここまで絞り込めたんだ。
一度、里に戻って人を集めてくる。
今泉 影狼:
わかった。
私は、このまま近くを探してみるわね。
上白沢 慧音:
頼む! すぐに戻る!
今泉 影狼:
いったいどこに……、ん?
今泉 影狼:
う、わっ!? 崖が崩れ……っ!?