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数日後 慧音の家
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今泉 影狼:
お邪魔します。来たわよ、先生。
上白沢 慧音:
ああ、よく来てくれたな。
この間は、本当にありがとう。
今泉 影狼:
いえいえ、無事に見つかってよかったわ。
あの子、元気?
上白沢 慧音:
元気だよ。今日も里中走り回って、
親御さんを困らせている。
上白沢 慧音:
それで、今日、君を呼んだ理由だが……。
これを受け取ってくれ。
今泉 影狼:
なにこれ?
子供の字かしら、何か書いてあるけど……。
上白沢 慧音:
『たすけてくれてありがとう』だそうだ。
あの子から、ふかふかもふもふのお姉さんに。
上白沢 慧音:
君のおかげだ。君が見つけてくれたから、
あの子は、今日も笑って過ごせる。
今泉 影狼:
……助けられてよかったわ。
どういたしまして、って、伝えてくれる?
上白沢 慧音:
もちろん。お安い御用だ。
今泉 影狼:
あら。こんばんは、妹紅さん。
藤原 妹紅:
こんばんは。いい夜だな。
藤原 妹紅:
そういや、聞いたよ。あの晩、
あんたが迷子を見つけてくれたんだってね。
藤原 妹紅:
よかったのか? 変身した姿を
ひとに見られたくないって言ってたじゃないか。
今泉 影狼:
そうなんだけど、
あのときは、緊急事態だったしね。
今泉 影狼:
……それに、思ってたより、
悪いことばかりでもなかったわ。
藤原 妹紅:
へえ?
今泉 影狼:
変身していたからこそ、遠くまで
あの子の匂いをたどれたのかなって思うし……
今泉 影狼:
あの姿の私だったからこそ、
凍えるあの子を助けることができたんだと思う。
今泉 影狼:
だから、満月も悪くないかなって。
藤原 妹紅:
そっか。変身した姿だからこそ
できることがあったってわけだ。
今泉 影狼:
まだまだ、毛深くなってしまうのには
抵抗があるけれどもね。
今泉 影狼:
だけど、まあ……。そんな姿でも
たまにはいいかもって思えるようになったかな。
今泉 影狼:
そんなわけで、とりあえず次のお月見会には
ちゃんと顔を出してみるわ!
藤原 妹紅:
そりゃいいな。
宴会は人数が多ければ多いほど楽しい。
藤原 妹紅:
よかったじゃないか。
ちょっとは満月が好きになれてさ。
今泉 影狼:
ちょっとだけ、だけどね。
……あ、ねえ。妹紅さんは?
藤原 妹紅:
ん、なに?
今泉 影狼:
貴方は、満月好き?
藤原 妹紅:
あー、そうだなあ。私は……。
藤原 妹紅:
…………私は、嫌いかな。