八雲 紫:
それじゃ、さっそく前回のおさらい。
ついに魔理沙たちが、形代の巣を壊したのよね。
八雲 紫:
でも、その矢先、空に黒い球体が現れて、
幻想郷中のユメミタマを吸い込み始めた……。
八雲 紫:
……ところで、瀝青に汚染された正邪を
助けるために、奔走していた菫子のことだけど。
八雲 紫:
そろそろ、何か見つかったんじゃないかしら。
さあ、様子を見てみましょう。
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紅魔館
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鬼人 正邪:
ぜっ、ぜぇっ……。
宇佐見 菫子:
あぁもう。どこに行っても、誰に聞いても、
助ける方法がわからないなんて!
宇佐見 菫子:
あとはもう、ここしか……!
パチュリー・ノーレッジ:
そう、そこの天邪鬼が瀝青に……。
鬼人 正邪:
諸行無常、ゆえに一切皆苦。雑念を捨て去り、
一心に努めれば……、くそっ。また勝手に。
パチュリー・ノーレッジ:
愉快ではあるけれど、ちょっと気味が悪いわね。
いいわ、そいつを助ける方法を教えてあげる。
パチュリー・ノーレッジ:
まず、そもそも瀝青と呼んでいるあれが、
本物のタールではないということは、いい?
宇佐見 菫子:
前に、現実を黒く侵食する
汚染エネルギーだって言ってたよね。
パチュリー・ノーレッジ:
ええ。あれは、外の人間の空想や妄想が
元になって生まれたエネルギーなの。
パチュリー・ノーレッジ:
様々な思いが雑じり合った黒いエネルギー。
そんなものに、身体ごと浸かったりしたら……、
パチュリー・ノーレッジ:
身も心も、魂の芯までも、
きれいに黒に染め上げられてしまうわ。
宇佐見 菫子:
そ、それで……、黒くなっちゃった人を
元に戻すには、どうしたらいいの?
パチュリー・ノーレッジ:
本によれば……、黒に汚染された人に
彩りを取り戻す、とっておきの秘薬があるの。
パチュリー・ノーレッジ:
ただし、作るのはとっても大変。まず材料を
集めなければいけないし、手順も複雑で……。
宇佐見 菫子:
それでも作るよ!
お願い! その秘薬の作り方を教えて!
パチュリー・ノーレッジ:
……いいわ。それじゃ、菫子。まずは、
ここに書いた材料を集めてきてくれる?
宇佐見 菫子:
こうして、混ぜて……っ。
よし、できた!
パチュリー・ノーレッジ:
あとは……。あ、咲夜。いいところに!
パチュリー・ノーレッジ:
20年物くらいの、落ち着いた味のブランデーが
必要なんだけど……。これ、熟成させてくれない?
十六夜 咲夜:
は? 熟成……?
いえ、わかりましたわ。一瞬で終わらせます。
十六夜 咲夜:
……はい、終わりましたよ。
ちゃんと、木樽で熟成させておきましたから。
パチュリー・ノーレッジ:
さすが、咲夜。気が利くわね。
宇佐見 菫子:
つ、ついに……。
宇佐見 菫子:
ついに、できたーっ!
図書館印の特製ブランデー!
宇佐見 菫子:
いや~、飲むの楽しみだな~!
肴は何にしようかな?
宇佐見 菫子:
……って、違うよ! 私が作りたかったのは、
正邪を助ける秘薬なんですけど!?
パチュリー・ノーレッジ:
落ち着いて。
さあ、最後の仕上げといきましょう。
パチュリー・ノーレッジ:
この林檎に、このブランデーを一滴垂らして……
パチュリー・ノーレッジ:
……アルドカローロ。
宇佐見 菫子:
え? パチュリーさん、今なんて……。
宇佐見 菫子:
うわっ!?
なんか、カラフルに光り出しましたけど!?
パチュリー・ノーレッジ:
で、これを、そこの黒いのに押し込めば……。
鬼人 正邪:
ぐ、うぅ……っ!
うああああっ!
宇佐見 菫子:
す、すごい! 身体からユメミタマが出て、
正邪を染めてた瀝青が、すっかり消えちゃった!
パチュリー・ノーレッジ:
ふふ……。これはね、
銀枝の林檎という、特別な林檎なの。
パチュリー・ノーレッジ:
百日以上、毎日世話をしないと枯れてしまう
銀色の木に、月夜の晩にだけ生る真っ赤な林檎……
パチュリー・ノーレッジ:
滅多に手に入らない、本当に貴重なものなのよ。
たまたま、一つ残っててよかったわ。
宇佐見 菫子:
そんな貴重なものを……!
ありがとう、パチュリーさん!
宇佐見 菫子:
よーし!
あとは、このユメミタマを浄化するだけね!