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博麗神社
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博麗 霊夢:
えっ……、紫!?
霧雨 魔理沙:
ってことは……。
この小さい紫、やっぱり贋物だったのかー!?
八雲 紫?:
……ようやく、こちらに姿を現したわね。
ずいぶん、のんびりしていたじゃない。
八雲 紫?:
シャングリ=ラの手で作られた、私の贋物よ。
霧雨 魔理沙:
え、シャングリ=ラ!?
いやでも、どう見たって、こっちのほうが……。
八雲 紫:
私を本物だと思ってくれるのね。
でも、残念……。
八雲 紫?:
私は、贋物の八雲紫。
八雲 紫?:
境界のほつれを作り、贋物異変を起こした犯人よ。
すべては、我がシャングリ=ラのために。
博麗 霊夢:
……なるほど。あんた本当に……。
八雲 紫?:
橋姫、パルスィたちは、かわいそうだったわねぇ。
私に、いいように操られちゃって。
八雲 紫?:
けれど、扱いやすかったんだもの。だって、
シャングリ=ラは幻想郷への妬みに満ちた世界なのだから。
八雲 紫:
嫉妬を力にするパルスィは、
波長が合ってしまったのね……。
八雲 紫?:
さて。こうして幻想郷に立ってみると、
つくづく憎たらしくて仕方がないわね。
八雲 紫?:
忘れ去られたものが集まっているはずなのに、
多くの人に想われている、幻想郷……。
霧雨 魔理沙:
……想われてる? なんだそりゃ。忘れ去られて
隔絶されてる場所を、誰がどうやって想うんだよ。
八雲 紫?:
じゃあ、宇佐見菫子は、
どうやって幻想郷のことを知ったのかしら?
霧雨 魔理沙:
それは……。そういうこともあるだろ?
神隠しだとか、夢がどうのとか……。
八雲 紫?:
そう。つまり隔絶したといっても、
幻想郷は常に、その世界の外側と繋がっている。
八雲 紫?:
ほとんど忘れてしまうけれど、でも、
少なくない人が幻想郷を知っているのよ。
博麗 霊夢:
……そうね。菫子みたいに、ふとした拍子に
神隠しのことを思い出すこともあるし。
八雲 紫?:
あの都市伝説異変が起きてから、幻想郷の様子は、
世界の外側……他の世界に伝わりやすくなったわ。
八雲 紫?:
そして、わかった。幻想郷が発展しているのは、
人々が心の奥底で、幻想を想っているからなのだと。
八雲 紫?:
その想いがエネルギーとなって、幻想郷に流れる。
ああ、その力が、我がシャングリ=ラにあれば!
八雲 紫?:
……でも、手に入れることはできなかった。
博麗 霊夢:
どうしてよ。横取りでもなんでも、
すればよかったじゃない。
八雲 紫?:
もちろん試したわ。でも、そのエネルギーは
そのままでは使えなかったのよ。
八雲 紫?:
だって、あくまでも「幻想郷への」想いだったから。
シャングリ=ラには、なんの影響も与えなかった。
八雲 紫?:
けれど、使えないなら使えるようにすればいい。
そのために……ユメミタマを作ったの。
博麗 霊夢:
ユメミタマを……!?
八雲 紫?:
幻想郷に流れ込む想像の力をユメミタマに変え、
ダンマクカグラで純粋なエネルギーへと変換する。
八雲 紫?:
シャングリ=ラは、八雲紫の贋物を生み出し、
その方法でエネルギーを集めることにしたの。
八雲 紫?:
幻想郷の復興を促しながら、
エネルギーの一部を受け取って、ね……。
八雲 紫:
そうして私を幻想郷から閉め出し……、
自らは本物の八雲紫に成り代わったってわけね。
八雲 紫?:
ええ、邪魔されたら困るから。
おかげで、怪しまれずに協力してもらえたわ。
八雲 紫?:
さあ、すべての準備は整った。
あとは、幻想郷もろとも、世界を滅ぼすだけ。
八雲 紫?:
ただ、その前に……八雲紫。
おまえだけは、私の手で屠ってやる。
八雲 紫?:
唯一の奥の手も使えず、そのみじめな姿のまま
屈辱に震えて消えるがいい!