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冥界
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霧雨 魔理沙:
おお、なんかあったかくなってきた。
白玉楼に、春が集まって来てるんだな。
十六夜 咲夜:
結界から白玉楼へは、そう遠くはなかったわね。
このまま邪魔が入らなければ、すぐに……。
チルノ:
とまれぇーーい、この先へは行かせないぞっ!
霧雨 魔理沙:
なんだ、チルノじゃないか。
そういえば、前の異変の時にもいたっけ。
十六夜 咲夜:
悪いけど、私たち急いでるの。
邪魔をすると、また倒すことになるけど?
チルノ:
何言ってんのかよくわかんないけど、
とにかく、この先へは行かせないから。
チルノ:
あんたたち、幽々子の春集めを
邪魔しに来たんでしょ。そうはさせるかっ!
霧雨 魔理沙:
えっ、お前、春集めを手伝ってるのか?
なんで、また?
チルノ:
幽々子が言ってたんだ。ここに春を集めれば、
幻想郷は雪と氷の世界になるって。
チルノ:
そうなったら、サイコーだし。それに、
春が集まれば、すごい桜が満開になるんだって。
霧雨 魔理沙:
その桜って、西行妖のことだろ?
残念だけど、あの桜は満開にはならないぜ。
霧雨 魔理沙:
前にも幽々子が咲かせようとしていたけど、
何ヶ月掛かっても無理だったみたいだしな。
チルノ:
あれ? でも幽々子は、このままいけば
西行妖は間違いなく満開になるって……。
十六夜 咲夜:
えっ、それって……!
チルノ:
と、いうわけで、あんたらの春もよこせっ!
言うこと聞かないなら、力ずくで貰うから。
チルノ:
う、うぅ、あたいが負けるなんて……。
霧雨 魔理沙:
威勢がいい割には、楽勝だったな。
十六夜 咲夜:
西行妖が、満開になる……?
それじゃ彼女は……。
霧雨 魔理沙:
……ん? 咲夜、どうかしたのか?
十六夜 咲夜:
さっき、気になることがあるって言ったでしょ?
そのことについてなんだけど……
十六夜 咲夜:
以前、パチュリー様から聞いたの。西行妖は、
元々、人間の精気を吸う妖怪桜だったって。
十六夜 咲夜:
それを封印したのが、一人の少女。
彼女は自ら命を絶ち、その亡骸で桜を封じたの。
十六夜 咲夜:
少女は亡霊となって、西行妖は、それから
千年もの間、満開になっていないそうよ……。
霧雨 魔理沙:
ふ~ん。昔々の話ってワケだ。
で、その話の何が気になってるんだ?
十六夜 咲夜:
その、亡霊っていうのが……、
どうやら、幽々子らしいのよ。
十六夜 咲夜:
西行妖が満開になると、封印は解けるわ。
そうすれば、彼女は死から解放される……。
十六夜 咲夜:
人間としても、亡霊としても、
この世から消滅してしまうの。
霧雨 魔理沙:
な、なんだそりゃ!? つまり幽々子は、
西行妖が満開になると消えるっていうのか?
霧雨 魔理沙:
だったらなんで、咲かせようとしてるんだ?
自分が消えるかもしれないんだろ!?
十六夜 咲夜:
それが、幽々子本人は、
そのことを知らないみたいなの。
十六夜 咲夜:
前回の異変の時も、
単なる好奇心で咲かせようとしていたし。
霧雨 魔理沙:
チルノのやつ、間違いなく満開って言ったよな。
そうなったら、幽々子は……。
霧雨 魔理沙:
と、とにかく、先に進もうぜ。
さっさと異変を解決すれば、きっと大丈夫だ。