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人間の里
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十六夜 咲夜:
お砂糖。紅茶。毒蛇の牙に、ガマの黒焼き……。
うん。必要なものは、全部買えたみたいね。
森近 霖之助:
やあ、咲夜。買い出しかい?
十六夜 咲夜:
あら、香霖堂の。ええ、復興が進んだおかげで、
買い物が楽で助かってるわ。でも……、
十六夜 咲夜:
ここ、平和すぎませんか? ユメミタマが現れて、
人間を襲う脅威は増えたはずなのに……。
森近 霖之助:
ああ、それなんだけどさ。実はここ、
最近、ユメミタマがまったく現れないらしいよ。
森近 霖之助:
復興当初は見かけたのに、なんでだろうね。
ちなみに僕は、ユメミタマ失踪事件って呼んでる。
十六夜 咲夜:
……人間の里にだけ、ユメミタマが出ない?
それは、興味深いですね。
十六夜 咲夜:
もしも理由がわかれば、紅魔館からも
ユメミタマを追い払えるかもしれない。……よし。
十六夜 咲夜:
この事件の謎、私が解いてみせましょう。
さあ。さっそく、二人で聞き込みに行きますよ。
森近 霖之助:
……え、僕も?
って、もういないし……、仕方ないなぁ。
里の人間:
あの玉なぁ。憑かれると人が変わっちまうし、
子供たちは怖がるしで、厄介だったんだが……。
里の人間:
いつのまにか、すっかり見なくなったなぁ。
おかげで助かってるけど、理由は知らないねえ。
霧雨 魔理沙:
よう、香霖! 今から蕎麦食べにいくけど、
お前も……ユメミタマ失踪事件? なんだそれ?
上白沢 慧音:
その件については、私も調べているところだ。
見回りを強化しているが、原因は掴めていない。
猫:
にゃーん。
十六夜 咲夜:
にゃーん?
森近 霖之助:
……咲夜さん、もしかして飽きてきてる?
十六夜 咲夜:
一日中聞き込みして、手掛かりはなし……か。
この事件、思ったより単純じゃないのかしら。
森近 霖之助:
それより、ちょっと疲れたな、僕は。
もう遅いし、そろそろ解散にしないかい?
森近 霖之助:
探偵には、頭を休める時間も必要だろう?
彼女の手掛かりは、明日また探せばいいさ。
十六夜 咲夜:
……今、なんて言ったの?
森近 霖之助:
ん? 探偵には、頭を休める時間も……
十六夜 咲夜:
違う。その後よ。
彼女の手掛かり……、「彼女」と言ったの?
十六夜 咲夜:
この事件の真相に、人が関わっていること。
そして、その人物が、女性であること……。
十六夜 咲夜:
どちらも、知っているはずないですよね。
あなたが事件に関与していない限り。
森近 霖之助:
……これは、うっかりしていたかな。
十六夜 咲夜:
消えた……? いえ、隠れたのね?
出てきて、話を聞かせなさい!
森近 霖之助:
この事件の真相、見つけられるなら見つけてごらん。
もっとも、君一人では難しいかもしれないけどね。
十六夜 咲夜:
ええ、見つけてみせるわ。
この二つの月に誓って、必ず……。