十六夜 咲夜:
前回のあらすじ。紅魔館の平和のため、
ユメミタマ失踪事件を追う私、探偵咲夜。
十六夜 咲夜:
しかし、調査初日の終わり。事件への関与を
ほのめかしたのは、助手の霖之助だった。
十六夜 咲夜:
深まる謎。孤独な決意……。
果たして探偵咲夜は、事件を解決できるのか?
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人間の里
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十六夜 咲夜:
……なんて。ミステリー小説なら、
こんなあらすじがつくところね。けど……、
十六夜 咲夜:
このままじゃ打ち切りかしら。今日も
もう日が暮れるのに、なんの進展もないんだもの。
子供:
うわっ! ごめんなさい!
子供:
あれ?おねーさん、もしかして……。
十六夜 咲夜:
こんな遅くにダンマクカグラの練習なんて、
ずいぶん熱心なのね?
十六夜 咲夜:
……それとも、他に理由があるのかしら?
ユメミタマ失踪事件の犯人さん。
???:
ぐっ! なにっ……!?
十六夜 咲夜:
捕まえた。やっぱり、あなただったのね。
上白沢 慧音:
ちっ……。まさか、人間に捕まるとはな。
近頃、不眠で活動していた無理が祟ったか。
十六夜 咲夜:
上白沢慧音……、歴史を食べる能力の持ち主。
あなたはその力で、里の歴史を改ざんしたのね。
十六夜 咲夜:
人間の里には、ユメミタマは出なかった……と。
影響を受けた人には、ユメミタマが見えなくなった。
上白沢 慧音:
その通り。そういえば、お前には一度、
この能力を見せたことがあったか。
十六夜 咲夜:
そうね。でも、まだわからないこともあるの。
ユメミタマは、ただ見えなくなっただけ。
十六夜 咲夜:
その脅威も、浄化する必要があるのも変わらない。
さっきあなたがしていたようにね。なら、動機は?
上白沢 慧音:
それは……。
里の人間が、ユメミタマを恐れていたからだ。
上白沢 慧音:
怯える人間たちを、見ていられなかった。
だから無かったことにした。彼らの幸せのためにな。
十六夜 咲夜:
幸せのため、ねぇ。それ、実現できてるのかしら?
上白沢 慧音:
……なに?
十六夜 咲夜:
私があなたに辿り着けたのは、
里の子供に、こう言われたからよ。
十六夜 咲夜:
慧音先生は、最近すごく疲れてる。
お友達なら注意してあげてって、心配そうにね。
上白沢 慧音:
……里の子が、そんなことを? 人間たちの
前では、疲労は隠していたつもりだったが……。
十六夜 咲夜:
人間はか弱いけれど、決して愚鈍ではないわ。
あなたの犠牲から成る平和を、人は喜ぶのかしら?
上白沢 慧音:
……そうだな。
今回は、どうやら人間に教えられたようだ。
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数日後
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里の人間A:
おーい、ユメミタマが出たぞー!
団扇であおいで、道の隅っこに寄せておきな。
里の人間B:
客の強い姉ちゃんたちに、浄化してもらおうぜ。
慧音先生にばかり、無理はさせられねえからな!
森近 霖之助:
いやあ。この数日で、人は本当にたくましくなった。
これも、君が事件を解決したおかげだね。探偵さん。
十六夜 咲夜:
よく言いますねぇ。
あなた、最初から私を誘導していたのでしょう?
十六夜 咲夜:
彼女の隠ぺい工作を、あなたは知っていた。
察するに、初期には協力していたとか?
森近 霖之助:
ご明察。ユメミタマを移動させるのに、
いい道具はないかって聞かれて、少しだけね。
十六夜 咲夜:
だからこそ、あなたは彼女の無理にも気づいた。
そして、私にあえて事件の存在を教え……、
十六夜 咲夜:
わざとヒントを出すことで、真相に辿り着かせた。
すべては、彼女の孤独な闘いに、終止符を打つために。
十六夜 咲夜:
……どう? 私の推理、合っていたかしら。
森近 霖之助:
ああ。さすが、名探偵にはお見通しだな。
また事件があったら、声をかけるとするよ。
十六夜 咲夜:
うーん。まあ、たまにはいいかしら。
でも、次は裏切りはなしですよ? 助手さん。