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天界
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洩矢 諏訪子:
早苗と入れ替わりで来てみたけど、
あの天人の姿は見当たらないわね。
八坂 神奈子:
叱られる前に地上へ逃げたんじゃない?
今のうちに天界観光としゃれ込みましょ。
洩矢 諏訪子:
賛成! 地上を恐怖のどん底に陥れたあと、
避難できる場所を探しておかないとね。
八坂 神奈子:
諏訪子……。その冗談は怖いからやめてよ。
誰かに聞かれたらどうする?
洩矢 諏訪子:
へーきへーき。
周りに天人は見当たらないし……。
伊吹 萃香:
地上を阿鼻叫喚の地獄絵図に、だって?
なんだい、面白そうじゃないか。
八坂 神奈子:
ああもう。ノってきちゃったじゃない。
しかも、物騒さがアップしてるし。
洩矢 諏訪子:
地底の住人と、こんな所で会うとはね。
貴方も、天界を観光中?
伊吹 萃香:
いや、私はここ住み。
天子に勝って、ここの土地をもらったのさ。
八坂 神奈子:
天人に勝つと土地がもらえる?
それは、いいことを聞いた。
伊吹 萃香:
ただ、ここ最近は天界にいても退屈でさ。
誰かに権利を譲ってもいいかなって……。
洩矢 諏訪子:
はいはーい! 土地の権利、ほしいでーす!
ちなみに一坪いくら? 支払いは現金?
伊吹 萃香:
お金なんて、いらないよ。
私に相撲で勝てばいい。
八坂 神奈子:
へえ……。相撲ねえ。
私も相撲には、一家言あってね……。
伊吹 萃香:
そりゃいい。実は近くに土俵があるんだ。
天人と相撲するのに作った、私のお手製さ。
伊吹 萃香:
勝負はそこでやろう。
なんだったら、二人同時でも構わないよ。
洩矢 諏訪子:
先に私から、やらせてもらうよ。
神奈子、行司はよろしく。
八坂 神奈子:
では、私が……。
見合って見合って……はっけよい!
洩矢 諏訪子:
さすがは鬼! すごいパワーだ!
伊吹 萃香:
へへん。純粋な力なら、神様にも負けないよ。
それっ! 上手投げだっ!
八坂 神奈子:
諏訪子が軽々と投げられた!?
これは、いきなり万事休す……。
洩矢 諏訪子:
へへーん。ぶんなげられても、
地面に潜っちゃえば、尻餅はつかないもんね。
伊吹 萃香:
そうきたかー。でも、あんたみたいに
手強い相手を待ってたんだ!
洩矢 諏訪子:
今度は、こっちから行くよ!
洩矢 諏訪子:
……って、消えた!
伊吹 萃香:
そっちが地面に潜っちゃうなら、
こっちは霧になって消えちゃうよ~ん。
洩矢 諏訪子:
いいねいいね♪
よーし、盛り上がってきたー!
八坂 神奈子:
あれから小一時間……。
全然、勝負がつかないなあ。
八坂 神奈子:
諏訪子、代わって。
私が一撃で終わらせるわ。
洩矢 諏訪子:
今、絶好調なのにー。
代わるからには勝ってよ、神奈子。
伊吹 萃香:
私も、まだピンピンしてるよ。
せっかくだから、小細工なしでやろうか。
洩矢 諏訪子:
じゃ、僭越ながら行司は私が……。
見合って見合って……はっけよい!
洩矢 諏訪子:
あいたたた……。
衝撃で吹っ飛ばされちゃったよ……。
洩矢 諏訪子:
なんだこれ!? 土俵のあった場所が、
クレーターみたいに吹っ飛んでる!?
八坂 神奈子:
土俵が吹き飛んじゃったんじゃ、
勝敗はつけられないね……。残念残念。
伊吹 萃香:
でも、全力でぶつかったらすっきりしたよ。
気分転換に付き合ってもらっちゃったね。
伊吹 萃香:
きっと、天界の生活に慣れすぎちゃって、
気分がモヤモヤしてたんだ。悪かったねえ。
洩矢 諏訪子:
いいよいいよ。こっちも面白かったし。
心が鈍ったときは、さっさと発散しなきゃ。
伊吹 萃香:
肝に銘じておくよ。あ、そうそう!
騒がしくなる前に、逃げた方がいい。
八坂 神奈子:
なら、お言葉に甘えて。
天界の様子は、改めて見に来ましょう。
偉い天人:
鬼といえども、自分で壊したものは
責任もって修理してもらいますからね。
伊吹 萃香:
はーい! 大工仕事なら鬼の得意分野さ。
前より立派な土俵にしーちゃお♪