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天界
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比那名居 天子:
さーて。
そろそろ、ほとぼりも冷めて……。
偉い天人:
こらーーーーーーっ!!
比那名居 天子:
うわぁ。もう見つかっちゃったか。
地上に長居して、勘が鈍ったかな?
偉い天人:
何を他人事みたいな顔をしているのです。
宴会用の桃100個、盗んだのは貴方でしょう。
比那名居 天子:
盗んだんじゃないわよ。
地上人を天人にするのに必要だったの。
偉い天人:
結局、最後は持ち逃げされたじゃないですか。
それから、あの鬼。またやらかしましたよ!
比那名居 天子:
どうせ、暴れて物を壊したんでしょ?
自力で修理するから、いいじゃないの。
偉い天人:
いいものですか! 勝手に天界の土地を賭けて、
地上の神と相撲を取ったのですよ?
比那名居 天子:
はぁーっ!?
私が貸した土地を、勝手に賭けたって!?
偉い天人:
いえ。そもそも、あの土地は
貴方のものだったわけでは……。
比那名居 天子:
あいつ、今日こそ天界から追い出してやる!
伊吹 萃香:
うむむ、不思議だ。私が修理した以外にも、
勝手に色々と増えてる気がする……。
比那名居 天子:
ちょっとーっ! なーに勝手に
賭けなんかやっちゃってんのー!
比那名居 天子:
いっしょに相撲を取った相手ってのは?
そいつらも同罪。天の網からは逃げられないよ!
伊吹 萃香:
守矢神社のやつらだよ。
でも、あいつらは悪くないんだ。
比那名居 天子:
巫女の桃泥棒に続いて、あいつらまで……。
あとで絶対にシバいてやる。
伊吹 萃香:
今回は私が悪かったんだ。天界が退屈過ぎて、
暇つぶしにちょっとね。許してやってくれ。
比那名居 天子:
いーや、許さないね! この際だから、
あんたには天界から出て行ってもらう。
伊吹 萃香:
んなっ! ちゃんと謝っただろ?
そんな器の小さいこと言うなよー。
比那名居 天子:
誰の器が小さいって?
私を他の天人たちと、いっしょにしないで!
伊吹 萃香:
あーあー、わかったよ。出てけばいいんだろ?
その代わり、ひとつ条件がある。
伊吹 萃香:
『天界の酒を超える酒』用意してもらおうか。
ここの上品な酒には、飽き飽きしてたんだ。
比那名居 天子:
はぁ? 非があるのはあんたでしょ?
どうして、私が要求を呑まなきゃいけないの?
伊吹 萃香:
おやおや~? 他の天人と器の違うあんたが、
酒のひとつも用意できないのかい?
比那名居 天子:
へえ……私を挑発するつもり?
いいよ。乗ってやろうじゃないか。
比那名居 天子:
『天界の酒を超える酒』これを用意できたら、
あんたはここを出て行く。忘れないでよ!
伊吹 萃香:
うわっ。天界の縁から飛び降りちゃったよ。
伊吹 萃香:
ま、あの偉そうな態度にはうんざりだったし、
これぐらい要求してもへーきでしょ。
東風谷 早苗:
ふわぁ~。今日も掃除くらいしか、
することないですね……。
東風谷 早苗:
退治していい妖怪でも現れ……きゃっ!?
東風谷 早苗:
け、境内の地面に人型の穴が……。
そんな昔のマンガみたいなこと……。
比那名居 天子:
山の巫女。私を穴から引っ張り出しなさい。
あと、お前の保護者たちも呼んできなさい。
東風谷 早苗:
天人様!? あ、あはは。わかりました。
……また面倒なことになりそう。
比那名居 天子:
というわけで、お前たちは私に借りがある。
お酒を探すの、手伝ってもらうぞ。
八坂 神奈子:
借り……あるかしら?
洩矢 諏訪子:
ないんじゃない?
比那名居 天子:
あるんだよっ!! 桃を100個も食べて、
土地を賭けて、鬼と相撲しただろっ!?
東風谷 早苗:
修行を命じたのは天人様ですし、それに桃は
持ち帰ったあと、あちこちに配っちゃって……。
東風谷 早苗:
お、お手伝いさせていただきますとも……。
たしかに桃100個は、もらいすぎでしたしね。
洩矢 諏訪子:
鬼の提案に乗っかったのは事実だし、
ここは潔く、手伝わせてもらおっか。
八坂 神奈子:
ああ、そうだね。私たちが手を貸さないと、
もっとややこしいことになりそうだし……。
比那名居 天子:
そうと決まったら、お酒探しを始めるぞ。
お前たち、声を合わせて。えいえいおー!
三人:
おー……。