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仙界 華扇の道場
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茨木 華扇:
さて、と。今日は動物たちに稽古をつけて……、
時間が余ったら、神社に顔でも出そうかしら。
茨木 華扇:
あら、霧雨が降ってきたわね。
……って、ええっ!?
茨木 華扇:
赤い雲? なんで、こんなものが私の仙界に……。
これは、ただごとじゃないわね。
茨木 華扇:
赤い雲がかかっているのは、山の一部と仙界のみ。
問題は、霧雨に混じっている妖力ね。
茨木 華扇:
このままだと、動植物に異常が起こるかも。
早めに片付けたいけど……。
博麗 霊夢:
もー、なによこの雨。まどろっこしいわね!
どうせ降るなら、もっとザーザー降りなさいよ!
高麗野 あうん:
土砂崩れが起こるよりは、ましかも。
でも、この湿気の中、山登りはちょっと……。
紅 美鈴:
で、本当にこっちにあるの?
仙界の入り口ってのは。
博麗 霊夢:
いや、私も行き方は知らないんだけど。
たしか、この辺だったと思うんだけどなー。
茨木 華扇:
ちょっと、そこ! 何をしてるの!
茨木 華扇:
この霧雨の中、山を登ってくるなんて。
まさか、貴方たちがこの異変の犯人かしら?
博麗 霊夢:
わっ、ちょうどよかった~! 今ね、
この雲を消し去るために仙界に向かってたのよ!
博麗 霊夢:
いったん雨宿りもしたいことだし、
早く案内してちょうだい!
茨木 華扇:
は、はあ。本当かしら……?
まあいいわ、ついてきて。
高麗野 あうん:
わぁー、ここが仙界かぁ!
赤い雲のせいで、景色はイマイチだけど。
茨木 華扇:
びちょびちょのところ悪いけど、
さっさと状況を説明してくれる?
博麗 霊夢:
ま、まあまあ。まずは雲をなんとかするわ。
いま用意するから、ちょっと待ってて……。
茨木 華扇:
その歯切れの悪さ……、やっぱり原因は貴方ね?
洗いざらい話しなさい!
博麗 霊夢:
うぐ、わかったわよ……。そもそもの発端は、
最近、日照りが続いていたことなんだけどね。
博麗 霊夢:
それを解消するのにさ、以前、パチュリーが
魔法で雨雲を作っていたのを思い出したのよ。
博麗 霊夢:
で、他の雲と見分けがつくよう赤色の雲を
作ってみてもらったんだけど……。
紅 美鈴:
パチュリー様、直後にダウンしちゃいまして。
制御を失った雨雲を、我々で払っているんです。
博麗 霊夢:
一応、ほとんどは消したんだけど、
思ったより雲が巨大化しててね……。
高麗野 あうん:
消しきれなかった部分が、妖力を含みながら
山へ、そして仙界へと流れてしまったんです。
茨木 華扇:
はぁー……、事情はわかりました。
それで、どうやってあの雲を消すつもり?
博麗 霊夢:
今から、やってみせるわよ。
よーし、準備できた!
茨木 華扇:
お札? そんなものをまとって、
どうしようっていうの?
博麗 霊夢:
まあ、見てなさい。このお札には
緋想の剣のパワーが込められているんだから。
博麗 霊夢:
緋想の剣は、人の気質を開放する。
私の気質はズバリ……、快晴!!
茨木 華扇:
すごい、雲が消えていく!
これが気質の力か……!
博麗 霊夢:
ふー、なんとかなったわね。
あの天人をおだてまくった甲斐があったわ。
茨木 華扇:
きちんと解決策を用意してくるとは、お見事。
……でも、それとこれとは話が別よ。
茨木 華扇:
人々のために日照りを解消するという心意気は
いいですが、もっと後先を考えて行動を……。
博麗 霊夢:
あーーっと! そういえば仙界の外も、ちゃんと
晴れてるか心配ね! あうん、美鈴、行くわよ!
高麗野 あうん:
えー! ちょっとゆっくりしたかったけど……。
あ、待ってくださーい!
紅 美鈴:
やれやれ……。騒がしくて、すみませんね。
いや、貴方は慣れてるか。では、失礼します。
茨木 華扇:
もう、困ったものねぇ。
……あら?
茨木 華扇:
今、向こうのほうに
赤いものが流れていったような……。
茨木 華扇:
まったく、詰めが甘いんだから。
ま、あの程度なら、すぐに消えるでしょう。