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華扇の道場
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茨木 華扇:
あら、竿打。どうしたの、そんな困った顔して。
んー、なになに……。
茨木 華扇:
えっ!? 霊夢たちが、誰が仙界に
一番乗りできるかのレースをしている!?
茨木 華扇:
まあ、方術を突破するのは無理だろうし……。
放っておけば、そのうち諦めて帰るでしょう。
茨木 華扇:
……はあ!?
数時間経ったのに、まだやってるの!?
茨木 華扇:
仕方ない……。遭難されても困るし、
案内役を派遣しましょう。
博麗 霊夢:
はぁ、はぁ……。仙界の入り口とやらは、
ほんっっとーーーに見つからないわね……。
博麗 霊夢:
ああ、お腹すいた……。
あうんと咲夜は、もうたどり着いたのかしら。
高麗野 あうん:
うーん。この間はここで仙人さんに会って、
そこからすぐお屋敷に着いたのに。おっかしいなー。
高麗野 あうん:
もう疲れてきちゃった。
帰ってもいいかしら……あら?
仔犬:
ワンワン!
高麗野 あうん:
あら~~、かわいいワンちゃん!
こんな所でどうしたの? 貴方も迷子?
仔犬:
ワン、ワオーン!
高麗野 あうん:
あ、山奥は危険よ! もう!
ちょっと待って~~~!!
十六夜 咲夜:
まさか、こんなに見つからないとは……
さすがに想定外ね。
十六夜 咲夜:
念のため、サンドイッチを持参してよかったわ。
さて、と。腹ごなしも済んだし、行きますか。
十六夜 咲夜:
ん? あそこで光っているのは、イタチ?
いや、ヤマネ? まさか、新種の動物かしら。
十六夜 咲夜:
ちょっと失礼。……痛っ!
電気をまとってるなんて、珍しいじゃない!
十六夜 咲夜:
この際、仙界は諦めて……、
お嬢様への手土産に、お前だけでも連れて帰る!
十六夜 咲夜:
やーっと捕まえた! まったく、
厄介な電気だったわ! ……あれ、ここは?
高麗野 あうん:
あ、咲夜さーん! 咲夜さんも着いたんですね!
ここが、例の仙界ですよ!
十六夜 咲夜:
いつの間に……。
確かに仙界らしい穏やかな雰囲気ね。霊夢は?
高麗野 あうん:
霊夢さんは、まだみたい。
えへへ、レースは私が一番乗りですね~♪
博麗 霊夢:
なんで山奥に、虎がいるのよ~~~!!
博麗 霊夢:
ぎゃっ! こっちには蛇!?
ま、待って待って、追いかけてくるな~~っ!!
博麗 霊夢:
はっ、はぁ……。
もうダメ……、ぐぅ。
高麗野 あうん:
わっ! 霊夢さん、大丈夫ですか!?
霊夢さーん!
茨木 華扇:
やっと着いたわね。皆さん、私の道場へようこそ。
……あれ? 霊夢は?
十六夜 咲夜:
ああ、貴方がここの仙人だったのね。
霊夢は、その……貴方の足の下に。
茨木 華扇:
あわわ……。
高麗野 あうん:
なるほど~。この子たちは、
ここのペットだったんですね。
十六夜 咲夜:
気付かない内に、案内されていたとはね。
残念だけど、お嬢様への手土産は諦めましょう。
博麗 霊夢:
なんで私に対してだけ、やたら手荒いのよ……。
茨木 華扇:
貴方が小動物を追いかけるとは思えなくて。
ところで、なんでレースを?
霊夢&咲夜:
なんでだっけ?
高麗野 あうん:
お二人が喧嘩したからですよー!
まず、咲夜さんが神社に訪ねてきて……。
博麗 霊夢:
はあ? 仙界へ行きたいですって?
十六夜 咲夜:
ええ。せっかくお嬢様からいただいた休暇だし、
行ったことのない場所に行きたいと思って。
十六夜 咲夜:
先日、うちの門番と仙界に行ったそうじゃない。
私のことも、連れてってくれないかしら?
博麗 霊夢:
んなこと言われても……。
行き方なんて、知らないわよ。
十六夜 咲夜:
はあ? 貴方、何度も行ってるんでしょ。
それなのに、道案内もできないわけ?
博麗 霊夢:
仙人の術で、入り口が隠されてるのよ!
何よ、あんたになら見つけられるって言うの?
十六夜 咲夜:
まあ、貴方よりは優秀ですからね。
サクッと見つけてみせますわ。
博麗 霊夢:
フン! そこまで言うなら、
どっちが先に見つけられるか、勝負よ!
博麗 霊夢:
あうん、あんたも参加しなさい!
この間いっしょに行ったし、行けるわよね!
高麗野 あうん:
ええ~! なんで私まで~~~!?
茨木 華扇:
いつも通りのしょうもない理由で、
逆に安心したわ……。
十六夜 咲夜:
そんなことより。ねえ、ここ道場なんでしょう?
せっかくなら、修行させてもらえないかしら。
高麗野 あうん:
わ、いいですね~!
私も仙人の修行、体験してみたいです!
博麗 霊夢:
ゲッ。あんたたち、正気?
私は絶対にごめん……。
茨木 華扇:
あら、いい心掛けじゃない!
もちろん大歓迎よ! 霊夢、貴方もね。
博麗 霊夢:
うげぇ~~!
動物園修行は、もうこりごりよぉ……!