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命蓮寺
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依神 女苑:
だーかーらーーー! 寅の日にお金使ったのに、
なんで戻ってこないのって、聞いてんの!
聖 白蓮:
確かに寅の日にはそういう逸話もありますが……。
一日の信心で、そんな虫のいい話あるとでも?
依神 紫苑:
女苑、だから言ったじゃん……。
依神 女苑:
何よ、姉さんも満喫してたでしょ!
もう、なんなのよーーー!!
聖 白蓮:
まあまあ、そう怒らず。……ああ、そういえば
今日は「人助けの日」らしいですよ。
依神 女苑:
ハァ? 人助けの日ぃ?
聖 白蓮:
信仰は一日にしてならず。今日人助けをすれば、
寅の日の分も、いつか返ってくるかもしれません。
依神 女苑:
人助け、ね……。はっ。なーによ、それ!
行くわよ、姉さん!
依神 紫苑:
え? 行くってどこへ……。
あっ女苑、待って~~~!
依神 女苑:
まったく、やんなっちゃう!
人助けなんて、最凶最悪のガラじゃないっての。
依神 紫苑:
あれ? なーんだ、
てっきり人助けのために走り出したのかと。
依神 女苑:
あたしがそんなことすると思う? 大体、
そんな都合よく困ってる人が……あいたっ!
茶屋の女の子:
きゃっ! ごめんなさい!
急いでたら、よそ見してしまって……。
依神 紫苑:
今のは女苑もよそ見してたから、お互い様よ。
……その手に持ってるのは、お団子?
茶屋の女の子:
そうです。お団子の出前をしているんですよ!
大盛況で人手が足りなくて……あー大変!
依神 女苑:
へ、へえ~……ゴホン。
手伝いましょうか? それ。
依神 紫苑:
えっ、女苑!?
茶屋の女の子:
へ、いいんですか!? すごく助かります~!
依神 女苑:
ええ、まあ、暇だったし? 手伝ってあげる。
……貧乏神はついてきちゃダメよ。
依神 紫苑:
ええー! 女苑、一人で行っちゃうなんて……。
ど、どうしよう……。
依神 紫苑:
あっ! あそこにいるの、博麗神社の巫女だわ。
……ダメもとで、声かけてみよう。
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その夜 命蓮寺
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依神 女苑:
それでその茶屋を手伝ったら、見てよ、このバッグ!
あたしの好きなお店のヤツ、貰っちゃったの。
依神 紫苑:
私も神社の手伝いをしたらね、お腹いっぱい
ご飯食べさせてもらったの! 久々の白米よ!
依神 女苑:
あー、いい日だった! 最初は疑ってたけど、
人助けの日って本当にあるのね!
聖 白蓮:
……いえ、残念ながら、
暦上にそんな日はありません。
依神 女苑:
はぁ!?
だって、あんた、今朝……!
聖 白蓮:
これは、今朝読んでいた天狗の新聞です。
この記事の最後を見てください。
依神 女苑:
えーっと、なになに……。「これを読んだ貴方も、
今日は人助けをしてみてはどうだろう」……。
聖 白蓮:
ええ。そちらを引用しちゃいました。
依神 紫苑:
こ、こんなふざけた記事を……?
依神 女苑:
どういうことよ! つまり、
人助けの日はデタラメってわけ?
聖 白蓮:
いえいえ、決してそういうわけではなく。
ええとですね。
聖 白蓮:
仏教には、日々是好日という教えがあります。
かなり噛み砕いて説明しますと……。
聖 白蓮:
なんでもない日でも、いい日となるよう努める。
今日がいい日となったのは、その結果である。
聖 白蓮:
つまり、本日がいい日となり得たのは
お二人の努力の成果、ということですよ。
依神 女苑:
ハン、なるほどね。よ~~っく理解したわ……。
ん? ってことは、つまり……
依神 女苑:
寅の日に使ったお金は、やっぱり
返ってこないってことじゃないの~~~~!!!
聖 白蓮:
おや、もう丑の刻ですか……。
台帳の整理は、一旦切り上げますか。
聖 白蓮:
復興してからというもの、毎日大忙しで……
さすがに疲労が溜まってきましたね。
聖 白蓮:
ですが、命蓮寺にとって、今が正念場。
次のイベントは、何にしようかしら……。