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マヨヒガ
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橙:
こらっ! ちゃんと言うことを聞きなさい!
あー、だめだめ! そっちに行かないで!
八雲 藍:
あらあら。
相変わらず、猫たちに手を焼いてるみたいね。
マヨヒガの猫:
にゃーん!
橙:
ほら、あんたもこっちに……って、んん?
そのくわえてる人形、もしかして……!
橙:
わーっ、やっぱりそうだ!
見てください、藍様。この人形、覚えてますか?
八雲 藍:
あら、懐かしいわねぇ。
ずいぶん前に、私がプレゼントしたものだわ。
橙:
よくこれで遊んだなぁ……。
失くしたと思ってたけど、ちゃんとあったんだ。
橙:
そうだ! 探せば他のおもちゃも見つかるかも!
さっそく探してみよう~っと。
八雲 藍:
あんなに嬉しそうにして……。
ふふ。私も手伝ってあげましょうか。
橙:
わっ、懐かしい~!
この猫じゃらしで、藍様に遊んでもらったなぁ。
橙:
あっ、このネズミのおもちゃ!
よく他の猫と取り合いになったっけ……。
橙:
あれ~、おかしいなぁ。赤い毬が見当たらない。
たしかこの引き出しにしまったはずだけど……。
八雲 藍:
赤い毬……って、猫の絵の描かれたあの赤い毬?
橙は、本当によくあれで遊んでいたね。
橙:
そうです、その毬です! ひょっとして、
別の場所にしまっちゃったのかも……。
橙:
ここにもない……記憶違いかな?
あそこじゃなきゃ、ここしかないと思ったけど。
橙:
でも、マヨヒガのどこかには絶対あるはずだよね。
猫たちの手も借りて探してみよう!
橙:
ここか! こっちか!? この畳の下か!
もー、全然見つかんないよー!
八雲 藍:
ちょっと橙、いくらなんでもやり過ぎじゃない?
そんな畳までひっくり返さなくても……。
橙:
だって見つからないと悔しいもん!
あの毬、一番のお気に入りだったし……!
八雲 藍:
毎日あれで遊んでいたものね。あの時は
たしか、茶色いトラ模様の猫といっしょに……。
八雲 藍:
……あ、もしかして。
橙:
こうなったら、とことん探してやる!
マヨヒガの隅々までね! お前たちも頑張って!
マヨヒガの猫:
にゃー!!
マヨヒガの猫:
にゃーにゃー。
橙:
ちょっとちょっと、何遊んでんの?
さっき頑張ろうって言ったじゃん!
マヨヒガの猫:
にゃにゃ、にゃー……。
橙:
え? 探すのは飽きた? どこにもない?
諦めないでよ! こうなったら私だけで……、
八雲 藍:
橙、ちょっとこっちへ来なさい。
橙:
えっ? わ、わかりました。
八雲 藍:
ここよ。橙、あの木の上を見てみなさい。
橙:
木の上……って、あっ! 赤い毬!
橙:
どうしてあんな所にあるんだろ?
取りにいってきます!
橙:
ホントに私の毬だー!
見つかってよかった~……、うん?
子猫:
みゃー。
橙:
なに? この毬がほしいの?
悪いけど、これは私のだよ。
茶トラ猫:
にゃー……。
橙:
今度は親猫~? ダメダメ、あげないよ。
……って。あ、あんたは……!
八雲 藍:
どう、橙。毬は見つかった?
橙:
はい! しかも、懐かしいやつと再会しました!
もしや藍様は、それを知ってて……?
八雲 藍:
さっき、あの茶トラ猫のことを思い出してね。
お前と一緒に、あの毬でよく遊んでいたから。
八雲 藍:
あの子、この木で寝るのが好きだったでしょう。
だから、もしかして……ってね。
橙:
さっすが藍様! 最近見かけてなかったから
心配してたけど、元気そうでよかったです。
橙:
しかも、家族ができててびっくり!
あの毬、子猫のおもちゃになってたんですよ。
八雲 藍:
そう。でも、取り返してこなかったのね。
よかったの?
橙:
いいんです。
大切にしてくれてるみたいだったし。
橙:
それに、遊びたくなったら
ここに来ればいいだけだからね!
八雲 藍:
ふふ、そうね。……それじゃ、
もう毬のプレゼントは必要ない?
橙:
ええっ、そんなあ!
それとこれとは別ですよ~!