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マヨヒガ
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藤原 妹紅:
慧音はこっちに来たはずだけど……ん?
マヨヒガの猫:
みゃーお。
藤原 妹紅:
猫? ……うわっ、猫だらけじゃないか!?
慧音は、いったいなんでこんな所に……?
上白沢 慧音:
あら、妹紅。貴方も来ていたのですね。
藤原 妹紅:
なるほど。慧音は猫たちと遊ぶために、
マヨヒガへ来ていたのか。
上白沢 慧音:
ええ。ちょっとした縁で。
そういう妹紅は、なぜここへ?
藤原 妹紅:
慧音が山の方へ向かったからさ。
気になって後を追ったんだよ。
橙:
今日のさんぽも終了~って、また誰か来てる!?
しかも二人も!
藤原 妹紅:
おお、化け猫。ちょっと邪魔してるぞ。
上白沢 慧音:
すまないな。まあ、賑やかな方が猫たちも……
ん? なんだろう、この音。
上白沢 慧音:
う、うわ!?
あっちの建物が、急に壊れた!?
藤原 妹紅:
屋根の方から派手に崩れてるな……。
どうやら、中の柱が折れたみたいだ。
橙:
ああー、ついに崩れたか……。
まあ、ずいぶん古い家だったからね。
橙:
この間、畳を返したり、屋根裏へ大勢で入ったり
色々してたから、近々こうなるとは思ってたよ。
上白沢 慧音:
い、いいのか? お前たちの家だろ?
というか、もし猫が中にいたら……!
橙:
大丈夫だって。危ないのは、みんなわかってたし。
家が崩れるのだって、これが初めてじゃないから。
藤原 妹紅:
そういえば、ここは元々廃村だったか。
通りで、どの家も古いわけだ。
上白沢 慧音:
でも、このまますべての家が壊れたら、
お前たちだって困るだろう?
上白沢 慧音:
そうだ。せっかくだし、古い家を建て直そう。
妹紅、手伝ってくれますよね?
藤原 妹紅:
はあ? なんで私が……。
建て直しなんて、ここの猫たちの問題だろう?
上白沢 慧音:
いいですか、妹紅。猫たちの一生は、
妖怪よりも普通の人間よりも、ずっと短いんです。
上白沢 慧音:
せめて、その短い間くらい、
快適に暮らしてほしいじゃないですか。ね?
藤原 妹紅:
……わかったわかった、手伝うよ。
それじゃ、まずは木材を運ぶか。
橙:
ちょ、ちょっと! なに勝手に話を進めて……、
上白沢 慧音:
橙。お前は、他の猫たちがケガをしないよう
見張りを頼んだぞ。
橙:
ええー! ほんとにやる気なのーー!?
上白沢 慧音:
ここの壁を補強してっと……。
妹紅、屋根の方は大丈夫ですか?
藤原 妹紅:
結構穴が開いてるけど、塞げないこともないな。
何枚か板を貼っておくよ。
橙:
ほらほら、お前たち。あっちに行っちゃダメだよ。
こわーーい先生に叱られちゃうからね。
上白沢 慧音:
ふぅー。あとは、床板の修繕だけですね。
本当にありがとうございます、妹紅。
藤原 妹紅:
満足そうで何よりだ。
それにしても、想像以上に綺麗になってきたな。
上白沢 慧音:
ここに机やイスを置けば、子供たちを連れて来て
出張寺子屋もできそうです。
橙:
それはダメ。
これ以上、人間を連れて来ないでよね。
橙:
ここは猫の楽園なの。人間たちが
気安く入っていい場所じゃないんだから!
上白沢 慧音:
そうか、いい案だと思ったんだが……。
藤原 妹紅:
ま、仕方ないだろう。慧音の住んでる里だって、
人間たちの楽園みたいなもんだ。
藤原 妹紅:
それぞれが生きていくのに、最適な場所がある。
異端となる存在は、そこへ入るべきじゃないさ。
橙:
ていうか、マヨヒガは迷い込む所だからね。
来ようと思って来ないでほしい!
藤原 妹紅:
そうか。それじゃあ今度は
迷い込んだつもりで来るとするよ。
橙:
そうじゃなくて! 来るなって言ってるのー!