voice: 10103140010 ここな 静香ちゃん、来たよ。
voice: 10103140020 静香 ごめんね、急に呼び出して。
voice: 10103140030 ここな それはいいんだけど……どうして屋上なの? 話をするなら、お部屋でも……。
voice: 10103140040 静香 ふたりっきりで話したかったんだ。
voice: 10103140050 静香 私とここなにとって、大切なことだから。
voice: 10103140060 ここな 大切な……?
voice: 10103140070 voice: 10103140071 静香 ここなの役作りが上手くいかない理由……。 私のせいなんじゃない?
voice: 10103140080 voice: 10103140081 ここな え。……そ、そんなことないよ。 ただ、私が役を掴めてないだけで……。
voice: 10103140090 静香 私……ひとりの役者として扱われるようになって、 自分のためにも時間を使うようになった。
voice: 10103140100 ここな それは当然だよ! 静香ちゃんだって、主役に選ばれたんだから。
voice: 10103140110 静香 でも、その分ここなと話す時間が減ったよね。
voice: 10103140120 静香 『竹取物語』のときも『アラビアンナイト』のときも……、 ここなと私で相談して、役作りを進めてきたのに。
voice: 10103140130 voice: 10103140131 静香 それが私たちのやり方で、ここなのセンスの使い方。 なのに、私が歪めてしまった。
voice: 10103140140 ここな えっ……?
voice: 10103140150 静香 私は、ここなのセンスなんだから……。 ここなの足を引っ張るのは間違ってる。
voice: 10103140160 ここな そんなこと……。
voice: 10103140170 静香 私は、私である以前に『ここなのセンス』なんだって、 ……忘れちゃってたんだ。
voice: 10103140180 静香 ごめん、ここな。 こんなの、センス失格だよね。
voice: 10103140190 ここな 違うよ……静香ちゃん、謝らないで。
voice: 10103140200 静香 ううん。私のせいだよ。あの新幹線の中で、 ここなを誰よりも最高の役者にするって誓ったのに。
voice: 10103140210 ここな …………。
voice: 10103140220 静香 だから、私はここなを支えないと。
voice: 10103140230 ここな やめてよ……! 一緒に舞台に立とうって約束したのに……。
voice: 10103140240 静香 …………。
voice: 10103140250 ここな 静香ちゃん、こんなのおかしいよ……!
voice: 10103140260 静香 ううん、おかしくない。
voice: 10103140270 静香 本当は最初から、舞台に憧れてしまったあの時から気づいてたんだ。 私が役者になれたとしたら、ここなとの関係が壊れること。
voice: 10103140280 voice: 10103140281 静香 なのに、私は一緒の舞台に立とうとした……! そのくらい、光溢れる舞台の上は魅力的だった。
voice: 10103140290 voice: 10103140291 静香 でも私は、ここなにこんな風になってほしかったんじゃない! ……私が、約束なんてしなかったら。
voice: 10103140300 静香 私たちは……もともと二人で一人だったのに。
voice: 10103140310 ここな やめて……。
voice: 10103140320 静香 今の私は、ここなを困らせてる。 そんなにふらふらで、目にくまも出来て……今にも倒れそうで……。
voice: 10103140330 静香 ここなのそんな姿、私がもう見たくないの。
voice: 10103140340 静香 だから私はまた……ここなのセンスに戻る。
voice: 10103140350 ここな ダメだよ、静香ちゃん……諦めちゃ……!
voice: 10103140360 静香 諦めるわけじゃない。 それが一番、私たちにとって幸せな姿だと思うから。
voice: 10103140370 静香 一緒に舞台に立とうって言ってくれて、 背中を押してくれて、嬉しかった。