voice: 10301040010 リリヤ 『ああ、なんて素敵なドレス。  私もお城で開かれる舞踏会へ行けるのね』

voice: 10301040020 『たーだーし。12時の鐘が鳴るまでに帰るんだ。  魔法使いとの約束じゃぞ? ふぉっふぉ』

voice: 10301040030 演出家 うむ。改善点はあるがよしとする。次のシーン行くぞ。

voice: 10301040040 ラモーナ ……あのふたり、よくできているな。さすがだ。

voice: 10301040050 倫子 どう、ついていけてる? 途中参加はやっぱり大変でしょ。

voice: 10301040060 ラモーナ まったくだ。スピード感に面食らっている。 まさか来日2日目に役をもらって稽古とは……。

voice: 10301040070 倫子 銀河座は実力主義だからね。 私もスカウトの翌日には舞台に立ってたもの。

voice: 10301040080 ラモーナ これで横の繋がりが希薄でさえなければ すばらしい劇団なんだがな……。

voice: 10301040090 演出家 『次、ガラスの靴の持ち主を見つけるシーン。  シンデレラ、王子、姉! それと城の兵士ラモーナ!』

voice: 10301040100 一同 はい!

voice: 10301040110 お前に実力の違いを分からせてやる。 銀河座の洗礼というやつだ。

voice: 10301040120 ラモーナ ああ、期待している。 よろしく頼むぞ、リリヤ、雪、緋花里。

voice: 10301040130 緋花里 ……美しい。いや、違う。もっと感情をこめる。 こめるって何を? 王子は何に感動してる……。

voice: 10301040140 ラモーナ 緋花里?

voice: 10301040150 演出家 台詞は城の兵士から! 始め!

voice: 10301040160 ラモーナ 『……こちらは、唯一の証拠であるガラスの靴です。  あなたが運命の人ならばピッタリ合うはず!』

voice: 10301040170 voice: 10301040171 『オーホッホッホ! ワタクシの落とし物ですわ!  いま証明して差し上げますわね! ぐぬっ、ぐぬぬ!』

voice: 10301040180 voice: 10301040181 『ほ、ほら。午後は足が大きくなるものですから。  オホホ、オホ……! んぎぃ~っ!!!』

voice: 10301040190 ラモーナ 『失格! では次はそちらのお掃除中のあなたです!』

voice: 10301040200 『はあ? この子が運命の相手なはずありませんわ!  試すだけムダよ、掃除に戻りなさいシンデレラ』

voice: 10301040210 リリヤ 『あの、ピッタリ合いました』

voice: 10301040220 緋花里 『美しい!』

voice: 10301040230 演出家 ダメだダメだ! もっと感情こめられるだろう! もう1回!

voice: 10301040240 緋花里 『うつくしいーッ!』

voice: 10301040250 演出家 全ッ然、伝わってこねえんだよ王子の感動が! 周りがお膳立てしてその程度か!? もう一度!

voice: 10301040260 倫子 あー、捕まっちゃったね。与那国さん。 こうなると長いんだよ。

voice: 10301040270 ラモーナ 演出意図は分かる。ここは客の笑いを取るシーンだ。 コメディ調に誇張した芝居でなければ意味がない。

voice: 10301040280 ラモーナ だが……。

voice: 10301040290 緋花里 『あなたこそ、私の運命の人!』

voice: 10301040300 演出家 もっと込められるだろう! 腹から声出せ!

voice: 10301040310 ラモーナ 緋花里は疲れが出ているかもしれない。 ……見てみるか。

voice: 10301040320 ラモーナ (――私にはセンスがある。  舞台上で弱っているモノが視えるセンスだ)

voice: 10301040330 ラモーナ (銀河座の一同は、大事なチームメイト。  もし弱ったモノがあるなら守ってみせる)

voice: 10301040340 ラモーナ (発動させる――!)

voice: 10301040350 リリヤ 『覚えておいでなのですか、私のことを』

voice: 10301040360 緋花里 『貴女を想わなかった日はありません。  どうか、お名前をお聞かせ願いますか』

voice: 10301040370 リリヤ 『ですが……私はあなたにふさわしくありません。  灰をかぶってやせ細った、弱々しいシンデレラです』

voice: 10301040380 緋花里 『どうか、私のもとへ来てください。  幸せにすると誓います』

voice: 10301040390 ラモーナ (全員、異常なし……)

voice: 10301040400 演出家 ……時間だな。今日はここまでとする。解散。

voice: 10301040410 倫子 ホントみんな体力あるよね。 丸一日休憩なしで合わせきるなんて。

voice: 10301040420 ラモーナ ああ。誰ひとり疲れている様子はなかった……。

voice: 10301040430 ラモーナ (役者はもちろん演出家、はては道具類も万全。  それが、私のセンスが導き出した答えだった)

voice: 10301040440 ラモーナ 私のセンスがなんの役にも立たないとはな。 役者の質がケタ違い、恐ろしい劇団だ。

voice: 10301040450 倫子 そういうラモーナもほめられてたじゃない。 2本目を失敗した私とは大違いだね。

voice: 10301040460 ラモーナ 2本目?

voice: 10301040470 倫子 スカウトされたら、まずデビューの1本目は 慣らしで、そこそこの役が割り振られて……。

voice: 10301040480 倫子 2本目には必ず主役級が回ってくる。それが銀河座なの。 そこでパッとしなかったら……次の役が遠のくの。

voice: 10301040490 ラモーナ 個人主義に走る者が多いワケだな。 まあ、元より厳しい世界ではあるが……。

voice: 10301040500 ラモーナ しかし、このままでいいとは思えないな……。