voice: 10301060010 ラモーナ 公演初日で満員御礼か、さすがは銀河座だ。

voice: 10301060020 緋花里 ……あまり動き回らない、落ちついた王子様感を出す。 喋り気をつける。なまり出さない。声張るトコは張る……。

voice: 10301060030 ラモーナ (緋花里、かなり緊張しているな……。  チャンスが回ってきているからだろうが)

voice: 10301060040 緋花里 ……所作を大振りに、ゆったり余裕を持って動く。 ちょこまかしない、集中する、集中集中集中集中集中……。

voice: 10301060050 ラモーナ 緋花里。

voice: 10301060060 緋花里 あがっ!? ごめん! うるさかった?

voice: 10301060070 ラモーナ 『練習が名人を作る』ドイツのことわざだ。 お前の努力は確実に身についている。心配するな。

voice: 10301060080 緋花里 あっ、うん。ありがとうね。 ちょっと風当たってくる。

voice: 10301060090 ラモーナ ああ、ゆっくりしてこい。

voice: 10301060100 リラックスさせようと話しかけたのか。 相変わらず無駄なことやってるな、お前。

voice: 10301060110 ラモーナ 当然のことをしたまでだ。 何か問題があるのか?

voice: 10301060120 問題ですわ。 緋花里さんの集中を乱したのですから。

voice: 10301060130 ラモーナ 本気で言っているのか?

voice: 10301060140 voice: 10301060141 わざわざ声など掛けなくても緋花里さんはやり遂げます。 どうして彼女の実力を信じてあげられませんの?

voice: 10301060150 ラモーナ 背中を押してやりたいじゃないか。 お前だって誰かを応援することくらいあるはずだ。

voice: 10301060160 あなたと一緒にしないでくださいませんこと? だいたい、推しとの接触は厳に気をつけろと……!

voice: 10301060170 ……オホン、ともかく。銀河座を甘く見ないでください。 私たちは、ひとりでもやり遂げられる役者ですから。

voice: 10301060180 ラモーナ いや、だから舞台はひとりで作るものでは――

voice: 10301060190 ナレーション ただいまより、銀河座『シンデレラ』を上演いたします。

voice: 10301060200 さあ、幕が上がりますわよ。

voice: 10301060210 ラモーナ ……。

voice: 10301060220 銀河座での初舞台、お疲れさまでした。 あなたの目……いえ。センスにはどう映りまして?

voice: 10301060230 ラモーナ ……皆完璧だった。緋花里も含めてな。 これなら私が背中を押す必要すらなかっただろう。

voice: 10301060240 話が早くて助かりましたわ。 ひとつ、お伝えしておきますわね。

voice: 10301060250 ここは銀河座。あなたが以前いた劇団とは違いますの。 友情ごっこで育む絆とは無縁なのです。

voice: 10301060260 我々を繋ぐのは、生ぬるい友情による絆ではありません。 これまでの実績から生まれる信頼や敬意です。

voice: 10301060270 ラモーナ ……そうか。

voice: 10301060280 今は不服かもしれませんわね。 ですが、公演が終わる頃にはお分かりいただけますわ。

voice: 10301060290 ラモーナ 仲良くなりたければ実績を積み上げろ、と?

voice: 10301060300 いい舞台を作りたければ実績を積み上げろ、です。 実力が我々を繋ぐ絆ですので。では、失礼いたします。

voice: 10301060310 ラモーナ ……こんな舞台を作ってしまうんだ。 そんな絆もあるのだろう。認めたくはないが……。