voice: 10302050010 (ワタシはスカウトされて入団したクチじゃない。  自分で挑んで、銀河座の席を勝ち取ったんだ——)

voice: 10302050020 怪しい男 待ってくれ。怪しい者じゃない! 怪しく見えるかもしれないが話だけでも!

voice: 10302050030 そんな言葉を信用するヤツはこの国に居ない。 子さらいならお巡りを呼ぶぞ。

voice: 10302050040 怪しい男 話を聞いてくれ! 私は劇団の演出家なんだ!

voice: 10302050050 劇団だあ……?

voice: 10302050060 (まだ故郷の中国で暮らしていた頃。  唯一、ワタシをスカウトしてきた人間がいた)

voice: 10302050070 スカウト 才能ある若者を全土から集めているんだが、ようやく見つけた! 君にはダイスターになる才能がある!

voice: 10302050080 スカウト 演劇に興味はないか? ともに世界を目指そう!

voice: 10302050090 (だが、ワタシは首を縦には振らなかった)

voice: 10302050100 そうか、ワタシには才能があるのか。 芝居で食っていける見込みがあるんだな?

voice: 10302050110 スカウト 保証しよう。大手ほどのギャラは出せないが きっと人生が豊かになるぞ。だから——

voice: 10302050120 なら、才能を切り売りする場所は自分で選ばせてもらう。

voice: 10302050130 カネが必要なんだ。悪く思うなよ。 主役なら他を当たってくれ。

voice: 10302050140 (そして稼げる劇団を探し、銀河座の存在を知った。  ヤツの言うとおり才能はあった。入団試験は一発合格だ)

voice: 10302050150 (ワタシは挑んで、勝ち取った。  この銀河座へ、来たくて来たのだ)

voice: 10302050160 緋花里 ねえねえ雪。次の公演のこともう聞いた? 『銀河鉄道の夜』だってー。

voice: 10302050170 オーディションの案内を見た。 誰を受けるんだ?

voice: 10302050180 voice: 10302050181 緋花里 えーと…… そういうお話があることは知ってる!

voice: 10302050190 お前の国の文学だぞ、まったく……。

voice: 10302050200 主人公はジョバンニ。悪ガキ共にイジられながらも、 病に臥す母のために生活費を稼ぐ苦学生だ。

voice: 10302050210 あるお祭りの夜、ジョバンニは奇妙な男に切符を貰う。 そして妙な幻聴を耳にするんだ。

voice: 10302050220 『ここは銀河ステーション、銀河ステーション』  そこは見たこともない鉄道の発着駅。

voice: 10302050230 友人カムパネルラの姿を見つけたジョバンニは列車に駆け込む。 それが死者の魂を神の身許へ導く、銀河鉄道だとは知らずに。

voice: 10302050240 緋花里 それでそれで!? ふたりはどうなるの!? 気になる!

voice: 10302050250 タダで読めるんだから原作を読め! ワタシはこれからバイトで忙しいんだ!

voice: 10302050260 緋花里 うん読む! 文学にも詳しいし バイトも続ける雪はえらい! 見習わなきゃ!

voice: 10302050270 ……。

voice: 10302050280 ……結局、今日もバイトで終わった。

voice: 10302050290 この銀河座には、来たくて来たのにな……。

voice: 10302050300 MC 伝統に裏打ちされた人気劇団、銀河座より 本日はウォルフさんにお越しいただきました——

voice: 10302050310 まーた、その他大勢扱いか! このマスゴミめ!

voice: 10302050320 ……電話? こんな夜遅くに。

voice: 10302050330 ……誰だ?

voice: 10302050340 スカウト 以前、君をスカウトした劇団の者だ。 覚えているだろうか?

voice: 10302050350 (忘れる訳がない。  こいつは、すべてのきっかけだ)

voice: 10302050360 ……用件はなんだ。スカウトを蹴って くすぶってるワタシを笑いたいならもう切るぞ。

voice: 10302050370 スカウト くすぶっているのか? ならちょうどいい。 もう一度、ウチに誘おうと電話をしたのだ。

voice: 10302050380 スカウト 銀河座には敵わないが、未来ある劇団だ。 君ならすぐに主役だ。脚本も用意しよう。

voice: 10302050390 (——揺らいでしまうのは、仕方のない話だった)

voice: 10302050400 本当に、主役を張らせてくれるのか……?

voice: 10302050410 スカウト 約束だ。公演にはご家族も招待する。 君も地元の方が輝けるのではないか?

voice: 10302050420 ワタシは……。

voice: 10302050430 ラモーナ インタビューの最後にひとついいだろうか。 この場を借りて、言いたいことがある。

voice: 10302050440 すまん、スカウト。少し待ってくれ。

voice: 10302050450 ラモーナ 銀河座には看板を張る暦の他、優れた役者がたくさんいる。 リリヤ、緋花里、雪。それから——

voice: 10302050460 あいつ……。

voice: 10302050470 ラモーナ 時間の許す限り全員の名を挙げたいが、私が言いたいのは 才能ある者同士の切磋琢磨が銀河座人気を支えているという事だ。

voice: 10302050480 ラモーナ 熱のこもった芝居を見せられると憧れ、超えたいと意気込む。 それが我々だ。どこより負けず嫌いが揃っているのだろう。

voice: 10302050490 ラモーナ そう、ぶつかり合うからこそ銀河は強く輝く。 我々は日々競い合い、高め合っているのだ。

voice: 10302050500 ……お前に言われなくてもわかっている。バカ野郎。

voice: 10302050510 (負けるなんて考えてるようじゃ、連中に勝てない。  地元の劇団でも埋もれて終わりだ)

voice: 10302050520 (銀河座を選んだのはワタシだ。  だったら逃げてどうする、王雪)

voice: 10302050530 スカウト 結論は出たかね?

voice: 10302050540 心を決めた。地元には帰らない。 ありがたいが、やっぱり他を当たってくれ。

voice: 10302050550 ワタシはこの銀河座で勝負したい。 成功して地元に帰る。それ以外にない!

voice: 10302050560 スカウト そうか。残念だが……決意の固さは伝わった。 活躍を期待しておくよ。

voice: 10302050570 ……これで退路は断った。四面楚歌だぞ、王雪。

voice: 10302050580 ジョバンニ役は……絶対に勝ち取る!