voice: 10302160010 緋花里 『旅ゆくお二方。相席してもよろしいでしょうか。 この子たちは泳ぎ疲れてしまっていて』
voice: 10302160020 暦 『いいね、ジョバンニ?』
voice: 10302160030 voice: 10302160031 雪 『さあ、僕らの隣にお座りなよ。 どちらからいらしたのですか?』
voice: 10302160040 緋花里 『いえ、氷山にぶつかって船が沈んでしまったもので』
voice: 10302160050 リリヤ ねえ、ラモ。緋花里の役……青年は何者?
voice: 10302160060 ラモーナ 脚本ではボカされているが、さる富豪に雇われた家庭教師だ。 生徒とパシフィックを渡る客船に乗り合わせたのだが……。
voice: 10302160070 リリヤ わかった。それ以上言わなくていい。悲しい話ね。
voice: 10302160080 ラモーナ だが青年は悲しまず、努めて明るく振る舞う。 悲しくとも笑顔でいなければならないんだ。
voice: 10302160090 voice: 10302160091 緋花里 『ごらんなさい、あの光は天上のしるし。 夜中、窓辺から見上げていた星々ですよ』
voice: 10302160100 voice: 10302160101 緋花里 『さあ、いつものように歌いましょう。 トゥインクル・トゥインクル・リトル・スター』
voice: 10302160110 暦 ……っ!
voice: 10302160120 ラモーナ 悲しみに打ち克ち、最期までよき教師であろうとする。 それが緋花里の役だ。
voice: 10302160130 リリヤ ……悲しみがほんの少しだけ透ける笑顔。 死すらも乗り越える勇気、きれいね。
voice: 10302160140 ラモーナ ああ。しかも短い出番で印象を残さねばならない。 イメージともまるで違う。
voice: 10302160150 ラモーナ それでも見事に仕上げてきている。 主役たちすら食うほどにな。
voice: 10302160160 演出家 いいだろう。 緋花里、ひと皮むけたな。
voice: 10302160170 voice: 10302160171 緋花里 わ……! にふぇーでーびる! ありがとうございますっ!
voice: 10302160180 緋花里 そ、そんなによかった!? ラモさん! リリヤさん!
voice: 10302160190 リリヤ うん。あの表情は私には作れない。悔しい。
voice: 10302160200 voice: 10302160201 ラモーナ 青年の献身が伝わってくるようだった。 おっと、もちろん雪と暦もよかったぞ。
voice: 10302160210 voice: 10302160211 雪 とってつけたみたいにほめるな。 お前もなんとか言え、暦サン。
voice: 10302160220 暦 ……。
voice: 10302160230 雪 いつまで余韻に浸ってるんだよ。 今日はもう終わりだぞ。
voice: 10302160240 暦 ……ええ、そうでしたわね。 帰り支度をしてまいりますわ。
voice: 10302160250 緋花里 えへへー! みんなに褒められたよー! 褒められて伸びる! 成長期!
voice: 10302160260 雪 偶然うまくハマっただけだからな。油断するなよ。
voice: 10302160270 リリヤ 雪が悔しがっているのは、褒めてる証拠。
voice: 10302160280 voice: 10302160281 雪 余計なことを言うなフィンランド! ……クソ。ワタシを食いやがって。
voice: 10302160290 ラモーナ よかったぞ、緋花里。何か掴んだようだな?
voice: 10302160300 緋花里 うん、似たような経験があってさ。
voice: 10302160310 緋花里 昔、お父さんの漁船が沖合で故障しちゃってね。 無線機が壊れて、しかも予報にない嵐にも襲われて。
voice: 10302160320 voice: 10302160321 緋花里 お父さんの帰りを待つの、不安だったさ……。 帰ってこなかったらって思うと……。
voice: 10302160330 リリヤ 怖かったのね。
voice: 10302160340 緋花里 うん。でもね、お母さんは全然平気って感じで笑ってた。 どうせのんきな顔して帰ってくるよ、なんくるないよって。
voice: 10302160350 緋花里 ホントはお母さんだってすごく不安だったはずなのに 笑ってくれてたから、私は怖くなかったさ。
voice: 10302160360 voice: 10302160361 ラモーナ なるほど、母上の心境を青年に重ねたか。 怖がらせまいとする気持ちは同じ……。
voice: 10302160370 雪 その体験が、あの芝居に生きている……。
voice: 10302160380 voice: 10302160381 緋花里 これぞ芸は身を助ける! 雪が前話してくれたおかげさ! にふぇーでーびる!
voice: 10302160390 voice: 10302160391 雪 ……まあ、客に伝わればなんでもいい。 本番では気を抜くな。本気でいくぞ。
voice: 10302160400 緋花里 もちろん! 雪が主役だもん、いい舞台にする!
voice: 10302160410 暦 ……。
voice: 10302160420 voice: 10302160421 暦 (緋花里さんの芝居には……いいえ。 成長には目を見張るものがありました)
voice: 10302160430 暦 (あの一瞬、私は役を忘れていた。 あれが本番だったらと思うと……)
voice: 10302160440 暦 (あ……また……)
voice: 10302160450 暦 (いつもよりめまいが長い。 おかしい、薬は確かに飲んだはずで——)
voice: 10302160460 暦 あ……。
voice: 10302160470 いろは んん……。お姉ちゃん、帰っているんですか? すごい物音がしましたけど——えっ!?
voice: 10302160480 いろは お姉ちゃん!? どうしたんですか! しっかりしてください! お姉ちゃん!
voice: 10302160490 いろは お姉ちゃーんッ!!!