voice: 10401120010 空が騒々しいな……。

voice: 10401120020 む……靴紐が……。

voice: 10401120030 (家を出てすぐだったのは、不幸中の幸いか。  それとも……)

voice: 10401120040 黒猫が……、

voice: 10401120050 何匹も……!?

voice: 10401120060 いったい、なんの予兆だと言うんだ……?

voice: 10401120070 団員 稽古の前に、マチコサマから話があるって。 なんだろね?

voice: 10401120080 いろは ……次の舞台のことですかね?

voice: 10401120090 美兎 どうだろ……マチコさん、舞台については口を出さないから……。

voice: 10401120100 voice: 10401120101 カミラ ピンときたよ。わざわざボスから直ってことは、ビッグな発表……。 例えば、次の次の公演のコラボ作品がチョー人気作とか!?

voice: 10401120110 いろは わっ! だったらすごいですねっ。

voice: 10401120120 ……。

voice: 10401120130 voice: 10401120131 叶羽 どーしたの。顔色悪いけど。 もしかして、夜遅くまで『奴ら』と戦ってたとか?

voice: 10401120140 ……ならば、良いのだがな。

voice: 10401120150 叶羽 なにそれ。 いつもならもっと言ってくるのに。変なの。

voice: 10401120160 マチコ 待たせたな。

voice: 10401120170 ……。

voice: 10401120180 いろは (……?  要さん、いつもと違う……?)

voice: 10401120190 美兎 いろはちゃん?

voice: 10401120200 マチコ さて。皆は、電姫の成り立ちを知っているな。 15年前にここ、秋葉原に設立された劇団だ。

voice: 10401120210 マチコ 急激に色づいていったこの街の土地柄を活かした演目で、 電姫という劇団は評価を得て、規模を大きくしていった。

voice: 10401120220 voice: 10401120221 マチコ しかし――だ。 2年ほど前からだ。電姫の成長は止まってしまった。

voice: 10401120230 ……ッ、

voice: 10401120240 マチコ 無論、手をこまねいて見ていたわけじゃない。 有望な新人の加入……。

voice: 10401120250 いろは・美兎 ……。

voice: 10401120260 マチコ 発信力の強化……。

voice: 10401120270 カミラ (……ウチ?)

voice: 10401120280 マチコ 他劇団との交流にも力を入れ、コラボ先にも積極的に働きかけ、 運営側でも手を尽くしてきたつもりだ。

voice: 10401120290 マチコ それでも、これ以上成長の目がないというのならば、 私は今後一切、金を出す気はない。

voice: 10401120300 voice: 10401120301 叶羽 ……は? はあああっ? 何を言ってんのよ、ボス――

voice: 10401120310 最後まで話を聞きなさい。

voice: 10401120320 叶羽 ……。

voice: 10401120330 マチコ 原因はお前たちだけにあるわけじゃない。この街自体が、 かつての混沌とした活気を失いつつあることも理由のひとつだ。

voice: 10401120340 voice: 10401120341 マチコ そんな中でも、この劇団に興味を持った者たちがいる。 オリンポスだ。

voice: 10401120350 叶羽 ――バッカじゃないの! 電姫が電姫じゃなくなるわよ!!

voice: 10401120360 マチコ ならば、このまま電姫は朽ち、消え去るだけだ。 だから私は――

voice: 10401120370 叶羽 何よそれっ!

voice: 10401120380 マチコ ――この買収案を請けるべきだと考えている。