voice: 1301820010 初魅 ほう……! これはなんとも……!
voice: 1301820020 voice: 1301820021 望有 出汁がしっかりと染みこんでいて、うん、日本酒が進む。 これを美兎が作ったって言うんだから、驚きだわ。
voice: 1301820030 祖父 でしょう? 孫びいきってわけじゃないですが、 うちの味をしっかりと受け継いでくれていましてねぇ。
voice: 1301820040 美兎 お、おじいちゃん……。
voice: 1301820050 祖母 おふたりは演劇の大先輩というじゃありませんか。 これからも美兎をよろしくお願いします。
voice: 1301820060 美兎 おばあちゃんも……だ、大丈夫だから……。 み……美兎が、お相手するから……。
voice: 1301820070 祖父 はいはい。よろしく頼むよ。
voice: 1301820080 初魅 いいお爺さまとお婆さまではないか。 置いてあるお酒のセンスも、素敵だな。贔屓にするとしようか。
voice: 1301820090 美兎 ……ありがとうございます。
voice: 1301820100 望有 お家の手伝いなんて、偉いわね。 ご両親の代わりかしら?
voice: 1301820110 voice: 1301820111 美兎 いえ、家庭の都合で。 美兎は、おじいちゃんとおばあちゃんに育てられたんです。
voice: 1301820120 望有 そう。お料理の上手なご家族でよかったわね。 私なんて、ついつい疎かにしちゃいがちだから。
voice: 1301820130 voice: 1301820131 初魅 そうだ。聞いてくれ、美兎。 この望有という女は、演劇に入り込んでしまうと食事も忘れてしまうのだよ。
voice: 1301820140 望有 そんなこと……。
voice: 1301820150 初魅 今日も昼を抜いたのではないか?
voice: 1301820160 望有 ……。
voice: 1301820170 voice: 1301820171 美兎 だ……だめですよ、お食事はちゃんと食べないと。身体を壊しちゃいます。 さっきからお酒の進みが早いですし……何か、ご用意しましょうか?
voice: 1301820180 望有 いや……。
voice: 1301820190 美兎 今日はいいアジが入ったから、なめろうが美味しいです。 あとは、きんぴらと、おひたしとか……俵の小さなおにぎりとかもできますよ。
voice: 1301820200 美兎 ――あ……ご、ごめんなさい。 勝手に、いろいろ薦めちゃって……。
voice: 1301820210 望有 いいえ、そうね。 せっかくだしいただこうかしら。
voice: 1301820220 美兎 あ、ありがとうございます。 お……おじいちゃん、えっとね……。
voice: 1301820230 初魅 珍しく素直じゃないか。そんなお前も素敵だ。
voice: 1301820240 望有 このお店の席に座っていれば、素直にもなるでしょう?
voice: 1301820250 voice: 1301820251 初魅 そうだな。どの客も、皆、いい表情をしている。 ……少し食らうとするか。
voice: 1301820260 初魅 『……はー、うちのお局さん、マジムカつくんだよねー。 小さなミスをネチネチネチネチってさー』
voice: 1301820270 初魅 『でね! これが超超超超超大好きなSAYA様ね! パフォーマンスを観ていると、心も体も熱くなるのっ!』
voice: 1301820280 初魅 『うわあぁぁん、間に合わないよぉぉ! だからこそ飲まずにはいられないっ!』
voice: 1301820290 初魅 ……っと、おお、美兎。もう料理を持ってきてくれたのかい?
voice: 1301820300 美兎 あ、あの……美兎が作った、小鉢……です。 他の料理を待っている間、食べてほしいなって。ど、どうぞ……。
voice: 1301820310 初魅 いただくとしよう。
voice: 1301820320 望有 驚いたでしょ。遊んでるわけじゃないのよ。 初魅はね、時折こうやって、貪欲に人を取り込んでるの。
voice: 1301820330 初魅 酒場というものは、味わい深い喜怒哀楽を摂取することができる。 癒しの場であり、社交の場であり、貴重な学びの場でもあるのさ。
voice: 1301820340 voice: 1301820341 初魅 美兎もこういう環境で育ったならば、似たところはあるのではないかな? だとすれば、私たちは同志と言えよう。
voice: 1301820350 voice: 1301820351 美兎 あ……えっと、ご、ごめんなさい……美兎は……。 お客様の真似とか……考えたこと、なかった……です……。
voice: 1301820360 望有 へえ、だとしたら、何で学んだのかしら? 電姫に入るまで、きちんとした指導を受けたことがないと聞いたけど。
voice: 1301820370 美兎 あの……えっとその……演劇じゃ、なくて……映画です……。
voice: 1301820380 初魅 ほう、映画か。それもいい。 映画は演技の中でも、より完成に近いものといえるからな。
voice: 1301820390 望有 同志じゃなくて残念だったわね。
voice: 1301820400 初魅 なに、演劇を愛し、演技を学ぶ者という意味で言えば、 同志に違いはないさ。
voice: 1301820410 voice: 1301820411 初魅 それはそれとして……ああ、これもなんと美味しい料理だろうか。 その料理の腕を買って、頼みがあるんだが?
voice: 1301820420 美兎 な、なんでしょうか……?
voice: 1301820430 初魅 今度、美兎の作った弁当を持って、 どこかにドライブへ行かないか?
voice: 1301820440 望有 まーた悪い病気が出たわね。
voice: 1301820450 voice: 1301820451 初魅 うむ、恋の病かもしれん。それぐらい私は真剣だ。 返事を聞かせてくれ、白丸美兎。
voice: 1301820460 voice: 1301820461 美兎 え……? えっと……その……お弁当だけなら、いいですけど……。 ドライブは遠慮……させてください……。
voice: 1301820470 初魅 そうか……残念だ。お前とふたりで過ごしたかったよ。
voice: 1301820480 美兎 ご、ごめんなさい……。
voice: 1301820490 voice: 1301820491 望有 いーのいーの、謝ることなんてないわよ。誰にでも声をかけるんだから。 それより、コレと同じの、燗でお願いね。