voice: 1308910010 暦 はあ……。毎度のことではありますが、 皆さんは勢いで乗り切ろうとし過ぎですわね。
voice: 1308910020 暦 頼まれた訳でもないのに雪さんのアルバイトを代わるばかりか、 今度はお弁当を作って励ますだなんて。
voice: 1308910030 暦 ……ラモーナさん達の気持ちは、私にもわかります。 心配していない訳ではありませんが……。
voice: 1308910040 暦 …………。
voice: 1308910050 暦 (患っていることなど、誰にも知らせない方がよいのです。 下手に知られたら無闇に心配をかけてしまう)
voice: 1308910060 暦 (少なくとも、雪さんはそう思ってらっしゃるはず。 私の不眠症を皆さんに黙っていてくれているのですから)
voice: 1308910070 暦 (あらゆる心配は胸に秘めるべき。 そう思っていたものの……)
voice: 1308910080 暦 はあ、どうして気づかなかったのでしょう……。 体調を崩した人に食べさせるなら、お弁当ではなくお粥でしょうに……。
voice: 1308910090 暦 とはいえ、もう後の祭り。 今さら断りを入れても詮索されるだけです。
voice: 1308910100 暦 特に、料理については……。
voice: 1308910110 暦 …………。
voice: 1308910120 湯島 おや、いかがなさいましたか暦お嬢様。 まるで夕飯の献立に悩む林シェフのようなお顔ですが。
voice: 1308910130 暦 !そんな顔はしておりませんが?
voice: 1308910140 湯島 おやおや、過剰な反応。これは図星のようですね? 頭を悩ませることがおありでしたら私どもを頼ってくださいな。
voice: 1308910150 暦 いえ、特にそのようなことは……。
voice: 1308910160 湯島 では、暦お嬢様を見守る耳目に尋ねましょう。 物影に隠れても私の鼻は誤魔化せませんよ、氷川さん。
voice: 1308910170 氷川 ええと……暦お嬢様、申し訳ございません。 背後に控えておりましたので、お独り言はすべて耳に……。
voice: 1308910180 湯島 さあ、お話いただけますか?氷川さん。 この湯島。手荒な真似もやぶさかではありません。
voice: 1308910190 氷川 っ……!
voice: 1308910200 暦 不運が重なり、お手製のお弁当を作ることになっただけです。 使用人同士で無用な諍いを起こさないでくださいまし……。
voice: 1308910210 湯島 あらまあ、それはそれは。つまりは数奇な運命に料理で抗う、 暦お嬢様の大冒険が始まる訳ですね?
voice: 1308910220 暦 抗えるほど腕に覚えがあれば困ったりしませんわよ……。 手料理というだけでも難しいのに、ましてやお弁当なんて……。
voice: 1308910230 氷川 暦お嬢様が、厨房に立つ機会はほとんどありませんからね。 千寿家には林シェフがおりますし、そうでなくとも私達がおります。
voice: 1308910240 湯島 ええ。そも我々は、皆様が家業に集中できるよう雑事を預かる身。 お料理などなさっては、私達が大奥様に叱られてしまいますわ。
voice: 1308910250 氷川 ええ。暦お嬢様がご自身を責める必要はありません。
voice: 1308910260 暦 ですが、それはあくまで千寿家の事情です。 敷居の外では通用しませんもの。
voice: 1308910270 湯島 あらあら。向上心に溢れておりますね?
voice: 1308910280 暦 (向上心なんて聞こえのいい物ではありません。 もし、料理に自信がないと知られれば――)
voice: 1308910290 ラモーナ あー、まあ……うん。落ち込む必要はないぞ? 私も絵を描くのは苦手なんだ。お揃いだな?
voice: 1308910300 緋花里 そ、そうだよー!お料理できなくても暦さんはすごい! 自信持っていい!
voice: 1308910310 リリヤ 暦の料理、美味しくない。
voice: 1308910320 暦 うぐ……。
voice: 1308910330 暦 (このままでは、変に気を遣われてしまう。 それだけは避けたいものの、料理なんてどこから学べば……)
voice: 1308910340 湯島 なるほど。次なる任務はもうお分かりですね、氷川さん?
voice: 1308910350 氷川 ええ。暦お嬢様のあくなき向上心に、胸を打たれました。 私達が、暦お嬢様のためにもひと肌脱ぎましょう。
voice: 1308910360 暦 氷川達が、ですか? ですがこの短期間で、どうやって……。
voice: 1308910370 湯島 暦お嬢様が普段から行っている通り、稽古をすればよいのです。 面白くなってきましたよ!お買い物に行ってまいります。
voice: 1308910380 氷川 お買い物は湯島さんに任せて帰りましょう。 どこに出しても恥ずかしくないお弁当を作るために。
voice: 1308910390 暦 ……ええ。ぜひお願いいたします。
voice: 1308910400 暦 あの、お買い求めいただいたところ申し訳ありませんが、 さすがに……食材が多すぎるのではありませんこと?
voice: 1308910410 氷川 基本品目の野菜はもちろん、よく使われる肉類や魚介類。 きのこやナッツ類、水煮や缶詰まで揃っておりますね。
voice: 1308910420 湯島 おおっ。食材の山をひと目見て、分量を推し量られましたね? 素晴らしい目利きです、暦お嬢様。
voice: 1308910430 暦 このくらいは当然のことだと思いますが……。
voice: 1308910440 湯島 これだけあれば大抵のメニューには対応できますわ。 余りは後でスタッフが美味しくいただきますのでご心配なく。
voice: 1308910450 暦 余りも何も、迷って仕方ありませんわよ。 林シェフであれば余すことなどないのでしょうが……。
voice: 1308910460 氷川 林シェフを呼んで参りましょうか。 メインキッチンで仕込み中ですが、暦お嬢様のお頼みであればきっと――。
voice: 1308910470 湯島 はい、林シェフに助けを求めるのは禁止です。 それと我々使用人も手出しは厳禁としましょう。
voice: 1308910480 暦・氷川 えっ!?
voice: 1308910490 湯島 これまで林シェフが作ったお弁当を思い出してください。 あんな老舗料亭でも舌を巻く代物を素人が作れると思いますか?
voice: 1308910500 湯島 つまるところ、林シェフの作るお弁当は完璧がすぎるのです。 そんな可愛げのないものを参考にするなど言語道断です。
voice: 1308910510 暦 ええと、お弁当の可愛げですか……?
voice: 1308910520 湯島 ええ。看板役者かつ、家名を継ぐ暦お嬢様も女子高生です。
voice: 1308910530 湯島 つまり……『女子高生が作ったのだ』と思わせてくれる可愛げ。 それこそが目指すべき、暦お嬢様らしいお弁当なのです!
voice: 1308910540 湯島 ただし料理下手も可愛げに含む。
voice: 1308910550 氷川 また偏屈なことを……。 気にせずご自由に調理ください、暦お嬢様。
voice: 1308910560 暦 ですが、湯島がそこまで熱弁されるのなら、 目指してみるべきかもしれません……。
voice: 1308910570 暦 私にしか作れない、可愛げとやらのこもった、完璧なお弁当を……!
voice: 1308910580 湯島 ええ、ええ!それでこそ暦お嬢様です。 千寿家の繁栄は約束されましたわ!
voice: 1308910590 voice: 1308910591 氷川 可愛げなどという曖昧な指針では迷ってしまいます! もっと栄養バランスを考えたお弁当の方が――むむーっ!
voice: 1308910600 湯島 さあ、暦お嬢様!自らの舌と想像力を信じ、 空のお弁当箱を『らしさ』で満たしてくださいませ!
voice: 1308910610 暦 ……ですわね。演劇も料理も稽古が大事です。 舌鼓を打たせてさしあげましょう。