voice: 1401620010 大黒 魔法使いの私は……私は……えっと……、 やっぱり違う。あいつらの演技は、こうじゃない……。

voice: 1401620020 大黒 すみません、もう一度やらせてください……。

voice: 1401620030 EdenのメンバーA また!? 何がそんなに気に食わないのよ! もう本番だって始まってるのよ!?

voice: 1401620040 EdenのメンバーB 勝手に自分で結論出して、失敗扱いにしないでくれる? あんた、舞台監督でもなんでもないでしょ?

voice: 1401620050 大黒 で、でも……もっといい演技をしないと……。 役者として存在価値がないし……。

voice: 1401620060 EdenのメンバーA あんた……同じ役者の私たちにケンカ売ってるの!?

voice: 1401620070 voice: 1401620071 はいはい、そこまで! それ以上ケンカしたら、稽古自体中止になるよ。

voice: 1401620080 EdenのメンバーA でも、容さん……!

voice: 1401620090 あんたたちの気持ちもわかるよ。でも我慢しな。 今日は、初魅も目を光らせてるんだから。

voice: 1401620100 EdenのメンバーA うっ……。

voice: 1401620110 初魅 遠慮するな。不満があるなら聞かせてみろ。 間違っていると思ったことは、私が責任を持って正す。

voice: 1401620120 一同 ……。

voice: 1401620130 初魅 ……しばらく休憩時間とする。全員、少し頭を冷やせ。

voice: 1401620140 さっきは悪かったね、場を収めるダシに使っちゃって。

voice: 1401620150 初魅 お前が謝ることじゃない。 むしろ感心したぞ、うまいものだな。

voice: 1401620160 ……前にも言ったけど、劇団の中の空気は最悪だよ。 大黒への当たりも、どんどん強くなってるし……。

voice: 1401620170 しぐれも、最近は稽古場に来ないで個人レッスンばっかりしてる。 あの子なりに、周りに気を使ってるのかもしれない。

voice: 1401620180 初魅 ……。

voice: 1401620190 アタシのフォローも、もう本当に限界。 ここら辺で根本的な対策をしないと、舞台自体がめちゃくちゃになるよ。

voice: 1401620200 初魅 もう少しだけ時間をくれ。私が、必ずなんとかする。

voice: 1401620210 ……ここでEdenが崩壊するなんて、アタシは嫌だからね。

voice: 1401620220 初魅 (ああ言ってみたものの、どうしたらいい……)

voice: 1401620230 初魅 (大黒には圧倒的な力があるのは間違いない。  それを見せつければ、きっと周りの人間も文句を言えなくなるはずだ)

voice: 1401620240 初魅 (だが、その力をどうやって引き出す……?  本人ですら、その方法がわかっていないのに……)

voice: 1401620250 初魅 (魔法使いのキャラクターを大黒に合わせたものに変えて……  いや、その場しのぎにしかならないな……)

voice: 1401620260 初魅 駄目だ、頭がまとまらん。 気分転換に、稽古場で身体でも動かすか……。

voice: 1401620270 初魅 みんな、もう帰った後だな。今は、その方がありがたいが。 ……ん?

voice: 1401620280 初魅 このノート、誰かの忘れ物か? 表紙に名前は無し……。 持ち主には悪いが、中身を確認するしかないな。

voice: 1401620290 初魅 これは……劇団シリウスの批評か?

voice: 1401620300 初魅 凄まじい分析と恨み節の量だな……。 書かれた文字でページが真っ黒に見えるほどだ。

voice: 1401620310 初魅 特に、特定の役者たちに対する記述が多いな。 ぱんだに、流石か……確かこのふたり、大黒と同じ……。

voice: 1401620320 初魅 なるほど……これで、ようやく道が拓けそうだ。

voice: 1401620330 初魅 この脚本は参考になりそうだな。こっちの映画論も良さそうだ。

voice: 1401620340 初魅 だが、私の持っている資料だけでは足りない……。 明日は朝イチで国会図書館へ行ってみるか。

voice: 1401620350 初魅 ここが正念場だ。とにかくまずは、突き進む……!

voice: 1401620360 テトラ まったく、稽古場を最後まで使ってたのはどこのどいつだ? 電気を消し忘れてるじゃないか――

voice: 1401620370 初魅 悪いなテトラさん。まだ使用中だ。

voice: 1401620380 voice: 1401620381 テトラ なんだ、まだいたんだね。身体を休めるのも役者の仕事…… って、何を書いてるのさ?

voice: 1401620390 初魅 次の公演の脚本を書いているんだ。

voice: 1401620400 テトラ ……今は、最新公演の真っ最中だろ? そっちはもう、どうでもいいってことかい?

voice: 1401620410 voice: 1401620411 初魅 今の公演にも手は抜かない。 だが、それ以上にしなければいけないことがある。

voice: 1401620420 テトラ それが、その脚本ってわけか。

voice: 1401620430 初魅 ああ。これからのEdenのために、絶対に必要なものだ。

voice: 1401620440 テトラ ……まったく、あんたといると本当に飽きないねぇ。

voice: 1401620450 テトラ どうせ、あの新人……大黒をなんとかするためなんだろ。

voice: 1401620460 初魅 さすがテトラさん、話が早いな。

voice: 1401620470 初魅 大黒が持つ魅力を、最高に輝かせる舞台を作りたい。 シナリオの建て付けも、ある程度は完成してる。

voice: 1401620480 初魅 だが……肝心の、大黒に演じさせるべき役が、 どうしても浮かんでこない……!

voice: 1401620490 テトラ ここまで来て、演じさせるなんて小綺麗なこと考える必要ないだろ。

voice: 1401620500 初魅 どういう意味だ……?

voice: 1401620510 テトラ あの子の輝きをみんなに見せつけたいなら、 あの子そのものを役にしちまえばいいのさ。

voice: 1401620520 テトラ あとは、舞台上でその魅力をひたすら爆発させるだけ。 それが観客に刺さるかどうかは、神のみぞ知るってやつだがね。

voice: 1401620530 初魅 ……その心配はない。 必ず、観た者の心を掴んで掻き毟るはずだ……。

voice: 1401620540 voice: 1401620541 初魅 光を追い求めながら、黒く煮えたぎった感情を爆発させる……。 大黒が演じるべきキャラクターが……!

voice: 1401620550 大黒 へ……? 舞台……私の……?

voice: 1401620560 初魅 ああ。次は……お前が主役だ。