voice: 1402910010 テトラ おーい、初魅! あたしだよ! いないのかい!
voice: 1402910020 テトラ うんともすんとも言わないね……約束の時間、間違えたか……?
voice: 1402910030 テトラ なんだい……鍵、開いてるじゃないか。 ってことは……。
voice: 1402910040 初魅 ……。
voice: 1402910050 テトラ 初魅! いるならいるって返事しな!
voice: 1402910060 初魅 おお、テトラさん。待っていたよ。
voice: 1402910070 テトラ ったく……人のこと呼び出しといて、何してんだい。 呑みに誘った側なら、しっかりエスコートしろってんだ。
voice: 1402910080 初魅 すまなかった。 懐かしい台本を見つけて、つい読みふけってしまってね。
voice: 1402910090 テトラ 台本……?
voice: 1402910100 初魅 あとで説明するよ。 今はとりあえず、晩酌の準備をしようじゃないか。
voice: 1402910110 テトラ 盛り付けもまだなのかい……。 しょうがないねぇ……あたしも手伝うから、さっさと皿を並べな。
voice: 1402910120 voice: 1402910121 初魅 よし、酒もつまみも揃ったね。 では……乾杯。
voice: 1402910130 テトラ ……ふぅ。こいつは上等な日本酒だね。
voice: 1402910140 初魅 私が頼んで仕入れてもらったものさ。 気に入ってもらえて、嬉しいよ。
voice: 1402910150 テトラ さて、さっきの台本について、 そろそろ聞かせてもらおうじゃないか。
voice: 1402910160 初魅 説明すると言った手前、今さら誤魔化すつもりはないんだが……、 いざ話そうと思うと、どうにも気恥ずかしい。
voice: 1402910170 テトラ おや、あんたがそんなこと言うなんて珍しいね。
voice: 1402910180 初魅 この台本は、未熟だった昔の自分そのものだ。 他人に語るには、それなりに勇気がいる。
voice: 1402910190 テトラ と、いうことは……その台本、Edenに来る前に使ってたやつかい。
voice: 1402910200 初魅 ……ああ。かつて、私も誰かの言うことを素直に聞き、 型通りの芝居をやっていた証拠さ。
voice: 1402910210 初魅 私が銀河座を退団するきっかけになった、『マクベス』の台本だ。
voice: 1402910220 テトラ へぇ……見せてもらってもいいかい?
voice: 1402910230 初魅 ああ、構わないよ。
voice: 1402910240 voice: 1402910241 テトラ なるほど、よく出来た脚本だし、演出家からの指示も一流だ。 あんたのメモ書きは、文句ばっかりだけどね。
voice: 1402910250 初魅 他人の理想に縛られるだけの芝居はしたくなかった。 自分がこうするべきだと思った芝居を、必死に模索していたよ。
voice: 1402910260 テトラ ははっ、あんたは強情だからねぇ。 Edenに来た頃も、相当なもんだったよ。
voice: 1402910270 初魅 だが……銀河座にいた頃の私は、ただ反発していただけだ。 自分の芝居を、劇団に認めさせることが出来なかった。
voice: 1402910280 初魅 ……だから、銀河座を去ることになったのさ。
voice: 1402910290 テトラ 後悔する気持ちはわかるよ。 演劇人にとって、銀河座って場所は特別だからね。
voice: 1402910300 テトラ そういえば、前にも話したことがあったね。 もし、あんたが銀河座に残っていたらって。
voice: 1402910310 テトラ あんたなら、銀河座でも上に行けたはずだ。 それこそ、千寿の人間すら蹴落とす、圧倒的な役者になってたかも……。
voice: 1402910320 初魅 ふふっ……それでは、私が嫌う王道三文芝居の筋書きだな。
voice: 1402910330 テトラ ははっ、違いない。 酒が美味すぎて、もう酔っ払っちまったかな。