voice: 1409710010 ……稽古に付き合ってください、とは言いましたが、 火鍋まで参加するとはひと言も言いませんでしたよね……。

voice: 1409710020 voice: 1409710021 ラモーナ だが参加してくれたじゃないか。 皆喜んでいたぞ? もちろん私もな!

voice: 1409710030 はあ……。お次はなんです? 家まで送るつもりで着いてきているのでしたら、結構ですわよ。

voice: 1409710040 ラモーナ いや、ひとり夜道を帰るのは危険だ。 厄介な事態に巻き込まれないとも限らないしな。

voice: 1409710050 巻き込まれているとしたら、今ですわ……。

voice: 1409710060 ラモーナ そう言わないでくれ。私も嬉しいんだよ。 今日の暦は、一段と気合いが入っていただろう?

voice: 1409710070 実はものすごく落ち込んでいるかもしれませんのに?

voice: 1409710080 ラモーナ ならば余計、ひとりにはさせられないな。

voice: 1409710090 ああ言えばこう言いますのね……。

voice: 1409710100 (……とは言え、本当のところは勘づかれた通り。  充実した稽古の後特有の、心地よい疲労感がある)

voice: 1409710110 ラモーナ ここのところ好調じゃないか。 何か心境の変化があったと見えるが。

voice: 1409710120 たまたま調子がよかっただけではありませんこと? たいした変化はありませんもの、私には。

voice: 1409710130 (――変わったとすれば、私ではなくいろはさんのこと)

voice: 1409710140 (千寿の家柄やしきたりに囚われることなく、  あの子は自由に、電姫が示してくれたであろう道を歩き始めた)

voice: 1409710150 ……しかし、調子次第で芝居の出来が変わるようではまだまだです。 より励まねばなりません。

voice: 1409710160 (だからこそ、一層励まねばならない。  千寿暦として行ってきたことは、間違ってなどいなかったのだから)

voice: 1409710170 voice: 1409710171 ラモーナ 確かにな。さすがは暦だ。 ……フフ。

voice: 1409710180 なんですの? 私の顔にご興味がありまして?

voice: 1409710190 ラモーナ いや、表情に声にと実に充実感が染み出ているからな。 毎日、顔を突き合わせてきたから分かるぞ、友として。

voice: 1409710200 voice: 1409710201 共演者として、です。 まあ、好調なのは事実ですわね。

voice: 1409710210 ラモーナ 願わくば、ずっとそうあってほしいものだ。 暦は気合いが入っている時こそ油断ならないからな。

voice: 1409710220 心配症が過ぎますわよ。 ……ご迷惑をかけたのは事実ですが。

voice: 1409710230 ラモーナ 心配をかけたくないなら、なんでも相談してくれ。 私の部屋の門扉は常に開け放たれているぞ?

voice: 1409710240 では、ひとりにしてくださいます? 帰りますので。

voice: 1409710250 ラモーナ 確かになんでも聞くとは言ったがな……。

voice: 1409710260 voice: 1409710261 ふふ。ご心配には及ばないというだけです。 ちょうど貴女の部屋の前です。おやすみなさいませ。

voice: 1409710270 ラモーナ ああ、おやすみ。いろはにもよろしく伝えてくれ。

voice: 1409710280 いろは これを借りてきたんですっ。

voice: 1409710290 いろは 最初は本屋さんで捜していたんですが見つからなくて。

voice: 1409710300 いろは そうしたら偶然ラモーナさんに会って。 もう読み終わったから貸してくれるって話になったんです。

voice: 1409710310 (いろはさんは、偶然出会ったラモーナさんから、  私が差し上げた本を借りていた……)

voice: 1409710320 (だけれど、ラモーナさんからは何も聞いていない。  本を貸したことだけでなく、出会ったことすら……)

voice: 1409710330 ……隠している?

voice: 1409710340 ラモーナ なんだ? 名残惜しいなら家まで送るぞ?

voice: 1409710350 ……ラモーナさん。なんでも聞くと仰いましたわよね。 本当になんでも答えてくださいますの?

voice: 1409710360 ラモーナ 友が望むなら答えよう。私に二言はない。

voice: 1409710370 では、お尋ねします。 貴女に贈った、『最も優れた役者になる方法』について。

voice: 1409710380 ラモーナ ああ、あの本か。 暦を理解したくて折に触れて読み返しているよ。

voice: 1409710390 voice: 1409710391 差し上げた手前心苦しいのですが、お借りできます? 読み返しているならお持ちですわよね、お手元に。

voice: 1409710400 ラモーナ あ、ああ。どの章だ? 内容は暗記しているからな、答えるぞ。

voice: 1409710410 そうですか。心なしか声が震えてらっしゃるような。

voice: 1409710420 voice: 1409710421 ラモーナ 美しい暦に見つめられたら緊張もするだろう? 照れてしまうな。ハハハ。

voice: 1409710430 まあ。覚えるほど読み込んでいるということなら、 お贈りした甲斐はありましたわね。

voice: 1409710440 ……あの本で私を理解できまして?

voice: 1409710450 ラモーナ 難しい本ではあるが、ヒントは見つけたぞ。 著者は終始、『考えるな、感じ取れ』という姿勢を貫いていてな。

voice: 1409710460 ラモーナ 私はどうにも、空想や想像力を働かせる部分が弱い。 おそらく暦はそうした弱点を見抜き、補強するために――

voice: 1409710470 それをいろはさんに話しましたのね。

voice: 1409710480 ラモーナ !?

voice: 1409710490 voice: 1409710491 あの本は今、手元にはない。いろはさんに貸したから。 あいにく存じておりますの。騙したことは謝りますわ。

voice: 1409710500 ですが……。 こそこそ隠し立てする貴女にも問題はありますわよね?

voice: 1409710510 ラモーナ ……すまない! 困っているいろはを放っておけなかったんだ!

voice: 1409710520 だから黙っていたと……?

voice: 1409710530 voice: 1409710531 ラモーナ あ、ああ。元は暦の持ち物だっただろう……? ……いやまあ、リリヤにも貸したが。

voice: 1409710540 ……まあ、本はもうあなたの物です。 どう扱っていただいても構いませんが……。

voice: 1409710550 ラモーナ すまない……。

voice: 1409710560 渡したのは本だけですの? 他に、妙な薫陶を与えたりなさっていませんわよね?

voice: 1409710570 ラモーナ 妙な薫陶とは……?

voice: 1409710580 いつも仰っている、役者同士の絆がどうとかです。 貴女が立ち話で済ませたりしませんわよね。何を話しましたの?

voice: 1409710590 ラモーナ い、いや。話というほどのことはだな……。

voice: 1409710600 まだ隠し事があるようですわね?

voice: 1409710610 (じいっ)

voice: 1409710620 ラモーナ ……ああっと、そうだ。明日は朝が早くてな? 備えて眠らなければ。家まで送れずすまない――

voice: 1409710630 ラモーナ ――お、おっと暦。手を握られては扉が開けられないな。 随分積極的に引き留めるじゃないか、ハハハ。

voice: 1409710640 ……ラモーナさん。

voice: 1409710650 ラモーナ ち、近いぞ暦……。さすがに恥ずかしいんだが……。

voice: 1409710660 私だって同じですが、他に方法はありません……!

voice: 1409710670 ……二言はないそうですから答えてもらいますわよ。 部屋の門扉は常に開け放たれている。そう仰いましたものね?