voice: 1409720010 ラモーナ ええと、な……。どうだ、私の部屋は? この扇子を見てくれ、センスがいいだろう? 扇子だけに。

voice: 1409720020 ……。

voice: 1409720030 ラモーナ そ、そうだ、茶を淹れよう! 実は暦が訪ねた時のためにと取っておいた玉露がだな――

voice: 1409720040 結構です。はぐらかさず、本音で向き合ってくださいまし。 それがあなたの言う、切磋琢磨する仲間なのではありませんこと?

voice: 1409720050 ラモーナ 仲間……! 暦の口からそんな言葉が出るとは!

voice: 1409720060 正直に答えていただけるならです。 答えていただけないのであれば、あなたとの関係はそこまでです。

voice: 1409720070 ラモーナ ぐぅ……。

voice: 1409720080 お尋ねします。 いろはさんと、何をお話しましたの?

voice: 1409720090 ラモーナ あの日はだな、書店に日本文化の本を探しに行ったんだ。 これがやはり奥深くてな、とうとう歴史書にも手を伸ばして――

voice: 1409720100 その先です。いろはさんと出会ってからのこと。

voice: 1409720110 ラモーナ な、なあ。いろはとは学校で話すこともあるんだ。 何故そこまで気にする必要がある……?

voice: 1409720120 それは……。

voice: 1409720130 ……可愛い妹が、毒牙にかからないようにするためです。 特に、あなたの標榜する切磋琢磨に巻き込ませたくないので。

voice: 1409720140 ラモーナ 過保護だな……。姉というものはずいぶん心配症らしい。

voice: 1409720150 心配させたくないなら話してくださいまし。

voice: 1409720160 ラモーナ それが暦のためになるのなら、構わないが……。 しかし、たいした話はしていないぞ?

voice: 1409720170 それをお聞かせ願えます?

voice: 1409720180 ラモーナ まあ、そうだな……。

voice: 1409720190 ラモーナ 茶を共にして、あの本のあらましについて語ったな。 姉の血肉となった本だからだろう、目を輝かせていた。

voice: 1409720200 ラモーナ 暦の舞台は欠かさず観ているだとか、普段と同じだ。 姉の芝居について語る熱が可愛らしかったな。

voice: 1409720210 ラモーナ それにだ、いろははよく気が利いて優しい。途中ウェイトレスが 滑って転んでしまったんだが、誰より彼女を気遣っていた。

voice: 1409720220 voice: 1409720221 ラモーナ あとは……暦と仲良くしてくれてありがとうと言われたくらいか。 姉思いで素直だな、あんな妹を可愛がれる暦が羨ましいよ。

voice: 1409720230 ふうん……?

voice: 1409720240 ラモーナ まだ疑いは晴れないのか……?

voice: 1409720250 その程度のことでしたら、隠す必要もありませんわよね。 何故、黙っていましたの?

voice: 1409720260 ラモーナ それはだな……。 気恥ずかしいだろう、いろはにとっても……。

voice: 1409720270 仰っていることの意味が分かりかねます。

voice: 1409720280 ラモーナ だから例えばだ。私は暦を尊敬している。 舞台への責任感と、銀河座の看板を背負う覚悟は並大抵ではない。

voice: 1409720290 ラモーナ それだけではないぞ。私とは方法論こそ違うものの、暦もまた、 周りを気にかけている。いろはについて釘を刺してきたのもだ。

voice: 1409720300 ラモーナ 厳しくも優しい。そんな暦だから目指したくなる。 いつまでもお前と板の上でぶつかり合っていたい……。

voice: 1409720310 誉め殺して誤魔化すおつもりですのね……。

voice: 1409720320 ラモーナ ……誤魔化しているように見えるか、この顔が。

voice: 1409720330 な……!

voice: 1409720340 ラモーナ 誉め殺しが耳に入れば、いろはも照れ臭いだろう。 だから黙っていたんだ、わかってくれたな……?

voice: 1409720350 あなたの芝居が、目を見張るほどに上手いだけかもしれませんが……。 今夜のところは、納得いたします……。

voice: 1409720360 ラモーナ 伝わってよかったぞ。恥のかき損に終わるところだ……。

voice: 1409720370 夜分遅くまで失礼いたしました。 お見送りは不要です。おやすみなさいませ。

voice: 1409720380 ラモーナ ……。

voice: 1409720390 ラモーナ ふうぅ~……。なんとかやり過ごせたか……。 いろはのこととなると、こうまでタガが外れるとは……。

voice: 1409720400 いろは 姉さんをひとりにしないであげてください。

voice: 1409720410 いろは 『私』は……もう、『お姉ちゃん』の隣に立つことはできないですから。 だから、どうか舞台の上で姉さんの隣にいてください。

voice: 1409720420 voice: 1409720421 いろは お姉ちゃん、寂しがり屋で、優しくて、仲間想いで……。 ……私はお姉ちゃんが大好きなんです。

voice: 1409720430 ラモーナ (……いろはの願いは、私の願いでもある。  暦の負担は減らしてやりたい)

voice: 1409720440 ラモーナ (しかしどうにも……。  黙っているというのは難しいものだな……)

voice: 1409720450 はぁ……。

voice: 1409720460 (ラモーナさんは、何も知らない様子だった。  いろはさんに頼まれて、本を貸しただけ……)

voice: 1409720470 心配症で、過保護にもなりますわよ……。

voice: 1409720480 (あんな過去がありながらも、いろはさんは前を向いた。  ようやく自分の道を見つけて歩み出した。ならば――)

voice: 1409720490 火の粉は、私にだけ降り注げばいい……。

voice: 1409720500 このエンジン音は……。

voice: 1409720510 初魅 ひとり歩いても退屈だろう、乗っていけ。

voice: 1409720520 お誘いいただきありがとうございます。 ですが少し、歩きたい気分ですので。

voice: 1409720530 初魅 つれないな。

voice: 1409720540 初魅 そういうところは昔から変わらないか。 私の誘いには乗らず、背を向けてばかりいる。

voice: 1409720550 お互いに背を向けてきた結果が、 今の銀河座とEdenではありませんこと?

voice: 1409720560 voice: 1409720561 初魅 違いない。 だがお前は、変わったところもあるはずだ。

voice: 1409720570 変わった? どの辺りが、です?

voice: 1409720580 初魅 3年前に別れた時より、ますます魅力的になった。 くだらない伝統に身を置くだけだった以前にも増してな。

voice: 1409720590 初魅 今のお前は、張り合いがある。

voice: 1409720600 ……。

voice: 1409720610 ……ですわね。仰る通りです。 守らなければならないものを再確認できましたので。

voice: 1409720620 初魅 ぜひ知りたいな。いったい何がお前を、 敬虔な女神に仕立て上げようとしているのか。

voice: 1409720630 ふふ。おほめいただきありがたいですが、私はただの役者。 あなたが言うような女神ほど、神秘的な存在ではありませんので。

voice: 1409720640 おやすみなさい、初魅さん。 夜道の運転には、お気をつけて。

voice: 1409720650 初魅 躱されてしまったか……。 身持ちが硬いところは、相変わらずらしい。