voice: 1410620010 ラモーナ ……よし。いい時間だし、今日は以上だ。 明日も同じ時間に始めるからな、よければ顔を出してくれ。

voice: 1410620020 クレア ありがとうございました、ラモーナさん。

voice: 1410620030 ラモーナ うむ。演劇以外のインプットも欠かさぬようにな。 日常生活を送ることも、役者にとっては自主練だ。

voice: 1410620040 ……。

voice: 1410620050 (……ワークショップと聞いて来てみれば、  意外と丁寧に教えているようですが……)

voice: 1410620060 アビゲイル おかげで調子いいんだよね。そのうち超えちゃうかも?

voice: 1410620070 クレア 先輩方には負けませんよ。もちろんラモーナさんにも!

voice: 1410620080 ラモーナ ……。

voice: 1410620090 アビゲイル や、そこは『受けて立つ』とか言うところでしょ。

voice: 1410620100 ラモーナ ! ……あ、ああ。 そうだな。無論、受けて立つぞ。あとは任せて、ゆっくり休んでくれ。

voice: 1410620110 ……やはり、あなたらしくもありませんわね。

voice: 1410620120 (今でこそ多少はマシになっておりますが、  ここ一週間のラモーナさんは、心ここにあらずだった――)

voice: 1410620130 おはようございます、ラモーナさん。

voice: 1410620140 ラモーナ ……。

voice: 1410620150 ラモーナ ……あ、ああ暦か。今日は早いな、おはよう。

voice: 1410620160 いつもとさほど変わらない時間ですけれど……。

voice: 1410620170 はあ……。放課後は稽古があると伝えましたのに、 どちらまで散歩に出られたのやら……。

voice: 1410620180 ラモーナ ……ええと、すまない。なんの話だ……?

voice: 1410620190 リリヤさんのことですわよ。 正門前でふらっと消えたではありませんか。

voice: 1410620200 ラモーナ ああ、そうか。そうだったな。リリヤらしいよ……。

voice: 1410620210 ……。

voice: 1410620220 (……明らかに、ラモーナさんは平静を装っている。  いいえ、装うことすらできていない)

voice: 1410620230 (軽く稽古を共にして、確信もした。  原因は間違いなく、あの時――)

voice: 1410620240 ……ああ、そういうこと。 あれほど止められたのに、懲りずに余計なお節介を焼いたのですか。

voice: 1410620250 大事なのは、当人たちの気持ちだと何故分かりませんの?

voice: 1410620260 (……あの時は、私も強く言い過ぎたかもしれません。  ですが本を正せば、ラモーナさんの自業自得でもある)

voice: 1410620270 何をやっているのでしょうね、私は……。

voice: 1410620280 (銀河座には関係がないし、私が出る幕でもない。  それなのに、ラモーナさんを放っておけなかったのは……)

voice: 1410620290 ラモーナ ……暦、ありがとう。付き合ってくれて嬉しかったぞ。 後片付けは任せて、遅くならないうちに帰るといい。

voice: 1410620300 voice: 1410620301 いえ、私も手伝いますわ。 ……お借りしたセンスを、あなたに返さねばなりませんもの。

voice: 1410620310 ラモーナ センス……。

voice: 1410620320 ラモーナ そうか、暦にだけは嘘はつけないな……。

voice: 1410620330 ええ。たまには役に立ちますわね、あなたのセンスも。 憔悴ぶりが手に取るように分かりました。

voice: 1410620340 ラモーナ ……ああ。

voice: 1410620350 はあ……。

voice: 1410620360 ラモーナさん。 よい役者は、私情を舞台には持ち込まないものです。

voice: 1410620370 何があろうとも、自身と役は切り離すこと。 私も徹底できてはおりませんから、自戒を込めてですが。

voice: 1410620380 ラモーナ ……暦の言った通りだ、未熟だった。 カトリナとクリスの出来事が、今も頭から離れない。

voice: 1410620390 ラモーナ 友人の仲を取り持つこともできない人間が、 一人前にワークショップとは、片腹痛いな……。

voice: 1410620400 発破をかけたつもりでしたのに、 私の言葉は何も届かなかったのですね……。

voice: 1410620410 ラモーナ 気づけず、すまない……。

voice: 1410620420 売り言葉に買い言葉を返すのが、いつものあなたでしょう?  例えば先ほどのように、『受けて立つ』とか……。

voice: 1410620430 ラモーナ 受けて立てるか、分からない……。

voice: 1410620440 本当にあなたらしくもありませんわね。 こんなに弱々しい……。

voice: 1410620450 ラモーナ …………。

voice: 1410620460 下ばかり見ず、顔を上げてくださいな。

voice: 1410620470 ラモーナ ……暦に見せられる顔じゃない。放っておいてくれ。

voice: 1410620480 一週間放っておいても直らないから、 こうしてお話しているんです。

voice: 1410620490 あなたがいつものように前を向くには、どうすればいいんですの?

voice: 1410620500 ラモーナ さあな。頭でも持ち上げれば自然と前を向くだろう……。

voice: 1410620510 物理的に上げる話はしておりませんわよ……。 私は別に、あなたに怒っている訳ではありませんから。

voice: 1410620520 ラモーナ …………。

voice: 1410620530 ……仕方ありませんわね。一度きりですわよ。

voice: 1410620540 顔を上げてさしあげます、物理的に。

voice: 1410620550 ラモーナ ……っ。

voice: 1410620560 ラモーナ この年にもなって、頭を撫でられるとはな。 まるで子どもみたいだ。

voice: 1410620570 撫でてはおりません。顔を上げていますの、あくまでも。 こんなことさせないでください。

voice: 1410620580 ラモーナ そうか。フフ……。

voice: 1410620590 終わりです。これで前を向けましたわね?

voice: 1410620600 ラモーナ ……いいや。

voice: 1410620610 ラモーナ もう少しだけ、頼めるか。 こんな私も見捨てない暦の温かさで、前を向けるように。

voice: 1410620620 ……。

voice: 1410620630 voice: 1410620631 はああ……。 本当にらしくありませんわ、私たち……。

voice: 1410620640 ラモーナ ありがとう。暦がいてくれてよかった。