voice: 1410820010 昔と言っても、重力の創始者が提唱した絶対時間であれば 僅かな過去に過ぎない程度ではあるが。

voice: 1410820020 けれど、電子の姫にとっては革命的な出来事が起きた。 それを私は……。

voice: 1410820030 金閣銀閣以前、以降。……と、呼んでいる。

voice: 1410820040 美兎 え……。……ええっ!?

voice: 1410820050 かつて電脳神が見せてくれた世界は 星を求め彷徨っていた私に降り注いだ光だった。

voice: 1410820060 ……しかし安寧の世界も、組織の影に蝕まれようとしていたのだ。 このまま暗雲が呑み込んでいけば、いつか電光は喪われるだろう。

voice: 1410820070 誰もが不安を抱えつつも、言葉は隠れ、足は凍りつき。 不可逆的に砕けゆく電姫領域の傍観者に成り果てようとしていた。

voice: 1410820080 ……そんな時だ。 千寿、白丸。そして阿岐留。お前たちが一員となったのは。

voice: 1410820090 燻み始めていた世界が払拭され、 目も眩むような鮮やかな色彩を取り戻していったんだ。

voice: 1410820100 美兎 ……いろはちゃんや、カミラちゃんの明るさが、 みんなを幸せにしているのは、そうだって、美兎も思います。

voice: 1410820110 美兎 なのに美兎は……ただ電姫にいるのが楽しくて、嬉しくて……。 でもそれだけで……。

voice: 1410820120 わかるぞ。 月の魔力により、内なる隣人の声が強くなっているんだ。

voice: 1410820130 美兎 違います……本当に美兎は……。

voice: 1410820140 ……白丸。電姫の団員たちと共にいて、どう感じている?  十五夜の饗宴のために準備し、興じる時を共有し何を思った? 

voice: 1410820150 美兎 ……とても楽しくて、幸せ……です。 でもそれは……全部……美兎が勝手に……。

voice: 1410820160 そうだ。勝手に同志は集まっている。 お前を中心に輪が生まれていることもまた理だ。

voice: 1410820170 美兎 え……。

voice: 1410820180 それは何故か? 白丸と笑い、語らう時間が。 白丸が思うのと同じように、我らにとっても尊いものだからだ。

voice: 1410820190 美兎 …………。

voice: 1410820200 それに、千寿や阿岐留だけではない。 白丸もまた、産み出しているものがある。

voice: 1410820210 マチコさんや要さんに倣うのであれば、 そう、愛されし祭具が全滅したのもまた真実ではないのか? 

voice: 1410820220 美兎 あ……。

voice: 1410820230 だから内なる隣人の世迷言に惑わされるな。 もう少し、自分を信じてみろ。

voice: 1410820240 美兎 …………自分を。

voice: 1410820250 それとも……。

voice: 1410820260 伝承のうさぎらしく、ただの1匹で。 誰に食べさせるでもない、餅をつくのか? 

voice: 1410820270 美兎 …………っ。

voice: 1410820280 いろは 『みとちゃんっ!   買い出しに行くなら誘ってくださいよー!』

voice: 1410820290 劇団員たち 『許さない許さない仕返しに次の衣装は気合い入れちゃうから!』

voice: 1410820300 カミラ 『荷物多い? 場所教えて!   ガンダで迎え行っから!』

voice: 1410820310 劇団員たち 『これが、ミスディレクション! 私でなければ見落としてたね!』 『節穴くさ』『早く戻って来い。もてなしが待っているぞククク』

voice: 1410820320 叶羽 『アイス食べたーい。  月見マンジューよろー』

voice: 1410820330 美兎 みんな…………。

voice: 1410820340 内なる隣人の声と、電姫の言葉。 白丸はどちらに耳を傾ける? 

voice: 1410820350 美兎 ……早く戻りましょう。 アイス、買ってから。

voice: 1410820360 うむ。

voice: 1410820370 美兎 ……また、夏……みたいに、 みんなでどこかに行きたいなぁ。

voice: 1410820380 むぅ……我らは隠の属性を持つ影の集団。 陽の気は相反するものだ……。

voice: 1410820390 特に紅鏡の監視下で結界能力の低い装束は以ての外と言える。 組織も活発になり超常なる業火の檻の前に人は余りに脆い。――だが。

voice: 1410820400 白丸が行きたいと願うのならば。 私を含め、皆は喜び連れ立つだろう。

voice: 1410820410 美兎 行くなら、どこがいいかなぁ……。

voice: 1410820420 美兎 みんなとなら、どこにでも行けそう……。 ……いつかは、あの……月にだって……。

voice: 1410820430 うむ。魔力に満ちた女神の地に降り立てば、私も……きっと。 ……まあ本巣は、面倒くさがってついてこないかもしれないが。

voice: 1410820440 美兎 ゲームとお菓子をいっぱい用意してあげたら、 きてくれますよ、きっと。

voice: 1410820450 月まで行って、ゲームか。 本巣ならばあり得るな。

voice: 1410820460 美兎 ふふ……。

voice: 1410820470 ……白丸。

voice: 1410820480 美兎 はい?

voice: 1410820490 ――いや。 この月は……ふたりで見るには勿体無いな。

voice: 1410820500 美兎 あ……今日、十五夜パーティーなのに。 お月様……みんなでちゃんと観てませんね。

voice: 1410820510 ならば誘えばいい。

voice: 1410820520 美兎 ……はい。 この綺麗な月を……みんなで一緒に……。

voice: 1410820530 (…………白丸)

voice: 1410820540 (いつかお前自身で気づく日が来ることを、私は祈っている)

voice: 1410820550 (寿星を輝かせているのは、  他の誰でもなく、白丸なのだということを……)